福島原発事故で福島県から横浜市に自主避難した中1の男子生徒がいじめを受けた問題で、横浜市教育委の岡田優子教育長は、生徒と同級生との金銭のやりとりについてようやく「いじめの一部として認識し、再発防止を検討する」との考えを示しました。
13日、いじめを受けた生徒の手紙を弁護士が横浜市の林文子市長に提出したところ、俄かに教育長が謝罪の会見を開きました。この経過も釈然としません。
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金銭払わされた行為「いじめと認識」横浜市教委が謝罪
NHK NEWS WEB 2017年2月13日
原発事故で横浜市に自主避難してきた生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が、同級生におよそ150万円を払わされた行為もいじめと認めるよう求める手紙を市長に提出しました。教育委員会は、これまでの見解を変え、この行為を「いじめの一部と認識する」と謝罪しました。
この問題で、横浜市教育委員会の第三者委員会は、現在、中学生の男子生徒が福島県から転校してきた横浜市の小学校で、名前にばい菌の「菌」をつけて呼ばれるなどしていた行為は、いじめと認定しています。
一方で、遊ぶ金としておよそ150万円を払わされた行為は、同級生が「おごってもらった」と話すなど双方の主張が異なり、いじめと認めていませんでした。
13日、生徒側の弁護士が市役所を訪れ、金を払わされた行為もいじめと認めるよう求めて生徒が記した手紙を林文子市長に宛てて提出しました。この中で、生徒は「どうして教育委員会は一部だけを見て全体を見てくれないのか。学校は被害者側の言い分を聞かずに決めたのか」などと訴えています。
これを受けて、横浜市教育委員会の岡田優子教育長が会見し、金を払わされた行為について、法律が定めるいじめの定義に当てはまることや、第三者委員会の報告書が金を払った背景にいじめがあったとしていることを踏まえ、これまでの見解を変え、「いじめの一部と認識する」と明らかにしました。教育長は「生徒の気持ちを受け止められず、おわびします」と謝罪しました。
生徒の手紙全文
原発事故で横浜市に自主避難してきた男子生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が横浜市の林文子市長に宛てて記した手紙の全文です。生徒の言葉を弁護士が聞き取って記したもので、同級生におよそ150万円を払わされていた行為についても、いじめと認めるよう求めています。(以下、全文)
どうして、横浜市教育委員会は、一部だけを見て、全体を見てくれないのか。
どうして、お金を出せと言われたことを黒塗りにしたのか。
どうして、放置し続けたのか。お金をとられたことを、いじめとしてくれないのか。
どうして、学校は、被害者側の言い分を聞かずに、加害者側の言い分だけを聞いて、決めたのか。
どうして、副校長は、僕が、お母さんとお父さんを通じて話したことを、きちんと校長先生に伝えなかったのか。
どうして、副校長は、僕のせいにしたのか。知りたいし、話を聞いて欲しい。
横浜市長「おわびの気持ち伝えたい」
横浜市の林文子市長は、教育委員会がこれまでの見解を変えたことについてコメントしました。
その中で、生徒からの手紙について「長い間、不安を抱える中、未来に向けた一歩を踏み出そうと精いっぱいの勇気を出して、私に気持ちを伝えてくれたのだと受け止めています。長い間、つらい気持ちを抱かせたままにしてしまったことについて、おわびの気持ちをお伝えしたい」としています。
そのうえで、教育委員会が見解を変えたことについて、「再発防止にしっかりと取り組むためにも、金銭の支払いを『いじめ』だと受け止めたものだと認識しています。来月に再発防止策をまとめ、いじめ防止の取り組みを強化していきたいです」としています。
生徒の保護者「どこでも起こりうる『いじめ』」
横浜市教育委員会がこれまでの見解を変えたことを受けて、男子生徒の保護者が弁護士を通じてコメントを出しました。
それによりますと、「やっと謝罪して頂けたという思いしかありません。本来なら第三者委員会の報告書が出された時点ですぐに謝罪してほしかったです」としています。
その上で「福島から来たこともあり、『原発いじめ』というくくりで大きく取り上げられましたが、今回の件はどこでも起こりうる『いじめ』です。現在も全国でいじめに苦しんでいる子どもたちがいます。今度こそ、学校、教育委員会には、いじめに率先して介入して子どもたちに寄り添い、いじめの解決に向けて対応できる組織改革をしてほしいです」と訴えています。