原研開発機構は1日、事故で8年ほども停止していた高速実験炉「常陽」(茨城県)が今年6月までに復旧したので、再稼働に向け2016年度に原子力規制委に審査を申請する方針を明らかにしました。
「常陽」は「もんじゅ」の前段階における実験炉でプルトニウムを増やす「増殖」の研究は既に終了したので、今後は放射性廃棄物の減量化などの研究を行うということです。
放射性廃棄物の減量化がどのように有意義でまた技術的な見通しがあるのかは不明ですが、国などがどうしてもやりたいというのであれば、実験炉である「常陽」の規模で行うべきでしょう。
問題は「もんじゅ」の存続理由が「常陽」と全く同じ研究目的になっていること(無理にこじつけた感じもします)で、実験炉での研究とそれよりもはるかに大きな「もんじゅ」での研究を並行して行うというのは全くナンセンスです。
この際「常陽」で実験を行うことがあらゆる点で合理的なので、「もんじゅ」は廃炉とすべきです。
「もんじゅ:動かないのに…関連総費用1兆1703億円」の記事と、「もんじゅ:廃炉も選択肢…原子力規制委員長」の記事を併せて紹介します。
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高速実験炉「常陽」、審査申請へ 16年度、もんじゅの前段階施設
東京新聞 2015年12月1日
日本原子力研究開発機構は1日、高速実験炉「常陽」(茨城県)の再稼働に向け、2016年度に原子力規制委員会に審査を申請する方針を明らかにした。07年に原子炉内でトラブルが発生し長期停止していたが、今年6月までに復旧作業が完了した。
常陽は、発電しながら消費した以上のプルトニウムを生み出す高速増殖炉の開発で、原型炉もんじゅの前段階に位置付けられた施設。プルトニウムを増やす「増殖」の研究は既に終了し、今後は放射性廃棄物の減量化などの研究を行う予定だ。 (共同)
もんじゅ:動かないのに…関連総費用1兆1703億円
毎日新聞 2015年12月02日
1995年12月に冷却材のナトリウム漏れ火災事故を起こして以来ほとんど運転していない高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)関連の総費用が今年3月末までに約1兆1703億円にのぼったことが運営主体・日本原子力研究開発機構への取材で分かった。これまでは、会計検査院が2011年に総額「1兆810億円」と指摘したが、その後の総額は明らかになっていなかった。もんじゅは過去5年間動いていないが、プラントの維持に加えて固定資産税や人件費も含め年平均220億円以上を支出していることも分かった。来年度には総額1兆2000億円を突破しそうだ。
もんじゅは、85年に着工し、94年に核分裂が持続する「臨界」に達し、翌年に送電を始めた。しかし、ナトリウム火災を起こして長期停止。10年5月に原子炉を再起動したが、同8月に燃料交換装置が原子炉内へ落下して以来、再び長期停止している。停止中でも、もんじゅが使うナトリウムは常温では固まるため、電気であたためて液体状に保つ必要があり、こうした維持費が積み重なっていた。
原子力機構は、もんじゅの10年度までの総事業費について約9265億円と公表していた。しかし、会計検査院が11年11月、関連施設の費用や固定資産税、人件費などを含めて算出すると、総支出額は1兆810億円だったと指摘し、経費の全体規模を公表するよう機構に意見を表明していた。
今回、毎日新聞の取材に対し原子力機構は、14年度までのもんじゅの人件費が約533億円、固定資産税が記録が残る99年度以降で412億円と提示。こうした結果、支出総額は71年度以降の建設準備費なども含め約1兆1703億円と算出した。
1年間の費用は、会計検査院が指摘した11年度以降の4年間の維持費のほか固定資産税や人件費も含めて平均すると、約223億円になった。
これに対し、20年間でもんじゅが発電したのは日数換算で約37日で、売電収入は約6億円だったとしている。【大島秀利】
もんじゅ:「廃炉も選択肢」…原子力規制委員長
毎日新聞 2015年12月02日
原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日の記者会見で、来夏ごろまでに新しい運営主体を示すよう、文部科学省に勧告した高速増殖原型炉もんじゅ(福井県)について、廃炉を選択肢として除外していないとする見解を示した。
田中委員長は1日の衆院文部科学委員会で勧告について「廃炉までは求めていない」と述べたが、会見では「舌足らずだった」と釈明。「廃炉を選択するかどうかは規制委ではなく文科相の判断だ」と述べた。
勧告は、文科省が現在の日本原子力研究開発機構に代わる新たな運営主体を示せない場合、もんじゅのあり方を抜本的に見直すよう求めているが、新たな受け皿探しは難航する可能性が高まっている。【鳥井真平】