原発の使用年限については 「原則40年、最長60年」となっていますが、経産省はこの年限を撤廃しようとしています。具体的には原子炉等規制法から運転期間を定めたルールを撤廃するということで、背景には最近米国が運転寿命を最長80年としたことがあります。
それに対して京都新聞は「原発の運転規制 乱暴な見直し許されぬ」とする社説を出し、あまりに乱暴でこれまでの経緯をないがしろにする政府や規制委の姿勢は認められず、特に原子炉=圧力容器は中性子に晒され続け脆くなっていくので、安全の目安をなくす動きは看過できないと述べました。
そしてこの政府の動きに対し、先月末に就任したばかりの規制委の山中伸介委員長が容認の姿勢を見せたことを、理解できないと批判しました。単に政府の方針に追随するのであれば規制委員会の設立の主旨に反します。
世界トップの地震国である日本が単に米国の真似をすることは認められないし、何よりも圧力容器の中性子劣化をどういう根拠でどう見極めるのかを明確にすることが大前提になります。
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社説:原発の運転規制 乱暴な見直し許されぬ
京都新聞 2022/10/7
「原則40年、最長60年」としている原発の運転期間規制を取り払ってしまおうというのは、あまりに乱暴ではないか。
原発を最大限活用する岸田文雄政権の意向を受け、経済産業省は関連する法を改正し、運転期間を定めたルールを原子炉等規制法から撤廃する方向を示した。
この方針について、説明を受けた原子力規制委員会は事実上容認する見通しを示した。
東日本大震災の東京電力福島第1原発事故の反省から導入した安全規制の根幹が政治的思惑で後退し、なし崩しに運転延長の道が開かれかねない。これまでの経緯をないがしろにする政府や規制委の姿勢は認められない。
政府は8月、将来的な電力の安定供給を理由に、次世代型原発の建設と併せ、原発の運転期間延長も検討すると表明した。従来の「可能な限り原発依存度を低減する」という方針から、参院選後に唐突に転じた「原発回帰」だ。
経産省は規制委の会合で、原発再稼働を巡る規制委の審査が長期化している点にも触れ、審査中の稼働停止は算入せず、運転期間を実質的に延ばす考えを示した。
運転期間の規定は福島事故翌年の2012年、原子炉等規制法の改正で導入された。原則40年で、規制委が認めれば1回に限り最長で20年延長できるとした。
原子炉の劣化は未知数な部分が多いが、原発の建屋や機器、配管などの経年劣化を懸念するのは当然だろう。特に圧力容器は中性子にさらされ続け、もろくなっていくとの指摘がある。安全の目安をなくす動きは看過できない。
さらに解せないのは、運転期間の上限を撤廃しようとする政府に対し、先月末に就任したばかりの規制委の山中伸介委員長が容認の姿勢を見せたことだ。
山中氏は「上限を定めるのは科学的、技術的には不可能だ」とした上で、規制委としては、運転期間にかかわらず、安全性が維持されているかどうかを原発ごとに確認する仕組みを整えるという。
延長については政策判断だと強調し、評価は避けた。原発推進の政府側と足並みをそろえたかのような印象だ。独立した立場で安全性を審査する規制委の対応として疑問を禁じ得ない。
運転期間の制限撤廃は「安全神話」復活につながる恐れがある。年内に経産省は結論を出し、規制委側も対応方針を検討するという。老朽原発に対する拙速なルール変更は国民が納得すまい。
「原発の運転期間」法改正検討の考え 西村経産相
日テレNEWS 2022/10/7
西村経済産業大臣は、原則40年と定められている「原発の運転期間」について、年末までに法律の改正などについて判断する考えを示しました。
原発の運転期間をめぐっては、11年前の福島第一原発事故を受けて原則40年までと法律で定められています。
原子力規制委員会の認可を得られた場合には最長60年までに延長することが可能となっています。
西村経産大臣は7日の会見で、運転期間の延長について、経産省内の審議会の意見を踏まえながら、必要な法律の改正などについて年末までに判断する考えを示しました。
これに先立ち経済産業省では、すでに運転期間のあり方や法律の見直しなどについて検討を進めています。
政府は「エネルギーの安定供給」や「脱炭素社会実現」のために今ある原発を最大限利用する必要があるとしている一方、背景には、残りの運転期間が短くなると、安全対策に向けた投資などが呼び込みにくくなるといった事情があります。
原子力規制委員会に対しても5日、この説明を行っていて、原子力規制委員会は規制側の観点から必要な法整備を含めた検討を進めるとしています。
11年前の福島第一原発事故の反省から定められた、「原則40年」の運転期間の制限に、大きな変更が行われる可能性があります。