大飯原発3号機と4号機について、原子力規制委は再稼働の前提になる規制基準の審査に事実上合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。まだ安全対策工事が終了していないので実際に運転が可能となるのは秋以降です。
ところで大飯原発3・4号機については、平成26年に、福井地裁が運転再開を認めない判決を言い渡し、それに対して関西電力が控訴し、現在名古屋高裁金沢支部で審理が続けられています。この場合再稼働ができるのかどうかですが、NHKによると「再稼働を認めない判決の効力は生じていないため、規制委の審査に正式に合格し、検査などでも問題がなく、地元の同意があれば再稼働ができる」ということです。何か釈然としませんが一応筋は通っています。
他方、高浜原発3・4号機については、緊急の場合などに使われる「仮処分」の手続きで大津地裁が去年3月、運転停止を命じる決定を出し、関西電力は決定を不服として大阪高等裁判所に抗告しています。
この仮処分の場合は決定の効力がすぐに生じるので、それが取り消されないかぎり高浜原発は運転できない状態が続くということです。
この仮処分の場合は決定の効力がすぐに生じるので、それが取り消されないかぎり高浜原発は運転できない状態が続くということです。
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大飯原発再稼働へ審査書案を取りまとめ
NHK NEWS WEB 2017年2月22日
福井県にある大飯原子力発電所3号機と4号機について、原子力規制委員会は、再稼働の前提になる新しい規制基準の審査に事実上合格したことを示す審査書の案を取りまとめました。全国の原発で6か所目になりますが、今後も、検査や地元の同意が必要で、関西電力が目指す再稼働は早くてことしの秋以降になると見られます。
22日の原子力規制委員会では、関西電力が大飯原発3号機と4号機で進めている安全対策が新しい規制基準に適合しているとして、審査に事実上合格したことを示す審査書の案が示されました。
審査での指摘を受けて引き上げた地震や津波の想定、それに、新たに設置し電源を多重化した水素爆発を防ぐ装置などの重大事故対策が妥当だとしていて、審査書の案は全会一致で取りまとめられました。
審査書の案が取りまとめられたのは、おととし再稼働した鹿児島県の川内原発などに続いて6か所目で、規制委員会は、23日から1か月間、一般からの意見募集を行ったうえで、審査書を正式に決定します。
関西電力はことし5月までに安全対策の工事を終えることにしていますが、今後も詳しい設備の設計の認可や検査、それに地元の同意が必要で、関西電力が目指す再稼働は早くてことしの秋以降になると見られます。
大飯原発3号機と4号機をめぐっては、3年前の平成26年に、福井地方裁判所が運転再開を認めない判決を言い渡したのに対し、関西電力が控訴し、2審の裁判が続いています。
おおい町長「安心感を持っている」
おおい町の中塚寛町長は「申請から3年7か月の長期にわたり、厳しい基準にのっとり事実上の合格となったので一定の安心感を持っている」と述べました。また、3年前に再稼働を認めない判決が出されて、今も2審の裁判が続いてることについては、「司法の判断は気になる。規制委の審査をしっかりと受け止めて再稼働は判断していくが、司法が審査とは異なる結果を出した場合には、どこを信じたらいいのかと気になってしまう」と述べました。
規制委の指摘で想定見直し
大飯原子力発電所3号機と4号機の審査では、地震や津波の想定など、自然災害の対策が大きな焦点となり、原子力規制委員会の指摘で、関西電力の想定が何度か見直されました。
地震の想定をめぐる議論では、周辺の連動する活断層の数を当初の2つから3つに増やすことや、震源の深さを当初の4キロから3キロに浅くすることを求められ、その結果、想定される地震の揺れも最大700ガルから856ガルに引き上げられました。これに伴い、およそ1200か所の配管などの補強工事が行われました。
地震の想定をめぐっては、規制委員会の了承が得られた後も議論になりました。大飯原発の地震や津波の審査を担当した地震学が専門の島崎邦彦元委員が、去年4月の熊本地震で得られたデータから審査で使われた計算式では、地震の想定が過小評価になるおそれがあると指摘しました。指摘を受けて規制委員会はいったんは別の式を使って再計算をしましたが、信頼性のある結果が得られず、審査で断層の総延長を長めに見積もるなど十分、安全側にたった評価をしているとして、地震の想定を見直さないことを決めました。この議論をめぐっては、別の専門家からも今の審査の手法がよいのか、検討するべきだという指摘が出されています。
津波の高さについては、規制委員会の指摘を受けて、想定が当初の最大2メートル85センチから6メートル30センチに見直されました。これに伴い、海側にある冷却用のポンプを守るため、今ある海抜6メートルの防護壁とは別に海抜8メートルの防護壁が、ことし4月までに建設される予定です。
重大事故に備えた対策では、消防車や電源車など冷却や電源対策を強化したほか、水素爆発を防ぐため、水素を少しずつ燃やして減らす装置を新たに設置し、電源を多重化する対策も行う計画です。また、緊急時の対応拠点として、当面は1号機と2号機にある建物の部屋を使う計画で、平成30年度中に別の対応拠点を建設し運用する計画です。このため、1号機と2号機の審査が申請された場合は緊急時の対応拠点の審査をやり直すことになります。
大飯原発と裁判
大飯原発3号機と4号機をめぐっては、平成26年、1審の福井地方裁判所が再稼働を認めない判決を言い渡しましたが、関西電力が控訴して、2審の裁判が続いており、判決は確定していません。
この裁判で、福井地裁は「地震の揺れの想定が楽観的で、原子炉を冷却する機能などに欠陥がある」などとして原告の住民の訴えを認め、原発事故のあと、初めての再稼働を認めない司法判断となりました。
これに対し、「安全上、問題はない」と主張してきた関西電力は控訴して、2審の裁判が名古屋高等裁判所金沢支部で続けられ、判決は確定していません。
再稼働を認めない判決の効力は生じていないため、今後、原子力規制委員会の審査に正式に合格し、検査などでも問題がなく、地元の同意があれば再稼働できることになります。
再稼働を認めない判断が確定していない中で、関西電力から再稼働への同意を求められた場合地元、おおい町や福井県がどのような対応をとるのか、注目されます。
一方、大飯原発と同じ福井県にある関西電力の高浜原発3号機と4号機をめぐっては、正式な裁判をしていると時間がかかって間に合わない、緊急の場合などに使われる「仮処分」の手続きで、大津地方裁判所が去年3月、運転停止を命じる決定を出しました。
その後、関西電力が決定を不服として大阪高等裁判所に抗告していますが、仮処分では決定の効力がすぐに生じ、取り消されないかぎり続くため、高浜原発は運転できない状態が続いています。
大阪高裁での審理は関西電力と住民、双方から意見を聞くなどの手続きが終わったことから、近く、判断が示される見通しです。