NHK NEWS WEB 2015年12月13日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で発生した指定廃棄物の宮城県への処分場建設を巡り、宮城県と県内すべての市町村長を集めた会議が開かれ、候補地の3つの自治体がいずれも候補地を返上する考えを明らかにしました。
指定廃棄物の処分場建設に向けて環境省はことしも宮城県内の3か所の候補地で候補地を1か所に絞り込むための現地調査を試みましたが、現地で抗議活動が続いたことなどから年内の調査を断念し、2年連続で現地調査を実施できないまま年を越えることになりました。
こうした事態を受けて、環境省は、仙台市で宮城県の村井知事や県内すべての市町村長を集めた会議を開きました。はじめに、井上環境副大臣が、調査を断念した経緯を説明したうえで、宮城県内に処分場を建設する方針に改めて理解と協力を求めました。
続いて候補地の3つの自治体が発言し、栗原市の佐藤勇市長は「これ以上進展がないことに我慢できない。住民に説明がつかないので、候補地を返上し、調査は一切受け付けない」と述べたほか、大和町の浅野元町長も同様の考えを示しました。また、調査の受け入れに強く反対してきた加美町の猪股洋文町長も「3か所とも不適切な場所だ。候補地を返上する」と述べ、候補地の3つの自治体がいずれも候補地を返上する考えを明らかにしました。
これに対し、井上副大臣は「議論を積み重ねて決めた方針は基本的には貫きたい。現状を打破して前に進めるにはどうすればいいかしっかりと考え回答する」と述べ、13日、出された意見を環境省に持ち帰って検討する考えを示しました。
これまで現地調査には協力するとしてきた栗原市と大和町を含め、3つの候補地がいずれも候補地の返上を明言したことで、処分場建設の行方は一層不透明な情勢となりました。
宮城 栗原市長「候補地には入れない」
栗原市の佐藤勇市長は「本当に情けないことで、私はもう絶対、環境省を候補地には入れない。2年調査の受け入れを言い続けてきたが、何も進まないむなしさを感じ、市民にも説明がつかないと思って今回の結論に至った」と述べました。
宮城 加美町長「今のやり方ではつくれない」
加美町の猪股洋文町長は「今のやり方では何年かかってもどこの県にも処分場はつくれないし、スピーディにやるためには福島県の自治体や知事に指定廃棄物の処分のお願いをするという政治的判断もあると思う。3つの候補地から出た返上や白紙撤回の意見を前提に、県はどう処理するのかという話し合いを行うべきだ。私の提案もほかの自治体に検討いただきたい」と述べました。
宮城 大和町長「回答に変化なく残念」
大和町の浅野元町長は「町としての意見を述べたという意味では、いい機会だったが環境省の回答が変わらず、何も新しい提案もなく残念だ。原発事故から4年半たって状況も変わってきているので、改めて市町村長を集めた会議でスタート段階に戻り、意見をいただいて、改めて市町村会としての方向性を出してもらいたい」と述べました。
宮城県知事「政治がリーダーシップを」
宮城県の村井嘉浩知事は「候補地が3か所とも協力できないという厳しい結果となったが、国がどういう対応をするのか注意深く見守りたい。2年間何も進まず、複雑骨折のような状況なので、政治がリーダーシップを発揮して解決してほしい」と述べました。
環境副大臣「返上は受け入れがたい」
井上環境副大臣は「3つの候補地の自治体から候補地の返上という発言があったが、私どもとしては県内の指定廃棄物の処理をしていくには、1か所きちんと安全な施設を整備して処理していくしかないと考えている。そういう意味で、返上は受け入れがたい」と述べ、国の方針を変更する考えがないことを強調しました。そのうえで、「処分場建設が難航していて、首長や県民の皆さんに心配をおかけしていることは申し訳ないと思っている。こうしたなかで何かできないのかということをしっかり考えていきたい」と述べました。