2017年1月11日水曜日

11- 米ニューヨーク州の原発2基 廃炉へ

 米ニューヨーク州にあるインディアンポイント原発の2号機と3号機(合計発電量は200万キロワット)は2021年までに運転を停止し廃炉にすることになりました。同原発はこれまでも安全上の問題が指摘されていて、これまで原発の周辺住民1700万人を避難させる方法はないと主張していたクオモ州知事は、「廃炉の合意ができたことを誇りに思う」と述べました
 
 アメリカではこのところ原発の採算性の悪化から廃炉が続いていて、この5年間で5カ所の原発が閉鎖され、2025年までに合計でさらに5カ所が廃止される予定です
 
 今回廃炉が決定したインディアンポイント原発は、所有者であるエンタジー何年にもわたって事業免許更新を求めてきましたが、認められないままに遂に廃炉が決まりました。
 日本の原子力規制委が次から次へと認可を出しているのとは対照的です。
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米ニューヨーク州の原発2基 廃炉へ
NHK NEWS WEB 2017年1月10日
アメリカ、ニューヨーク市の近郊にあり、安全性の問題が指摘されていた原子力発電所が、2021年までに運転を停止して、廃炉になることが決まり、世界で最も多くの原発があるアメリカでは、採算性の悪化などを理由に原発から撤退する動きが相次いでいます
 
廃炉になるのは、ニューヨーク州にあるインディアンポイント原子力発電所の2号機と3号機で、2021年までに運転を停止し原発を閉鎖することで、ニューヨーク州と原発を所有する電力会社が合意しました。
2基は1970年代半ばに営業運転を始め、東京電力福島第一原発とは異なる「加圧水型」と呼ばれるタイプで、出力は合わせて最大200万キロワットに上ります。
この原発は、全米で最も人口が密集するニューヨーク市から北におよそ40キロのハドソン川沿いにあり、これまでに火災や放射性物質を含んだ水が漏れ出す事故がたびたび起きて、安全上の問題が指摘されており、クオモ知事は「廃炉の合意ができたことを誇りに思う」と述べました。
 
これに対して原発を所有する電力会社は、エネルギー価格が下がる一方で、原発を維持するコストは上がり、採算性が悪化しているため、廃炉に合意したと説明しています。
アメリカでは去年10月、20年ぶりとなる新規の原発の営業運転が始まり、稼働する原発は100基と世界で最も多くなっていますが、採算性の悪化などを理由にここ数年、古い原発の廃炉の決定が相次いでいます
 
 
コラム:米原発閉鎖が告げる「採算性メルトダウン」
ロイター通信 2017年1月10日
[ニューヨーク 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米国では原子力発電事業の採算性が音を立てて崩れつつある。米電力大手エンタジー(ETR.N)はこのほど、ニューヨーク市北方にある原発の閉鎖に合意し、その理由として天然ガスが低価格で推移していることを挙げた。
今後エンタジーに追随する原発事業者が増えていくのは間違いない。
 
エンタジーが閉鎖を決めたインディアンポイント原発は何十年にもわたって論争の的になってきた。1977年には発電所の変電施設近くへの落雷でニューヨーク市が停電に見舞われた。2001年9月11日の事件以降はこの原発も攻撃対象になりかねないとの懸念が広がり、東日本大震災の福島第一原発で起きた事故がとどめを刺す形で、インディアンポイント原発存続の政治的な支持はなくなった。クオモ州知事は、原発の周辺住民1700万人を避難させる方法はないと主張している。
 
01年9月11日の事件直前にインディアンポイント原発の買収を完了したエンタジーは何年にもわたって事業免許更新を求めてきたが、市場動向のために方針を転換せざるを得なくなり、21年までの閉鎖を決めた。潤沢なシェールガス供給により、卸売電力価格は過去10年で約45%も下がり、実質的にインディアンポイント原発の収入を年間5億7500万ドル前後も押し下げた。エンタジーにとって、もはや原子力の卸売電力販売は経済合理性を持たない。
 
他の電力会社も同じ結論に達している。この5年間で5カ所の原発が閉鎖され、2025年までに合計でさらに5カ所が廃止される。一方で東芝は、原子力事業に絡む減損処理を公表した昨年12月以降で時価総額が42%減少している。
 
テネシー川流域開発公社(TVA)は昨年10月に11メガワットの原発を開設し、現在はジョージア州とサウスカロライナ州で4基の原子炉が建設中。トランプ次期大統領は原子力発電セクターを拡大させたい考えだ。だが、同時に化石燃料への支持の方がより強いように見える。実際、閣僚には主要石油産地であるテキサス州前知事のリック・ペリー氏と石油大手エクソンモービル(XOM.N)の最高経営責任者(CEO)だったレックス・ティラーソン氏を起用した。
排出権取引は、温暖化ガスを発生させない原子力発電に新たな価値をもたらすだろう。しかし現時点でそうした計画を推進しようと努力するのは、エネルギーの無駄遣いでしかない。 
 
●背景となるニュース
・エンタジーは9日、インディアンポイント原発を2021年までに閉鎖することでニューヨーク州と合意し、原子力発電事業から撤退すると発表した。閉鎖時期は当初予定より10年早まった。
 
・ニューヨーク州のクオモ知事は、環境面の問題でインディアンポイント原発の稼働に反対しているが、エンタジーが原子炉2基を2020年と21年に閉鎖すると約束したことと引き換えに、事業免許更新を支持する意向だ。同原発はニューヨーク市から25マイル北にある。
 
・エンタジー幹部の話では、天然ガス価格が近年急落し、今後も低水準で推移するとみられるため、原発が経済的に存続不可能になった。
 
・ニューヨーク州は、原発閉鎖によって減った電力は送電システムの改良や従来型発電所の新設、カナダ・ケベック州の水力発電の輸入で補うとしている。 
 
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。