2022年7月3日日曜日

地元の声を聞いて 前向ける具体策を 第一原発処理水

 トリチウム汚染水の海洋放出二は、漁業関係者だけでなく林業関係者にも懸念が及んでいます。福島民報が報じました。

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【2022参院選 福島県民のまなざし】
地元の声を聞いて 前向ける具体策を 第一原発処理水
                            福島民報 2022/7/2
 政府と東京電力は福島第一原発でたまり続ける放射性物質トリチウムを含む処理水について来年春の海洋放出開始を目指している。東電は準備を進めているが、県内では漁業者を中心に反対の声が根強いままだ。多くの政党や候補者は風評対策などを公約に掲げるが、どの程度の実効性があるか見通せない。関係者は「地元の不安解消につながる具体的な施策を示してほしい」と求める。
 「相馬の漁業はようやく回復してきた。漁業者の意欲に水を差してほしくない」。相馬双葉漁協所属の沖合底曳船「第三恵永丸」船主の高橋英智(ひでとし)さん(59)=原釜機船底曳船船頭会長=は処理水の海洋放出による風評の上乗せを懸念し、表情を曇らせる。
 相双沖の沖合底引き網漁は2020(令和2)年9月から5年間で漁獲量を東日本大震災前の約60%に回復させる取り組みの真っただ中だ。高橋さんは乗組員とともに復興計画の先頭に立つ。計画2年目の底曳船23隻の漁獲量は1988トンで、震災前の42%にまで戻ってきた
 こうした中、政府が示した処理水の海洋放出期限が迫る。政府は「地元の理解なしに処分を行わない」としているが、漁業者の声が届いているとは感じられない。放出に反対している仲間もいる。風評対策についても、情報発信などを進めているというが効果は感じられない。「地元の声を丁寧に受け止め、具体性のある施策を実行してほしい」と強く求める。
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 「放出前にもっとできることがあるのでは」。鮫川村のコメ農家青戸義之さん(67)は、青々と育っている稲を見つめつぶやいた。
 約80ヘクタールの田んぼでコシヒカリやひとめぼれを生産している。震災と原発事故の影響で、福島県農産物の価格は大きく落ち込んだ。高齢化も重くのしかかる。処理水が1度海洋放出されれば新たな風評が生まれ、状況が悪化すると心配する。
 トリチウムを除去できる技術開発の加速など、放出前に政府としてやるべきことがあると感じている。「放出の影響は大きい。不安を感じている県民の思いをくみ取り、国や東電に強く働きかけてほしい」と候補者に求めた。
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 県内の林業関係者は海洋放出に伴う風評が業界の先行きに悪い影響を与えるのではないかと懸念している。古殿町の水野林業3代目社長の水野広人さん(35)は「担い手不足に拍車をかけなければいいが」と危惧する。
 原発事故発生後、森林整備や生産活動が停滞している。県によると、2010(平成22)年度の森林整備面積は1万2194ヘクタールだったが、2013年度には5626ヘクタールまで減った。2020年度は6004ヘクタールで、発生後はほぼ横ばいで推移している。
 風評にさらされる林業の再興を決意し、2013年に家業を継いだ。スギなどの良質な木材を首都圏方面などに出荷している。地元産スギを使用したプレートは、飲食店関係者やキャンプ愛好家からの人気を集めている。会社の取り組みに共感し、入社する若者や女性らが増えた。「林業が再生すれば雇用が生まれ地元がより活性化するはず」と訴えた。