2015年6月12日金曜日

2030年には原発10基を40年超運転するかリプレイスの腹づもり

 宮沢経産相は、10日衆院経産委員会で、2030年度原発比率「20~22%」を達成するには、3前後の原発が稼働していることが必要だと述べました。
 これは現在建設中の3基に加えて、原則40年と決めた稼動の限度を10基分については20年ほど運転延長をしないと達成できません。実際にはそんな危険なことはできないので、老朽化した原発はリプレイス(建て替え)することを目指していると考えられています。いまはまだ公けにはしていませんが、いずれは公然と主張するものと思われます。
 2030年度の電源構成案で原発の比率を「20~22%」にした背後には、そうした腹づもりがあったということです。
 
 アメリカは1970年代半ば以降、「不採算」を理由に原発の増設をやめて撤退する方向で進んでいるのに、日本は世界一の電気料金の中でそんな風にして原発を維持しようとしています。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2030年に「30基台半ばの原発必要」 宮沢経産相
朝日新聞 2015年6月10日
 宮沢洋一経済産業相は10日の衆院経産委員会で、2030年度の電源構成(エネルギーミックス)案で示した原発割合「20~22%」を達成するには、「30基台半ばの原発が稼働していることが必要だ」と述べた。民主党の馬淵澄夫衆院議員の質問に答えた。
 
 全国で既存の原発は43基あり、これに建設中のJパワー(電源開発)大間原発(青森県)と東京電力東通原発1号機(同)、中国電力島根原発3号機(松江市)の3基を加えると計46基になる。
 
 政府は東日本大震災後、原発の運転期間を原則40年と決めたため、これを厳密に守ると30年時点で原発は46基の半分の23基しか残らない。宮沢氏がいう「30基台半ば」を確保するには、例外として最長20年まで認められている運転延長をした老朽原発が、10基程度必要になる計算だ。
 
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、老朽原発の運転延長は「大変なハードル」として、厳しく審査する姿勢を示している。しかし、宮沢氏は「(規制委が)それをパスする可能性を否定しているわけではなく、事業者側には(運転延長に)かなり高い意欲がある。達成できる可能性は十分ある」と話した。
 

電源構成/世界の潮流に乗り遅れる
神戸新聞 2015年6月11日
 経済産業省が2030年度の電源構成案(エネルギーミックス)を示した。原発の比率を20~22%、自然エネルギーを22~24%などとする。
 政府は近く閣議決定するが、実態は原発重視への逆戻りである。
 原発事故が起きる前の原発比率は28%。事故後、政府は原発の運転期間を「原則40年」と決めた。その通り進めば30年度には15%程度まで減じる。安倍政権は可能な限り原発依存を減らす方針を掲げてはいる。
 20~22%の比率は、原発の運転延長か新増設を見込まなければ達成できない数値ということになる。
 運転延長は1回限り、例外的に認めるルールだが、老朽化に伴う安全上のハードルは高い。
 だが、前政権が「新増設はしない」とした方針に安倍政権は言及していない。恐れるのは、数値目標が独り歩きすることの弊害だ。
 
 「政官業」の原発回帰圧力は、事故前の勢いを取り戻した。原子力規制委員会による審査のハードルが低くなり、新増設の政府判断が安易に流れる可能性もないとはいえまい。
 経産省の長期エネルギー需給見通し小委員会の議論も、結論ありきだった。最終報告書案は、原発を最も発電コストが安い電源とし、再生エネを増やすエネルギー政策はコストの上昇圧力になると指摘。経産省の意のままに運ばれたといえる。
 電源構成を考える上でエネルギー自給率や地球温暖化への貢献、電気料金の抑制は確かに重要な要素だ。だが、地震・火山国で原発を動かす危険性が軽んじられている。原発が安全審査に合格することと原発の安全は別だ。根拠のない「安全神話」の復活を許してはならない
 
 政府が全力で取り組まねばならないのは再生エネである。投資や起業を加速させ、地方再生の切り札にする。電源構成案の再生エネ比率は原発重視という批判をかわすための数字合わせの印象を免れない。
 地熱、波力、木質バイオマスなどの潜在性に富むこの国で再生エネを、どう位置づけるか。構想力や哲学に欠ける経産省のやり方では育つはずの芽も育つまい。
 原発を経営の柱にする電力会社は電力完全自由化で消費者から相手にされなくなる可能性もある。
 15年後、さらにその先を見据えた電源構成にしないと再生エネへシフトする世界の潮流に乗り遅れる。