福島第1原発のトリチウム水の海洋放出で風評被害が発生した場合の東電の賠償額算定方法について福島民報が報じました。業種別に踏み込んでいる点が9日付の記事とやや違いますので続報として紹介します。
⇒(10月9日)「統計データ」基に風評の有無 処理水賠償、事業者の立証省略
除本理史・大阪公立大教授はこれについて「加害者主導の賠償であり、被害実態に合わない賠償額の算定や打ち切りが今後も繰り返されることが強く懸念される」と指摘しました。
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業種別の統計用い風評賠償認定 処理水海洋放出で東電が中間報告
福島民報 2022/10/8
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出で風評被害が発生した場合の賠償について、東電は7日、賠償基準の検討状況を中間報告として発表した。東電が業種別の統計データを用いて対象地域と全国の価格動向などを比較し、風評被害の有無を確認する。事業者は損害の立証に必要なデータの提出が簡素化される。損害額の算定に用いる基準年は、放出前年を基本とする方針。識者は新基準の運用後も事業者らの意見を取り入れる仕組みが必要だと指摘する。
請求から支払いまでの流れは【図】の通り。東電は国や都道府県などが公表している統計データを踏まえ、対象地域と全国の海産物価格や農産物価格、観光客数などの変動状況を比較し、風評被害の有無を調べる。その上で放出前後の価格下落額や放出後の水揚げ量などを基に損害額を個別に算定する。
図解写真 ↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/b83cefad136210809718cc443b73133c05800165/images/000
漁業や農業、観光業などは対象地域と全国の統計データを比較する方法で風評被害の有無を確認するが、水産加工業は風評被害が確認された地域の海産物を主な原材料とする場合に風評被害があるとみなす。水産卸売業は、風評被害が確認された地域の海産物や加工品を継続的に取り扱っている場合を対象とする。
放出前年を基準年とすることに対し、事業者からは「新型コロナウイルスの影響を含まない年を基準とするべき」との声が出ており、東電はより実態に即した方法を検討するとしている。
東電は昨年8月に賠償の方向性を発表し、福島県内外の約160の団体と意見を交わしてきた。今後も継続し、年内をめどに賠償基準を公表する予定。
政府方針を巡っては、処理水への正しい理解が広がっていないとして風評発生への懸念や慎重な対応を求める声が根強い。損害を賠償で穴埋めする前に、風評を発生させないための対策を徹底するべきとの指摘もある。
原発事故による賠償制度の問題点を研究している除本理史大阪公立大大学院教授は中間報告を踏まえ「加害者主導の賠償であり、被害実態に合わない賠償額の算定や打ち切りが今後も繰り返されることが強く懸念される」と指摘。「賠償基準の運用開始後も、被害者の意見を取り入れていくべきだ」と語った。