日本記者クラブ取材団が今月9日福島第一原発構内を視察した結果について、日刊スポーツが報じましたので紹介します。
構内の高線量は今も続く、今も一日150トンの地下水が1~3号機の地下室に流れ込んでいるということです。
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福島第1原発事故6年、今も高い線量/構内リポート
日刊スポーツ 2017年2月13日
高線量は今も続く-。東京電力福島第1原発事故から来月で6年となるのを前に、日本記者クラブ取材団が今月9日、同原発構内を視察した。燃料デブリ(炉心溶融で溶け出した核燃料)が強い放射線を出す1~3号機に近づき、周辺をバスで移動。同日には2号機格納容器内で、過去最大値の650シーベルトが判明した。高線量に阻まれ、廃炉作業は難航を極める。日刊スポーツの柴田寛人記者(49)が福島第1原発の今をリポートする。
約20人の取材団が高台に上がると、ある記者の線量計から「ピー! ピー!」と警報音が鳴った。同行する東電社員が、業務用の線量計を2号機に向けると、毎時144マイクロシーベルトを計測。都内の平均値(毎時0・03マイクロシーベルト程度)の4800倍、住民なら一時移転などの防護措置が必要になる線量だ。
今月2日、2号機の格納容器内で毎時530シーベルトの極めて高い線量が判明。人間なら数十秒で死亡するレベルだ。記者は、この2号機を約80メートル離れた高台から見つめた。水色の建屋カバーに囲まれ、内部の様子は分からない。周囲に人影はなく、不気味な静けさに包まれていた。
再びバスに乗り込み、3号機を右手に見ながら右折。バスが止まり、3号機の壁が崩れているところに東電の線量計を向けると、毎時335マイクロシーベルトの高線量が測定された。胸部エックス線検査の被ばく量を超える値で、燃料デブリの高い放射線量が想像できた。
左折して2号機のタービン建屋の横を移動。原子炉建屋から少し離れると線量は低めだが、手元の簡易線量計は毎時30・87マイクロシーベルト。建屋の手前では、防護服姿の作業員数人が会話する様子が見えた。周辺住民を避難させるほどの高線量の発信源は、奇妙に落ち着いた雰囲気だった。
視察の起終点になった免震重要棟には、原発敷地内のモニタリングポストのデータを一括表示する液晶テレビがある。1、2号機の山側に隣接する排気筒西側で、最高の毎時1507・4マイクロシーベルトを測定していた。東電広報は「なぜこんなに高いのか、原因が分かっていない。作業員が近づけないので、除染も進んでいない」と話した。
9日早朝には、調査ロボット「サソリ」の投入に備え、進路を掃除するロボットが2号機で稼働。そのカメラ映像の乱れから、過去最大値の毎時650シーベルトの放射線量が推定された。ロボットは5メートル進む予定だったが、映像が暗くなり、1メートル進んだところで後退。高線量などの影響で故障したとみられる。
廃炉作業の工程を定めた「中長期ロードマップ」では、今年夏ごろに1~3号機の燃料デブリ取り出しの方針を決める。先月30日、2号機でデブリとみられる黒い塊を初めて撮影したが、1、3号機では未確認。2021年開始予定のデブリ取り出しに向け、懸命の調査が続く。【柴田寛人】
◆福島第1原発の現状 被災規模が大きかったのは1~4号機。燃料デブリが残る1~3号機は、注水による冷温停止状態だが、内部は極めて高い線量で人が近づけない。震災当時に定期検査中で運転を止めていた4号機では、14年12月までに全ての使用済み燃料の取り出しを完了。内部に燃料がないため、監視不要になっている。1~3号機の注水に加え、1日約150トンの地下水などが流れ込み、これまでにたまった汚染水は約96万トン。高さ約10メートルの貯蔵タンクが約1000基も敷地内に並ぶ。地下水流入を抑えるため、1~4号機の周囲に凍土壁を築く作業が続いている。
◆シーベルト 放射線被ばくによる人体への影響の度合いを表す単位。自然界から受ける年間放射線量の世界平均は、2・4ミリシーベルト(0・0024シーベルト、2400マイクロシーベルト)とされる。毎時に換算すると0・27マイクロシーベルト。
◆東京電力福島第1原子力発電所 福島県沿岸の大熊町と双葉町で東電初の原発として1971年(昭46)に運転開始。2011年3月11日の東日本大震災に伴う津波で1~4号機が損傷。放射能漏れで周辺住民を避難させる重大事故を起こした。13年までに全6基の廃止が決定。40年かかる廃炉作業のため平日1日あたり約6000人が働く。