福島第1原発で発生するトリチウム水の海洋放出方針を巡り、東電は7日、放出で新たな風評被害が発生した場合の賠償について、価格の下落など被害を受けた事業者から賠償請求を受けた場合、統計データなどを活用して損害額を算定するとの手法を示しました。東電は年内に賠償基準を発表する方針です。
請求者に損害額の立証責任を課さない点はメリットですが、個別に請求を受けた場合に統計データを活用して風評の有無を推認し損害額を算定するのでは、既に風評被害を受けている現状と比較しても差が現れない可能性が大きいと見られます。
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「統計データ」基に風評の有無 処理水賠償、事業者の立証省略
福島民友新聞 2022/10/8
東京電力福島第1原発で発生する処理水の海洋放出方針を巡り、東電は7日、放出で新たな風評被害が発生した場合の賠償についての中間取りまとめを発表した。価格の下落など被害を受けた事業者から賠償請求を受けた場合、統計データなどを活用して風評の有無を推認し、損害額を算定するとの手法を示した。東電は年内に賠償基準を発表する方針。
賠償支払いの流れ 図解 ↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/844ffc71ee657d0487dda33366e035cb18ab9010/images/000
漁業、農業、観光業の3分野に加え、水産加工業、水産卸売業で風評被害を推認する方法と、損害額算定の考え方を発表。海産物の価格や観光客数が下落・減少した際、国や県、各種団体の統計データを活用することで全国の相場と比較して、どれだけ影響があったかを推認し、風評の有無を判断することを検討している。
損害額は価格の下落額や売上減少額を基に算定する。原発事故による賠償が継続している事業者は放出による風評があった場合でも、これまでと同様の方式で賠償するとした。
原発事故に伴う賠償を巡っては、事業者が震災前後の売り上げを証明する書類などを用意して東電に提出する必要があり、負担が重いとの指摘があった。東電によると、今回の手法を採用することで、事業者が被害状況を立証する手間が省けるとしている。
現段階では、日帰りや宿泊など風評があったとの根拠となる観光客の定義をはじめ検討が必要な部分が残っていることから、関係団体から意見聴取を続ける。これまで示してきた「期間・地域・業種を限定せず処理水放出に伴う損害を賠償」との方針は維持する。
7日、福島市で記者会見した東電の内田正明福島復興本社副代表は「今回の公表内容は現時点での検討状況。今後も意見をいただき、年内に賠償基準を示せるよう取り組む」とした。
東電、意見受け付け
東電は風評被害が発生した場合の賠償についての意見や質問を午前9時~午後7時(土、日曜日、祝日は同5時)に専用ダイヤルで受け付けている。