2017年2月12日日曜日

浪江町 避難一部解除に向け 渦巻く不安 もどかしさ

 全町避難中の福島県浪江町の避難指示一部解除(331する政府の提案を巡る住民懇談会が10日、県内外10会場全ての日程を終えました。
 各会場で目立ったのは放射線を巡る不安と国への不満で、政府は「解除は帰還の強制ではない」と繰り返したものの、「なぜ高線量の町に帰れと言えるのか」との声はやまず、議論は擦れ違ったままでした
今後政府は町などと再協議し、解除日を最終判断します
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<全町避難>浪江解除 渦巻く不安 もどかしさ
河北新報 2017年2月11日
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県浪江町の避難指示の一部を3月31日に解除する政府の提案を巡る住民懇談会が10日、全ての日程を終えた。県内外10会場での発言からは、解除後も戻れないもどかしさや解除への不安など、町民の複雑な思いが浮き彫りになった。政府は町などと再協議し、解除日を最終判断する。
 
 懇談会は1月26日に始まり、仙台市や東京、大阪市を含む会場に延べ1249人が参加。政府と町は町内の除染や生活環境の整備状況を説明したが、第1原発の廃炉作業や避難計画に関する言及は乏しかった。
 最終日の大阪会場では、原発を不安視する声が上がった。兵庫県内に避難する女性は「(万が一の場合に)町に必要な情報が伝わらず、帰町した住民や町職員の健康が犠牲になるのではないか」と懸念した。
 簡単には帰還できない避難者からは、解除による町民の分断を心配する意見が出た。今月1日の福島市会場で、ある女性は「本当は浪江が好きなのに『古里を見捨てた』と思われてしまう」と語り、分断を防ぐ方策などを求めた。
 一方、早期解除を訴える町民もいた。町内で事業を再開した男性は町内会場(1月26日)で「避難区域の現状では、取引先から『行けない』と言われて荷物が満足に届かない。従業員の確保も厳しい」と明かした。
 各会場で目立ったのは放射線を巡る不安と国への不満だ。政府は「解除は帰還の強制ではない」と繰り返したものの、「なぜ高線量の町に帰れと言えるのか」との声はやまず、議論は擦れ違ったままだった。
 政府と再協議する馬場有町長は今月6日の南相馬市での住民懇談会後、「みんな戻りたくても戻れないもどかしさを抱えている。(ただ)古里を荒れたままにしておけない。町を残すのが行政の使命だ」と語った。
 
 
浪江復興へ工程表提示 3分野で中長期的支援
福島民報 2017年2月12日
 政府の原子力災害現地対策本部は11日、浪江町の避難指示解除後の復興に向けた道筋を示す中長期の工程表を町側に示した。
 高木陽介本部長(経済産業副大臣)が二本松市の町役場二本松事務所で馬場有町長に提示した。
 浪江町第2次復興計画の着実な進展を目指し、「なみえまち再生」「農林水産業」「産業振興」の分野ごとに国が中長期的に関わる支援の枠組みを明記した。国、県、町、住民による「官民協議会」が工程表の達成度を確認する。
 工程表によると、避難指示解除後1年程度をめどに公共交通と買い物環境の整備や里山再生モデル事業などを実施する。2020(平成32)年ごろまでに公共交通の自動走行化の実証、請戸漁港の整備などを目指す。2027(平成39)年以降には農林水産業の生産水準を東京電力福島第一原発事故前の水準に回復させる。
 町は避難指示解除に向けて政府に復興施策の提示を求めており、この日は要望への回答として医療費助成や高速道路無料化の継続を協議する場を設けるとの意向を示した。
 馬場町長は「工程表は実情を踏まえて作成されており評価する。支援を確実なものとするため、覚書を交わすなどしていきたい」と語った。高木本部長は「浪江町が震災前より魅力的な町となるよう力を尽くす」と述べた。