2022年7月2日土曜日

電力不足 夏だけじゃなく東電管内の冬はもっと危機的

 サンデー毎日などが今夏と冬の“停電可能性”を電力会社別に把握する記事を出しました。それによると電力会社同士で電力を融通し合っても、次の冬には今夏よりも深刻な電力不足に見舞われるということです( 記事中の マークのURLをクリックすると表2と表3が表示されるので、それをご覧になりながらお読みください)。 
 電力不足を解消するためには故障した火力発電を早く修理することが当面必要です。そして冬季用対策としての風力発電を含めた再生エネ発電の拡大を本気で図ることです。世界に比べて再生エネが決定的に遅れているなかで、再生エネに電力網を開放せずにその拡大を妨害し、原発を再稼働させようとしているのは最悪の対応です。
 そもそも原発は危険であり地球を汚染する上に逆に地球を温暖化するので、電力不足対策のために再稼働させようとするのは基本的に間違いです。
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夏だけじゃなく東電管内の冬はもっと危機的 
余裕ない中部~西日本 “停電可能性”を電力会社別に把握する
                              サンデー毎日×週刊エコノミストOnline 2022/7/1
 今夏は東北、東京、中部電力の3社、冬は北海道と沖縄電力を除く全ての電力会社で電力需給が逼迫する見通しだ。
 今夏と今年度の冬は「厳気象」(10年に1回程度の猛暑・厳寒)になった場合、電力需給が厳しくなると予想されている。さらに、3月16日に発生した最大震度6強の福島県沖地震の影響も加わり、厳しさは一段と増している。
 通常、電力会社や全国の電力需給を監視している電力広域的運営推進機関(OCCTO)による電力需給の予測・検証は、各電力会社の電力供給力(需給逼迫=ひっぱく=)時に使用する予備的電源含む)と、電力の最大需要量の数値を収集するところから始まる。
 その後は、①緊急時に行われる火力の増出力運転、②連系線(電力会社同士を結ぶ送電線)の活用、③発電所の計画外停止率(故障などで停止する確率)の考慮、④最大需要電力のばらつきをそろえる(最大需要の時間帯や時期は各地域で同じではない)──といったプロセスを経て、最終的な電力需給の予想結果が公表される。
 3月16日の福島県沖地震を踏まえて4月12日に経済産業省が公表した今夏、今冬の電力各社の予備率一覧(最終評価)はかなり厳しい数字が並んでいるが、分かりにくいので、福島県沖地震の影響を考慮する前と後の発電能力の変化も見ながら、電力需給がいかに厳しいかを把握してみたい。
 OCCTOは3月22日、電力各社の予備率3%確保を前提としたうえでの、今夏・今冬の発電能力の余剰分を公表した(表2)。福島県沖地震の影響は考慮されておらず、連系線活用など前述の調整内容も盛り込まれていない。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/76eda69dbf0e2cf42890e993e81965da9bfc453d/images/000 

◇地震などで火力が故障
 予備力(供給予備力)とは、当該時期の電力供給力から予想電力需要量を引いたもの。「予備率3%」は電力安定供給に必要な最低限の目安とされる。電力は常時、需要量と供給量がマッチしていなければならず、供給力が不足すれば、その電力会社で停電が起きる。このため、電力会社は発電所の故障や定期点検による休止を織り込み、最大電力需要以上の十分な電力供給力を持つ必要がある。
 表2をみると、夏季は中部、関西電力で発電能力の余剰分がマイナス。冬季は東京、中部、北陸、関西、四国、九州電力がマイナスになっている。ただし、このマイナスがただちに停電を意味するわけではない。例えば、夏季は中部、関西電力がマイナスだが、他の電力会社の発電能力に大きな余剰分があるので、全体では予備率3%以上を確保しているとみなされる。大きな余剰分を持つ電力会社が、中部と関西電力に電力を応援供給すればよいということだ。
 しかし、福島県沖地震の影響も加わり、電力需給はより厳しくなっている。表3は、4月12日に経産省が公表した、福島県沖地震やその他事象を踏まえた、電力各社の今夏・今冬の余剰電力の状況だ。
 発電能力の余剰分が増減した主な要因は次の通り。
・東北電力相馬共同火力発電所(福島県)が地震による故障で夏・冬季に94万~188万キロワット出力減
・Jパワー磯子火力発電所(神奈川県)2号機が故障で夏季に57万キロワット出力減
・JERA袖ケ浦火力発電所(千葉県)1号機が再稼働で夏季に54万~58万キロワット出力
・常磐共同火力勿来(なこそ)発電所(福島県)8号機が地震復旧前倒しで35万~56万キロワット
・九州電力玄海原子力発電所(佐賀県)3・4号機が工事工程見直しで7月10日まで118万キロワット減、冬季は12月~23年1月に236万キロワット減、23年2月は118万キロワット減
 この結果、夏季は7月に東北、東京、中部電力で予備率が3.1%となり、想定数を上回る発電所故障があった場合、即座に3%を下回る水準となった。
 さらに厳しいのが冬季で、東北電力が23年1月に予備率3.2%、2月に3.4%と3%台に。東京電力は1月に予備率がマイナス1.7%、2月はマイナス1.5%と、予備率がマイナスという非常に厳しい事態に陥った。中部から西日本の電力会社も、一律で1月は予備率2.2%、2月は2.5%と3%を下回る見込みで、物理的に東電に送ることが可能な全量を送った後の数値のため余力は乏しい
 つまり、今冬の東京電力管内は、他の電力会社と比べても、停電の可能性が高まっている。また、中部から西日本の電力会社も予備率は3%を下回っている状況は、いつ不測の事態が起きて停電してもおかしくないということだ。
 
◇電源・電力の公募調達へ
 こうした結果から、政府や電力会社は対策に乗り出している。夏季は全体で見れば予備率3%となるが、発電所の故障リスクを考慮して、OCCTOは120万キロワット分の電源(休止中火力で稼働してくれるもの)や発電した電力を公募する方針だ。
 今冬は、中部電力に休止中の火力発電所が89万キロワットあり、これが再稼働すれば中部~西日本地域の不足分(23年1月・72万キロワット、同2月・41万キロワット)を上回り、中部~西日本地域は予備率3%以上を確保できる見通しだ。しかし、東京電力は23年1月までに再稼働の可能性のある火力発電所が58万キロワットしかなく、予備率3%が確保できない。このため、東電も電源と電力の両方の公募を行う予定だ。
 一方で、政府は節電要請の方法の見直しを行うほか、計画停電の準備も整える考えだ。電気事業法に基づく電力使用制限令の発動も視野に入れるとみられる。
                  (小笠原潤一・日本エネルギー経済研究所 研究理事)