福島第一原発には、現在、ALPSで処理されて金属イオンによる放射能はほぼ完全に除去されたものの、トリチウムで高度に汚染された水 約46万トンが330基のタンク内に貯蔵されています。
セシウムやストロンチウムなどいわゆる汚染水中の放射性物質は金属イオンが放射能化したものなので、逆浸透膜(ALPSの処理原理)やイオン交換樹脂によって金属イオンを除去することで放射性物質も除去されます。
しかしトリチウムは、いわば水の組成である水素原子が放射能化したものなので、逆浸透膜やイオン交換樹脂などのいわゆる脱塩装置では除去することが出来ません(水と同じ性質なので簡単に通り抜けてしまう)。そのために上記のような状況が生まれています。
政府は来年度前半にも有識者や県内の漁業関係者らからなる検討会を新設し、最善の処分方法を決める方針を固めましたが、それこそノーベル賞級の研究課題なので、解決の糸口は見えていません。
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トリチウム処分足踏み 第一原発汚染水 政府、来年度に検討会新設
福島民報 2015年6月23日
東京電力福島第一原発で、多核種除去設備(ALPS)を使っても汚染水から取り除けない放射性トリチウムを含む水の処分方法をめぐる動きが足踏みしている。政府は来年度前半にも有識者や県内の漁業関係者らからなる検討会を新設し、最善の処分方法を決める方針を固めた。しかし、大量のトリチウム水を処分する技術は依然として確立されておらず、漁業関係者らも「陸上保管が前提」と慎重姿勢で、課題解決の糸口は見えない。
■議論本格化
検討会は経産省の作業部会が絞り込んだ5つの処分方法について適切かどうか議論し、採用する方法を決める。検討会の構成員など概要は今後詰めるが、地元の意向をくみ上げる観点から、周辺自治体や漁業関係者らもメンバーに加える案が浮上している。
経産省の作業部会は「採用方法について結論を出す場ではない」(同省)との位置付けで、検討会が作業部会の成果を引き継ぐことになる。同省の担当者は「国民の理解を得るため、拙速にならないように進めたい」と話している。
ただ、作業部会は現在、それぞれの処分方法について実証試験を実施しているが、有効性が認められるとは限らないのが現状だという。
■慎重姿勢
漁業関係者をはじめ地元関係者は風評などを懸念し、海洋放出など陸上保管以外の処分方法には慎重な姿勢を崩していない。
県漁連の野崎哲会長は「ALPS処理水は現時点では陸上保管が前提。政府がどういう提案をしてくるかを注視している段階だが、いずれにしても風評を招かないように丁寧な説明を求める」としている。
県原子力安全対策課の菅野信志課長は「県としては安易な海洋放出は認めない。どの選択肢を選ぶにしてもしっかりと議論した上で県民の理解を得てほしい」と注文した。
■保管のリスク
東電によると、福島第一原発構内には18日現在、ALPSで処理したトリチウム水約45万7500トンが地上タンク約330基に貯蔵されている。これらの水は日々増加しており、トリチウムを処分できないと地上タンクを造り続けなくてはならない。
タンクのうち、板状の鋼材をボルトでつなぎ合わせたフランジ型タンクの耐久期間は5年とされている。継ぎ目のない溶接型タンクへの切り替えを急ぎながらタンクの増設も進めている。汚染水対策に取り組む作業現場で大きな負担となっている。タンクの設置場所にも限界があり、原子力規制委員会の田中俊一委員長(福島市出身)は「トリチウム水を海洋放出すべき」と指摘する。