経産省は最長60年と定めた原発の運転制限を削除する意向のようです。それに対して原子力規制委の山中伸介委員長は、「運転期間について規制委が意見を述べる事柄ではない」として経産省の検討にゆだねる考えを示しました。原発を推進する側の経産省が運転期限を延長しようとするのは目に見えていて、それを技術的に制約する役目が規制委にあるわけですが、それを「経産省の検討にゆだねる」というのでは役目の放棄です。委員長の交代で惧れていた事態が起きました。
もともと原子炉は放射線に晒されるので中性子照射による劣化が顕著です。それで従来は炉内に取り付けておいたテストピースを定検時に取り出して劣化の具合を確認してきたのですが、当初は30年が限度だったので既にテストピースは使い切り強度チェックは出来ない状況にあります。
原子炉は当初は30年が運転期限と考えられていたのですが、その限界が近づくといきなり40年に延ばし、さらに例外措置と謳いながら60年まで延期することにしたのですが、今度はその制限もなくそうという訳です(これは米国が80年まで延長したことに倣おうとするものです)。
川内原発1、2号機を有する鹿児島県の市民団体は一様に驚き、「フクシマの教訓を忘れたのか」「事故から学んでいない。信じられない」「核のごみの処分など課題が山積する中で、なぜ原発の稼働を続けるのか」と批判しています。
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原発の運転制限が法律から削除される可能性も
テレビ朝日系(ANN) 2022/10/6
最長60年と定めた原発の運転制限が削除される可能性が出てきました。経済産業省が検討する期限の延長を原子力規制委員会が実質的に容認する方針です。
5日に開かれた規制委の定例会で経産省側は、原子炉等規制法で定められた原発の運転期間延長を検討する考えを伝えましたが、これに対して委員から異論は出ませんでした。
山中伸介委員長も定例会後の会見で、運転期間について「(規制委が)意見を述べる事柄ではないという見解をすでに出している」と話し、経産省の検討にゆだねる考えを示しました。
経産省は運転延長を可能にする法整備も検討しています。
原子力規制委員会・山中伸介委員長:「(原子炉等規制法の)運転期間に関する項目だけが万が一、抜けてしまいますと、高経年化した原子炉の安全性確認の定めに関する規定がきちっと果たせないことになります」
山中委員長は経産省の検討次第では今後、炉規法から運転期間が削除される可能性もあるとして、60年を超えた原発の老朽化に伴う劣化や設計の安全性などをどう審査するか早急に検討するよう原子力規制庁に指示しました。
原発60年超運転めぐり規制委・山中委員長「意見を述べる立場にない」
テレビ朝日系(ANN)2022/10/5
原子力規制委員会は最長で60年と定めた原発の運転延長について検討している経済産業省から意見聴取をしたうえで、期間延長については意見を述べる立場にないとの姿勢を示しました。
山中伸介委員長:「発電用原子炉の利用をどれくらいの期間認めることとするかは、原子力規制委員会が意見を述べる事柄ではないという見解をすでに出している」
経産省側は規制委の意見聴取に対し、安全を前提に最長で60年とする期限を延長する方向で検討し、法整備を進めることを明らかにしました。
これに対して、規制委は運転の期間延長は利用政策であり、規制委として意見する立場にはないとするこれまでの考えを改めて示しました。
一方で運転期間の延長に備えて、老朽化に伴う劣化や設計の安全性などをどのように審査するか早急に検討するよう事務方に指示しました。
原発運転60年規定削除へ 規制委が転換 「40年」近づく鹿児島・川内原発、「福島の教訓忘れたのか」県内の市民団体反発
南日本新聞 2022/10/6
原子力規制委員会の山中伸介委員長は5日の記者会見で、原発の運転期間を原則40年、最長60年とするルールが削除される見通しを示した。電力の安定供給や脱炭素促進などに向け、原発を最大限活用する岸田政権の方針に沿う対応。運転開始から40年が近づく九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の稼働延長に反対する県内の市民団体は一様に驚き、「フクシマの教訓を忘れたのか」と反発した。
原則40年のルールは2011年の東京電力福島第1原発事故の反省を踏まえて定められた。「事故から学んでいない。信じられない」。川内原発建設反対連絡協議会の鳥原良子会長は憤る。電力の安定供給や脱炭素の促進といった政府方針に沿う規制委の対応に「事故前に戻ってしまう。住民の生命を軽視している」と語気を強めた。
「ストップ川内原発! 3.11鹿児島実行委員会」の向原祥隆共同代表は「規制委が政府の追認機関になったようなものだ。何のために存在しているのか」と怒りをあらわに。「高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の処分など課題が山積する中で、なぜ原発の稼働を続けるのか」と批判した。
川内原発1、2号機は2024年7月と25年11月に原則40年の期限を迎える。九電が規制委に運転延長を申請するのは確実とみられ、申請に必要な特別点検を実施中。同社は40年ルールの削除見通しについて、取材に「これから国において議論されていくと考えており、注視する」と答えた。
川内1、2号機の運転延長を検証する原子力専門委員会分科会を設置した県は「詳細を把握しておらずコメントできない。仮に制度の変更がある場合は国から説明があると理解している。現時点では、現行制度を前提に検証を進めていく」とした。