神戸新聞 2015年6月26日
25日に一斉に開かれた電力9社の株主総会。関西電力の八木誠社長らが赤字決算や電気料金の再値上げを謝罪した一方で、各社とも原発再稼働の必要性は譲らず、脱原発をめぐる議論は最後まで平行線をたどった。来年4月の電力小売り全面自由化を見据えた戦略も見えにくく、株主の怒りが噴出した。
「原発反対の世論を無視している」「なぜ原発推進の話ばかりするのか」。関電の総会では怒りに満ちた株主の発言が相次いだ。各社の会場周辺には反原発の市民団体が詰め掛け、会社関係者らと言い争う場面もあった。
神戸市の久元喜造市長も「再値上げは市民生活を圧迫しており、極めて遺憾」と怒りを表した上で「原子力以外の多様なエネルギー源の活用を含めた最適な電源構成を示せ」と迫った。
原発をめぐっては福井地裁が関電の高浜3、4号機(福井県)の再稼働を差し止める仮処分を決めたが、九州電力では川内1号機(鹿児島県)の8月再稼働に向けた準備が進む。世論調査では再稼働反対の意見が多数派だが、電気料金の値上げに苦しむ家計や企業、原発の立地自治体には再稼働を待ちわびる声もあり、世論は割れている。
電力9社の総会では、脱原発の株主提案が議題となったが、いずれの提案も否決された。
【経営崖っぷち】
電力各社の業績は一様ではない。2015年3月期連結決算は燃料価格下落の効果もあり、9社のうち6社が経常黒字を確保した。一方、北海道と関西、九州の3電力は4年連続の赤字となり、崖っぷちに立たされている。
明暗が分かれた背景には、原発依存度の違いがある。東京電力の福島第1原発事故が起きる前の10年3月末を見ると、発受電電力量に占める原発比率が北海道は35%、関西45%、九州42%と他社に比べて高めとなっている。原発が止まると、代わりを埋める火力発電の燃料費負担が他社より大きくなった。
北海道電や関電の社長は経営不振をわびる一方、原発再稼働で経営を立て直す考えを強調。関電の株主から「原発(依存)を高めたことが(財務の)悪化につながった。反省の弁が一言もない」との批判も出た。
【見えない戦略】
一方、政府が進める電力システム改革は来年4月の小売り全面自由化で大きな節目を迎える。異業種からの新規参入企業を迎え撃つ大手電力にとって重要な経営課題のはずだが、総会での議論は低調だった。
関電の株主総会後の記者会見で八木社長は「大事なことは料金の競争力を上げることと新たなサービスを提供することの二つ。(通信会社などとの)提携も検討していきたい」と意欲を語ったが、具体的な説明は乏しかった。
東北電力は13年9月の電気料金値上げ後、約1700の顧客が流出した。この日社長に就任した原田宏哉氏は「引き続き家庭やビジネスの場で利用してもらいたい」と話すのがやっとだった。