東電が08年3月ごろまでに、三陸沖津波について従来の想定を上回る最大15・7メートルの津波を試算していたことが最近明らかにされました※が、今度は99年に、福島沖で巨大地震が発生すれば8メートルの津波で同原発1~4号機が完全に浸水する、とした「津波浸水予測図」を国土庁(現・国土交通省)が作成していたことが分かりました。
※ 6月19日 東電は震災の2年半前に津波高さ15・7mを想定
津波防災の関係省庁が98年、全国の自治体に「津波防災対策の手引き」を通知し、国土庁がこの手引きにのっとって試算し各地の津波浸水予測図を作成したもので、サイエンスライターが内閣府に情報公開請求し、明らかになったものです
先のケースも含めて、東電は巨大津波の規模を可能性として認識していたものの、「近々来ることはないだろう」という思いから対策を怠っていました。
3.11の大津波はそうした身勝手な思い込みが許されないことを示しましたが、原子力規制委は川内原発の火砕流の問題で、またもや「近々来ることはないだろう」の思いを広言して再稼動に踏み切りました。
規制委が再稼動に突き進む機関であることを示しています。
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国は福島原発事故を予測? 99年に津波予測図作成
神戸新聞 2015年6月24日
東京電力福島第1原発事故が起きる10年以上前、福島沖で巨大地震が発生すれば8メートルの津波で同原発1~4号機が完全に浸水する、とした「津波浸水予測図」を国土庁(現・国土交通省)が作成していたことが分かった。(木村信行)
同事故の国会事故調査委員会で協力調査員を務めたサイエンスライターの添田孝史さん(50)=神戸市須磨区=が内閣府に情報公開請求し、明らかになった。
浸水予測図の作成は1999年。目的について「発生頻度の少ない津波地震(の備え)は、過去の経験だけでは必ずしも十分でない」とし、当時の研究成果を踏まえた最大モデルを想定。「海岸ごとに津波対策を検討するための基礎資料」と位置付けていた。
国は当時、想定を超える津波で200人以上が犠牲になった北海道南西沖地震(93年)を踏まえ、津波対策の指針を検討。7省庁(国土庁、運輸省、建設省など=いずれも当時)は98年、過去の実例と、想定される最大規模の地震を比較し、「常に安全側から対応するのが望ましい」とする「津波防災対策の手引き」を全国の自治体に通知した。
浸水予測図はこの手引を踏まえて作成され、企業にも活用を呼び掛けた。これに対し、東京電力は2002年、過去の経験などを基に同原発の津波高の最大を5・7メートルと想定していた。
内閣府の担当者は「当時はシミュレーションの精度が粗く、この図をもって原発の被害を予測できるものではない。危険性を知り、詳細分析につなげてもらう意図だった」と話す。一方、添田さんは「なぜ浸水予測図がその後の津波対策に生かされなかったのか、謎が多い」と指摘する。
11年3月11日の東日本大震災で同原発を襲った津波は約13メートルだった。
国土庁(当時)が1999年に作成した津波浸水
予測図(赤字は神戸新聞が追加)