5日、原発を推進する経産省資源エネルギー庁の担当者が原子力規制委員会の会合に出向き、〝異例〟の意見交換を行ったということです。エネ庁担当者は「安全が最優先」という言葉を繰り返したそうですが、出向した背景に原子力政策の遅滞は許されないという強い思いがあるのは明らかです。
そもそも原発推進側の経産省と抑制側の規制委とが安易に会合を行うこと自体これまでは忌避されてきました。規制委員長の交代を機に経産省が盛んに圧力を掛けようとしています。
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規制委とエネ庁、異例の意見交換 原子力政策遅滞に危機感
産経新聞 2022/10/5
原子力規制委員会の会合に、原発を推進する経済産業省資源エネルギー庁の担当者が出向き、〝異例〟の意見交換を行った。背景には、電力需給の逼迫や、気候変動対応が待ったなしとなる中、これ以上の原子力政策の遅滞は許されないという強い危機感がある。規制が形骸化していたとの反省から誕生した規制委だが、その高い独立性が足かせとなり健全な議論すらできなくなる課題が生じている。両組織の関係改善の契機となるか注目される。
5日の会合で、運転期間の延長について説明したエネ庁担当者は「安全が最優先」という言葉を繰り返した。福島の事故前は、原発を推進する経産省の中に規制組織の「原子力安全・保安院」が置かれ、規制機能が十分に機能しなかったとされる。今回、エネ庁が再び規制の領域に踏み込んだと捉えられれば、保安院時代に逆戻りと映りかねず、一線は超えていない点を強調したい思いがにじむ。
細心の注意を払いながらも、エネ庁が運転延長の議論を持ちかける背景には、ウクライナ情勢も受けた足元のエネルギー危機を乗り越え、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする政府目標の達成には、原発の運転延長が不可欠だからだ。このまま40年ルールを厳格に守った場合、2050年に稼働している原発はわずか3基となる計算だ。
しかも40年ルールは規制委の発足前、民主党政権下の与野党協議を経て成立したもので、科学的な根拠はない。海外では運転期間に上限を設けず、規制当局の安全審査を受けながら、安全が確認されれば使い続けるケースが多い。実際、米国では80年の延長認可を受けている原発も6基ある。
〝ガラパゴス化〟している日本の40年ルールは、関係者の間ではたびたび問題視されてきたが、独立性の高い規制委に配慮するあまり、政府内ではまともに議論が行われてこなかった。ただ、エネルギーを取り巻く情勢が大きく変わる中、エネ庁の有識者会合でも、運転期間に限らず、規制委側との健全な対話を求める意見は多い。安全を前提に、推進と規制が建設的な議論をできる関係構築が求められている。(蕎麦谷里志)