2015年6月9日火曜日

原発賠償終了「早すぎる」 福島の商工業者ら困惑

 政府と東電は7日、福島原発事故で避難した商工業者の損害賠償について、2016年度までの2年分をまとめて払い、終了する方針を明らかにしましたが、被害者たちがその先開業できるかどうかは不明です。
 地域社会がほぼ元通りに復活しないことには、従来どおりの商工業が成り立つ筈もありません。それなのに国と東電の都合で一方的に損害賠償を打ち切られては、困惑するばかりです。
 
 それにしてもなぜ加害企業の東電がこんな態度に出られるのか不思議なことです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発賠償終了「早すぎる」 福島の商工業者ら戸惑い
朝日新聞 2015年6月8日
 政府と東京電力は7日、福島第一原発事故で避難した商工業者の損害賠償について、2016年度までの2年分をまとめて払い、終了する方針を明らかにした。賠償に頼らなくても自立した経営ができるよう、今後2年で支援策を集中させる。実際自立できるのか、地元は困惑している。
 
■政府の方針説明に首長らも慎重
 福島市で開かれた福島県の協議会で、東電の広瀬直己社長と経済産業省の高木陽介副大臣が、被災自治体の首長や商工業者の代表らに方針を説明した。営業損害を受けている約8千の事業者には事故前の利益を今後2年分まとめて払う。居住制限区域などの避難者への慰謝料も3年分まとめて支払い、打ち切る。
 一方、政府は、商工業者の自立支援策などを近く閣議決定する。自立を進めて、被害者に支払う賠償額を圧縮するのが狙いだ。
 
 官民合同で支援チームをつくり、事業者を個別訪問する。事業再開した事業主には、賠償金による設備投資などで業績回復を目指す。再開や転業ができないときは、転職先を見つけて収入を得る手段を考える。県によると、避難事業者の半数は今も再開していない。
 協議会に出席した、被災自治体の首長からは慎重な意見が相次いだ。福島第一原発があり、ほとんどが帰還困難区域の大熊町では、多くの商工業者は避難先で事業を再開するしかなく、新たな顧客を見つけなければならない。渡辺利綱町長は「事業再建に向け、個別の状況に応じた手厚い支援をお願いしたい」と話した。
 
■自立できるか不安も
 賠償の期限を切られたことに対し、事業主からは困惑の声が上がる。
 「あと2年分で賠償が打ち切られるのは早すぎる」。全域で避難指示が出ている富岡町で米穀店を経営していた山本育男さん(56)は、いわき市内の借り上げアパートで避難生活を続けている。
 避難指示解除後に町内で店を再開するつもりだが、どれだけ町民が戻るかわからず、気持ちの整理がつかない。老人施設運営やワイン醸造への転身も考えたが、「もし失敗したらどうしよう」と話す。
 全町で避難が続く楢葉町で母(74)と美容院を営んでいた早川久美子さん(48)も、店の再開を決断できないでいる。町は年内の避難指示解除が見込まれるが、常連客の中には町に戻らないと決めた人も多い。
 「いつまでも賠償に頼っているのもどうかと思う。だが、町民が戻ってくるかどうか。自分の考えがまとまらない」
 一方、楢葉町でパン屋を経営していた八橋真樹さん(43)は避難先のいわき市で5月、店を再建した。原発事故後は市内の仮設住宅のそばで仮設店舗を営んでいたが、赤字続きだった。それでも、「政府の支援策にはもう頼りたくない」と話す。
 もともと売り上げの多くは避難指示区域に指定された第一原発周辺の町の客に支えられていた。彼らも避難しており、故郷に戻る見込みは立たない。「被害はあと1年や2年の話ではない。(避難指示が解除されても)元の状態に戻るわけではない」という。(根岸拓朗、鹿野幹男、編集委員・大月規義)