管理上の相次ぐミス等で長らく停止中の「もんじゅ」について、現行計画に基づいて今後10年間運転する場合、国費約6000億円の追加支出が必要になることが分かりました。既に約1兆2000億円をつぎ込みながら稼働実績が何もなく、今後計画通りの成果が得られる見通しもほとんどないなかで非常に問題です。
もんじゅの再稼働には、高速増殖炉の新規制基準を規制委が作った上で、これに適合させる改修工事が必要になりますが、そもそも一旦事故が起きれば鎮火や爆発防止の手段が取れない装置に於いて、安全基準などが作れるものでしょうか。
もんじゅの燃料を製造する東海村の工場についても同様に新規制基準を設けて、それに対応させる必要があります。そうした費用に6000億円が掛かるというものですが、いったいそれが信頼できる数字なのかも不明です。
これまでも無意味な時間を浪費するだけで巨額の経費(年間200億円超)を費やしてきたのですから、恥の上塗りのようなことはもう止めて即刻廃炉にすべきです。廃炉には3000億円かかるということですが、それは日本の安全のために仕方のないことです。
政府の諮問委員会は「もんじゅ」を延命させるため苦し紛れに、「『もんじゅ』を使っての高濃度放射性物質の減容化・有害度低減の研究への展開」を提言したようですが、そのために必要な「要素技術」の実用化だけでもさらに数十年が掛かると言われています。そもそも「もんじゅ」タイプのものでは中性子のエネルギーが低いので、意味のある減容化にはつながらないとされています。
したがってそんな絵空事を並べ立てるのではなくて即刻廃炉にすべきです。
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もんじゅ 10年で6000億円 政府試算、廃炉含め検討
毎日新聞 2016年8月29日
管理上の相次ぐミスで停止中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、現行計画に基づいて今後10年間運転する場合、国費約6000億円の追加支出が必要になると政府が試算していることが28日、分かった。既に約1兆2000億円をつぎ込みながら稼働実績がほとんどなく、政府は菅義偉官房長官の下のチームで、廃炉も選択肢に含めて今後のあり方を慎重に検討している。【岡田英、阿部周一】
もんじゅを巡っては、原子力規制委員会が昨年11月、運営主体を日本原子力研究開発機構から他の組織に代えるよう所管の文部科学相に勧告。それができなければ廃炉も含めた抜本的な運営見直しをすることも求めた。文科省はもんじゅの運転・管理部門を同機構から切り離して新法人に移す方向で調整していた。
複数の政府関係者によると、もんじゅの再稼働には、福島第1原発事故を踏まえた高速増殖炉の新規制基準を規制委が作った上で、これに適合させる改修工事が必要になる。運転には核燃料198体を4カ月ごとに4分の1ずつ交換しなければならないが、もんじゅの燃料を製造する茨城県東海村の工場も新規制基準に対応しておらず、耐震補強などが必要だ。内閣官房を中心にした費用の検討では、こうした対策費に10年間の燃料製造費や電気代、人件費などを加えると追加支出額は約6000億円に達するという。停止中の現在も、維持費だけで年間約200億円がかかっている。
政府内には「(原型炉の次の段階の)実証炉を造れる金額。それだけの支出に見合う存続の意義を国民に説明するのは難しい」という厳しい意見など、廃炉論さえある。原子力機構は2012年、廃炉には約3000億円かかるとの試算をしており、再稼働するかどうかに関わらず今後も多額の国民負担が必至だ。
もんじゅは1985年に着工、95年8月に発電を開始したが、約3カ月後に冷却材のナトリウム漏れ事故で停止した。10年5月に再稼働したが3カ月半後に燃料交換装置の落下事故が起き、稼働・発電実績は1年に満たない。
文科省の担当者は「再稼働後の運営方法の想定次第でいろいろな試算があり、それぞれ精査中。金額についてはコメントできない」と話している。
もんじゅ
通常の原発の使用済み核燃料から取り出したプルトニウムとウランを燃料とし、使った以上のプルトニウムを生み出す「高速増殖炉」の実用化に向け試験を行う原型炉で、国の核燃料サイクル政策の中核。冷却に使うナトリウムは空気や水に触れると発火する恐れがあるため扱いが難しく、1995年には漏えい事故が発生。2012年には約1万件の機器点検漏れが発覚し、規制委から運転禁止命令を受けた。