国は民家や農地から20m以上離れ日常的に人が立ち入らない場所の除染はしないという方針を固めました。山林から周辺住宅などへの放射性物質の飛散や流出はほとんど見られず、除染作業により落ち葉や堆積物を取り除いた場合、土砂が麓に流れ出る危険性もあるなどを理由に挙げていますが、そのいずれも納得のできるものではありません。
福島原発の屋根に付着した放射性物質が遠くまで飛散するのと同様な現象は、森林の至るところで起きるし、居住地に近い平たんな場所で土砂の流出が起きるはずもありません。要するに経費が掛かって効果が少ない(除染してもすぐにその周囲から汚染される)というのが真の理由です。
一旦環境が汚染されれば奇麗にする手段がない以上原発はやはり廃止するしかないということで、なぜ国などがこうした方向に向かわないのか不思議なことです。
なお、周囲20m以上は汚染されたままにしておく(セシウムは100年経ってようやく10分の1に)ことの意味などについて、ブログ「Everyone says I love you !」が豊富な写真を例に論じています。
2つ目の記事でその本文を紹介しますので、是非原文をご覧になってください。
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生活圏以外除染せず 環境省、土砂流出を懸念 県内森林
福島民報 2015年12月22日
環境省は民家や農地から約20メートル以上離れた森林で除染を実施しない方針を最終的に固め、21日に東京都内で開かれた有識者による環境回復検討会で示した。生活圏に影響を与える森林からの放射性物質の飛散は確認されず、線量低減のため落ち葉を除去すると土砂流出などが懸念されると判断した。
同省は環境回復検討会の席上、東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域などで行った放射性物質の移行調査で、山林から周辺住宅などへの飛散や流出は、ほとんど見られなかったと説明した。除染作業により落ち葉や堆積物を取り除いた場合、土砂が麓に流れ出る危険性もあると指摘。民家や農地から約20メートル以上離れ、日常的に人が立ち入らない場所での除染は見送る方針を示し、了承された。
ただ、山の勾配が急で大雨などの際、土砂が流れ込む可能性がある住宅地などに限り、防護柵の設置など対策を講じる。
現在、同省が避難区域を対象に実施している除染では引き続き、20メートルの範囲が対象となる。市町村が主体となる事業では実施する場所について制約はない。しかし、広範囲での作業には多額の費用が必要となり、以前から国の補助対象から外れているため、独自に取り組みを始めるのは難しいとみられる。
同省はこれまで、県内面積の約7割を占める森林のうち、生活圏から20メートル以内とキャンプ場や遊歩道、キノコ栽培で人が入る場所に限って落ち葉など堆積物を除去するとしてきた。それ以外のエリアについては方針を示していなかった。
検討会終了後、井上信治環境副大臣は報道陣に「全てを面的に除染するのは物理的にも困難で、悪い影響の方が大きい。住民にとって一番良い手法を考えた結果だ」と述べた。
県や市町村は環境省に対し森林全体を除染するよう繰り返し要望してきた。今回の方針について、県森林計画課は「県民生活にとって森林は生活の一部。帰還する住民が不安を抱かないためにも、国の責任で取り組むよう引き続き求めていく」としている。森林・林業活性化推進県議会議員連盟は21日、県に森林除染の推進を要望した。関係者は「住民が納得する範囲まで実施してほしい」と訴えた。
■林業対策が課題
環境省が森林全体を除染しない方針を固めたことに、県内の林業関係団体からは伐採などに従事する作業員の被ばく対策を強化するよう求める声が上がった。
原子力規制庁が昨年11月、避難区域の森林で行った空間放射線量調査の平均値は毎時6.5マイクロシーベルトで、最も高い場所は毎時31マイクロシーベルトだった。避難指示解除の要件となる毎時3.8マイクロシーベルトを大きく上回っており、県森林組合連合会の関係者は「除染をしない森林で働く作業員の精神的不安に配慮すべき」と指摘した。さらに、何らかの手当支給や労務単価の上乗せなど、特別な対策を講じるよう国や東電に要望する考えを示した。
シイタケ原木の本格的な生産再開に向けて、原木林の線量低減は急務となっている。多くの産地で原木の放射性セシウムが林野庁の指標値(1キロ当たり50ベクレル)を超え、かつて全国一を誇った出荷量は平成24年には原発事故前の6%にとどまった。県林業振興課は「除染しないと、原木林の再生がさらに遅れてしまう」と懸念している。
国が、福島の住民の生活圏からたった20m離れただけの森林の除染は全部あきらめた http://blog.goo.ne.jp/raymiyatake/e/4a2fc4dd58d01b0f4e8370246940e34c
Everyone says I love you ! 2015年12月21日
NHKの今朝の報道によると、福島第一原発の事故のあと、各地で行われている除染を巡り、国は住民の生活圏から離れた森林について、除染を行わない方針を固めたというのです。
東北地域の森林地帯は膨大ですから、いずれにせよ除染は無理だと思っていました。
また、除染といってもこっちにある放射性物質をあっちに動かすだけで、セシウムやストロンチウムなどの放射性物質がなくなるわけではないですからね。
しかし、私が驚いたのは、除染をする生活圏と除染をしない森林の境目が20メートルしか離れていないということなのです。
道路から20mというとこんな具合らしい。(写真は省略)
福島県内だけでも9割近くが森林部分。(写真は省略 以下同)
NHKによると、福島第一原発の事故を受けた森林の除染について、国は現在、原則として住民の生活圏から20メートルの範囲に限定して行っていて、それ以外の大部分については方針を示していません。
国は専門家の会議で検討を進めてきましたが、新たに生活圏から離れた大部分の森林は、除染を実施しない方針を固めたことが分かったというのです。
生活圏からたった20メートルですよ!
そんなん、子どもや動物がすぐ入ってしまうに違いありません。
燃やしても放射性物質はなくならない。どうしようもないです。
逆に、20メートルしか離れていなかったら、どうやったって放射性物質が飛んできますよ。
国は福島県内で行った調査の結果、森林から生活圏に影響を与えるような放射性物質の飛散が確認されなかったというのですが、これは全く信用できないんですが、皆さんはどうですか?
雨が吹いても風が吹いても、たった20メートルしか離れていないところに影響がない?
それは影響があるという算定基準が高すぎるんじゃないでしょうか。
福島原発事故から4年半。原発から20キロ圏内の「死の街」。外国人写真家の撮った浪江町、双葉町、富岡町。
そのほかに、国は森林部の除染をやめる理由として、除染で広範囲にわたって落ち葉を取り除くことで土壌が露出し、土砂が流出するなどの悪影響が懸念されるとしています。
これは何となく納得できます。
しかし、国は土砂の流出対策として、傾斜が急な場所などでは木の柵を設置するほか、間伐などを進めて森林を再生させるとしていますが、この除染をしない森林地帯は、立ち入り禁止にでもするんですか。
何が本当に森林文化の復興なのか考えないといけない。
下郷町の観音沼森林公園。言葉を失う美しさなのに、目には見えない汚染は必ずある。
日本が先の大戦に敗れたとき、占領軍の幹部たちが、日本の豊かな森林地帯を見て、日本は再び立ち上がれるといったという話が残っています。しかし、今度の「戦争」ではその森林地帯が台無しに。
除染には莫大な費用が掛かり、しかも無駄ですから、除染なんてできないことをやっと認めたのはいいけれど、あらためて原発事故の恐ろしさを実感しました。
対案なんてない。
原発をゼロにするしかない。