安倍政権は川内原発の再稼動に向けて「粛々」と歩を進めています。福島原発事故からまだ4年、復興は緒に着いたかどうかという段階にもかかわらずです。
原子力規制委は、審査合格は原発の安全性を保証するものでないと再三言明していますが、それもおかしな話で、規制委以外に技術的な判断を下す部署がない以上、規制委が安全を保証すべきですし、もしも保証が出来ないのであれば合格にすべきではありません。
それなのに、新しく設けた火山条項を適用して川内原発の再稼動を禁止するどころか、火山学会が猛反対をしているのにもかかわらず、委員長自らが「稼動期間中に火砕流に襲われる危険性は少ない」というような曖昧な理由をつけて、無理やり合格にしたという経緯もありました。
原子力規制委が実は原子力ムラの一員に過ぎないことはもう明白です。
政府が常に口にする、「世界一厳しい基準に合格したのだから安全だ」というのも虚偽で、大飯原発・高浜原発の再稼動を差し止めた福井地裁判決が指摘したとおり、日本の規制は甘いものでしかありません。
政府は安全の保証が得られていない装置を、一体どういう根拠で動かそうとしているのでしょうか。そこのところは明確にする責任があります。
いまは、政府は「世界一の基準に合格したのだから動かす。政府に技術面の責任はない」といい、電力は「規制委のいうとおり莫大な費用を掛けて完全なものにした。責任は当然規制委が持つべきだ」という立場なのに対して、規制委は、「合格はさせる。当然動かすだろうが、それに伴う責任は一切持てない」と、はなから明確な逃げ腰をみせているという状況です。
そのうえ住民の避難計画も出来ず、避難弱者の避難計画は出来ないと知事が明言し、周辺の自治体住民の60%が反対している中で、安全の保証されていない原発が、またしても完全な無責任体制の中で再稼動されようとしています。
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「主張」 川内原発の再稼働 避難計画も同意もない暴走
しんぶん赤旗 2015年5月31日
原子力規制委員会(田中俊一委員長)が鹿児島県の九州電力川内原発1、2号機について、設置変更許可、工事計画認可に続いて運転管理方法を定めた保安規定を認可しました。現在進めている使用前検査に合格すれば、再稼働に進む可能性が高まっています。原子力規制委の審査は原発の安全性を保証するものではなく、事故が起きた場合の避難計画はもともと審査の対象外です。周辺住民は、圧倒的に再稼働に反対しています。再稼働に突き進む安倍晋三政権や九州電力、鹿児島県などの自治体は、事故が起きた場合の責任はどう取るつもりなのか。
お互いに責任なすりあう
安倍政権は、安全性を保証するわけではないと原子力規制委自体が再三発言しているのに、規制委の審査に合格し、地元の自治体が同意した原発は再稼働させると繰り返してきました。原発再稼働を推進している自らの態度は棚に上げて、万一事故が起きた場合の責任は原子力規制委や自治体に転嫁する無責任な態度です。
原子力規制委の審査は、東京電力福島第1原発事故後作成し直した基準にもとづいて地震や津波の想定を見直し、事故が起きた場合の応急策などを求めたものですが、想定以上の災害が起きないと保証したわけではありません。川内原発に続いて審査に合格した関西電力高浜原発については福井地裁が規制委の審査は甘すぎると再稼働を差し止めています。
川内原発も周辺の火山噴火の影響などが十分反映されていないと専門家から批判されており、規制委の審査で安全が保証されたように取り扱うならばそれは大間違いです。川内原発にも近い口永良部島(くちのえらぶじま)で爆発的噴火が起きました。火山対策の不備は致命的です。
しかも規制委の審査は国際的には常識となっている住民の避難計画は対象外です。事故が起きることはありうるとし地元自治体には避難計画をつくるよう指示しながら、国も規制委も避難計画を審査しようともしないのは文字通り無責任のきわみです。これでは住民が安心できるはずがありません。
川内原発の場合、九州電力と鹿児島県、薩摩川内市は再稼働に同意していますが、隣の熊本県内を含め、再稼働に同意していない自治体は少なくありません。地元紙の南日本新聞の鹿児島県内での調査では再稼働「反対」が59・9%にのぼっています。再稼働を強行するのは絶対に許されません。
規制委の審査が終われば再稼働まで残る手続きは国の使用前検査だけですが、国や九州電力が決断すれば、再稼働を中止することは可能です。安倍政権も自治体や電力会社も、住民の意向を尊重するなら再稼働を中止すべきです。
行き場のない核廃棄物が
原発は再稼働させて運転を始めたとたん、取り返しがつかない事故の危険性が一気に高まります。それだけでなく原発の運転開始とともに危険な使用済み核燃料が増え続けます。政府や原発業界は使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現を掲げてきましたが、いまだに完成しておらず使用済み核燃料や核廃棄物が、原子炉の中にも外にもたまり続けています。文字通り「トイレのないマンション」と呼ばれる事態の進展をくいとめるためにも、再稼働は強行すべきではありません。