2015年12月5日土曜日

05- 原子力機構 続く「不透明な契約」 関係企業・団体に222億円

 東京新聞 2015年12月4日
 OBらが経営する「ファミリー企業」への不透明な発注が問題視されてきた日本原子力研究開発機構(茨城県東海村)が、今年九月末までの約一年間で少なくとも二百二十二億円の業務を、二十八のファミリー企業・団体に発注していたことが本紙の調べで分かった。全発注額の二割近くを占める。あり方を見直すと表明した四年前の二百七十七億円からあまり改善されていない機構運営費の大半は税金でまかなわれている。 (小倉貞俊、山川剛史)
 
 本紙は、機構が公表している昨年九月から今年九月までの発注データを基に、機構自らが「関係法人」と認定している三十六法人の受注状況を調べた。
 その結果、計千百八十九億円の発注のうち、二百二十二億四千万円が二十八の関係法人に流れていた。契約が複数年にまたがり、集計した期間には計上されていない契約もあり、実際の金額はもっと多い可能性が高い。うち二十三法人では、現在も機構OBが社長などを務めている
 二百二十二億円のうち、八十億円は核防護などを理由とした随意契約で、残る百四十二億円は一般競争入札だった。競争入札の詳細は公開されていないが、ファミリー企業一社だけの応札だったり、ファミリー企業同士の競争だったり、実質的には競争がなかったケースが多数含まれている
 機構のファミリー企業問題をめぐっては、福島の原発事故前から「不透明な随意契約が多すぎる」などの批判があった。機構は、入札に参加できる条件を緩くするなど改善に取り組んできたとされる。
 しかし、今回の集計では二十八法人のうち十七までが、売上高の三割以上を機構に依存。ほぼ100%の団体も複数あった。随意契約の中には、警備や清掃などその業者でないとできない業務なのか疑問が残るケースも少なからずあった。
 自民党行政改革推進本部の秋本真利衆院議員は、警備業務などは競争入札が適切だとして、来年度予算編成前に機構の発注のあり方を見直す方向で精査を進めている。
 
◆問題ないと認識
<原子力機構の広報担当者の話> 随意契約を続けているケースは、核物質の防護に関する情報が広がるのを限定するためで、その業務を熟知している(従来の)社と契約せざるを得ない。入札者がほかにいないケースなどについては、入札の参加要件が厳しくなかったか、募集期間が適正だったかなど、外部の有識者委員会などでチェックしている。問題はないと認識している。
 
◆談合といっていい
<五十嵐敬喜(たかよし)・法政大名誉教授(公共事業論)の話> まともな競争もないまま国の法人が、OBらの経営する企業に発注するのは不適切だ。警備業務などを随意契約にする必要性も明確でない。ファミリー企業同士が入札で競っても、それは談合といってもいい。
 
 福島の事故から五年近くになってもいまだ不透明な構図が続く背景には、原子力ムラの復権があり、傷痕に消毒液を塗るような処置だけではもう直せない。国民が、国の不当な支出に対し監査請求ができる仕組みを検討するべきだ。
 
<日本原子力研究開発機構> 文部科学省所管の独立行政法人で、2005年、当時の日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合して発足した。茨城県東海村に本部を置き、職員は約3700人。略称はJAEA。高速増殖原型炉もんじゅの運営のほか、放射性廃棄物の処分や東京電力福島第一原発の廃炉などの技術開発を担う。もんじゅの点検漏れ問題では、運営者を機構から変えるよう原子力規制委員会が文科省に勧告した。