日本では太陽光や風力による再生エネルギー発電の比率は、経産省と電力会社の作戦で15年後の目標値がわずかに8・7%と、海外に比べて桁外れに低く抑制されています。
因みに海外では現時点で既に、ドイツ30%、スペイン50%、イタリア40%、デンマーク41%という具合です。
天下り先などの省益につながる原発関連企業を守るためには、国の利益を損なうことなどなんでもないという考え方です。
折に触れて海外の記事を翻訳して紹介してくれる「星の金貨プロジェクト」が、再生エネ100%を既にほぼ実現しているドイツの小さな村についての記事を紹介しました。
そこでは自前の送電網を作り、電気料は従来の1/3に下がりました。
そうした実情を視察する見学者が、1日平均で実に3000人に及んでいるということです。
ドイツはまた国全体としても2050年までに再生エネ100%を目指しています。
(関係記事)
5月27日 自然エネルギー発電が決定的に遅れている日本
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再生可能エネルギー100% 社会を実現するドイツ・目標は2050年
《前篇》
Admin星の金貨プロジェクト2015年6月18日
再生可能エネルギー供給が100%を大きく超える社会が、すでに実現されている
巨大電力会社所有の送電網利用の拒否に対し、自前の送電網を建設、電気代は一気に3分の1に
(アンドリュー・ボーエン/ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 5月28日)
ドイツは2050年までにエネルギーの100パーセントを再生可能エネルギーから得ることが出来るようになる、一部の専門家はそう確信しています。
再生可能エネルギー100%社会、それは遠いゴールのように見えるかもしれません。
しかし実は、ブランデンブルグの小さな村では、すでに成し遂げられたものなのです。
フェルトハイムの住民に、彼らが暮らす村について説明してくれるよう頼んでみましょう。
少なくともひとつの点については、同じ答えが帰ってくるはずです。
静かさです。
ベルリンの南西約60kmの場所にあるフェルトハイムは、人口わずか128人の小さな村です。
見ただけでは何の変哲もありません。
しかしこの村のたった一本のメインストリートの下に張り巡らされた電源ケーブルと暖房用のパイプに電気を供給しているのは、すべて再生可能エネルギーです。
51歳のペトラ・リヒターさんは、フェルドハイムで生まれ育ちずっとこの場所で暮らし、現在村長の役を担っています。
彼女はこの村が実現したことを、大変誇りに思っていると語りました。
「村の人々がみんなで力を合わせ、短期間のうちにチャンスをものにしたことにより、この取り組みが実現できたと考えています。」
▽風力からバイオマスへ、そして太陽光へ
フェルトハイムの取り組みが始まったのは1995年でした。
当時工学部の学生であると同時に起業家であったミカエル・ラシュマン氏が、地元の農業協同組合が所有する農場に4基の風力発電タービンの設置を提案しました。
比較的平地が多く風の強い気候は、風力発電にうってつけであることが解りました。
ラシュマン氏も共同経営者のひとりである再生可能エネルギー会社エネルジーケレ(Energiequelle)社と協力しながら、フェルトハイムは風力タービンの数を47基にまで徐々にふやしていきました。
「プロジェクトは最初から今日の形をめざしていた訳ではありません。徐々に徐々に現在の形になって来たのです。」
近所に住む在留英国人で、フェルトハイムの再生可能エネルギーシステムのツアーガイドをするキャサリーン・トンプソンさんがこう語りました。
フェルトハイムでは最新最大の風力タービンは、1基だけで年間900万キロワットの発電を行っており、1基で村全体の電気需要を十二分に賄うことが出来ます。
フェルドハイムで再生可能エネルギーによって生み出される電気の実に99%は、市場に売電されているのです。
風力発電所の成功を基に、農業協同組合は事業を多角化しました。
穀物価格の下落と光熱費の値上げに直面したフェルトハイムの農協はバイオガス発電所の建設を決定しました。
この村ではトウモロコシと穀類の実をとった後の葉や茎、そして豚と牛の糞を混ぜ合わせたものをメタンガスに転換させます。
このガスは村のすべての家々の暖房用の燃料となっています。
そして2008年、バイオガス発電所が稼働を始めた年、フェルトハイムとエネルジーケレは太陽光発電システムの設置を開始しました。
太陽光パネルが遺棄さられた旧ソビエト軍の軍事設備の跡地に設置され、現在、一般家庭600世帯分以上の電力を生み出しています。
〈後篇に続く〉
再生可能エネルギー100% 社会を実現するドイツ・目標は2050年
《後篇》
admin星の金貨プロジェクト2015年6月20日
気候変動問題に対する自分たち世代の責任行動、それが再生可能エネルギー供給100%を超える社会の実現
再生可能エネルギーによる発電、自前の送電網の整備、住民自らの取り組みにより電気代は一気に3分の1に減少
(アンドリュー・ボーエン/ドイチェ・べレ(ドイツ国際放送) 5月28日)
▽新たな自分たちの送電網
フェルトハイムの中、そしてその成功を見て周辺の自治体が次々と再生可能エネルギー開発に踏み出して行きましたが、エネルギーの自給自足社会の実現にはまだ大きな障害が残っていました。
電力会社E.ONは送電網をフェルトハイムに売却することも、賃貸することも、その両方を拒否したのです。
こうした嫌がらせに対し、フェルトハイムもエネルジーケレも屈することはありませんでした。
彼らは独自に送電・受電が出来る送電網と、暖房用の配管のネットワークの建設に取り組むことにしたのです。
財源はEUの助成金と事業用資金の貸し出し、そして村人一人当たり3,000ユーロ(約415,000円)の拠出金でした。
2010年、村民たちが築いた送電網に電気が流されました。
そしてここに従来の大規模発電事業から完全に独立した再生可能エネルギー100%社会が実現し、各家庭の電気代は一気に3分の1になったのです。
そして同時に自他ともに認めるカーボン・ニュートラル(炭素循環型)社会が実現したのです。
しかしカーボン・ニュートラルという名称については、幾分割り引く必要があるかもしれません。
ドイツの法律はこうした送電網との接続を、自宅の所有者に限っています。
フェルトハイムの住民であっても、少数ですが賃貸住宅で暮す人は従来の送電網から、他のドイツ国内で暮らす人々と同じ電気を購入しなければならず、その電気は再生可能エネルギー100%ではありません。
しかし在留英国人で海外からのフェルトハイム見学者のためのガイドを務めるトンプソンさんは、最終的には法律が改正され、村の全員が独自の送電網を使って再生可能エネルギーの供給を受けることが出来るようになることを期待していると語っています。
さらにフェルトハイムではすべての発電設備が停止しても、2日間村に電気を供給できる大型の蓄電池の設置を現在進めていますが、この秋には稼働を開始する予定になっています。
▽模範例?
フェルトハイムについて発信された情報の総量は莫大なものになり、村はちょっとした観光の名所になりました。
この村には一日平均3,000人の訪問者がやってきますが、その中には福島第一原子力発電所の事故を受け、次の世代のためのエネルギー源について模索する日本人の姿を数多く見かけると言います。
オーストラリアで持続可能エネルギーの開発普及に取り組む活動家のリン・ハヴィーさんは、最近フェルトハイムを訪れましたが、村民が自前の送電網を整備したその取り組み姿勢に感動したと語りました。
同じくオーストラリアのビクトリアから見学に来たリッデルズ・クリークさんは、故郷で同じ取り組みを実現させるのは難しいだろうと語りました。
ひとつはビクトリアという都市の規模、もうひとつは大手電力会社の存在です。
「気候変動の問題については、私たちの世代がなんとか解決のための糸口を見つけ出さなければなりません。」
リッデルズがこう語りました。
「それは、人々次第です。言えることは、私たちは先行する事例が存在する場所まで出かけていき、この目で確かめ、学ぶべきものを学び取る必要があるという事です。」
フェルトハイムの住民たち、そしてその再生可能エネルギー開発に携わった人々は、ここと同様の成功を世界中どこでも実現することは極めて難しいことであることは解っています。
しかし先出のトンプソンさんは、フェルトハイムではいくつもの幸運があったことを認める一方で、巨大電力会社などが圧力をかけてきたにもかかわらず、一丸となって再生可能エネルギー100%社会を実現した村の人々の不屈の精神を、過小評価するべきではないと考えています。
〈完〉