2016年8月15日月曜日

15- 泊原発 知事試案の夏

泊再稼働 知事思案の夏 長引く規制委審査
北海道新聞 2016年8月14日
 高橋はるみ知事が、4期目の最重要課題である北海道電力泊原発(後志管内泊村)の再稼働問題に神経をとがらせている。泊原発は、12日に再稼働した四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)と対照的に原子力規制委員会の審査が長引いており、知事自身も地元同意の範囲設定を含め自ら動く気配はない。ただ、原発の一時停止を訴える鹿児島県知事の誕生など、世論の微妙な変化は気にかかっているようだ。
 
 「泊は原子力規制委の審査中なので、予断を持って何かを申し上げる段階にない。(再稼働の)地元同意の範囲は、国の責任でその後のプロセスも含めて明確に示してほしい」。知事は9日の記者会見でも、従来の見解を述べた。
 知事は、再稼働について表向き、国の動向を見極め、道議会や周辺自治体の意見を聞く方針を繰り返すのみだ。しかし、今年7月の鹿児島県知事選で、九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の一時停止を訴えた三反園訓氏が初当選した直後には、4選に失敗した前職の敗因を調べるよう庁内に指示している。記者会見で「(自らの再稼働の判断に)影響はない」と平静を装ったのとは裏腹だ。
 
 地元同意の範囲については、泊原発がある泊村など立地4町村だけでなく、さらに広範囲に広げるよう求める声がある。北海道新聞社の今春のアンケートでは、小樽市など後志管内の10市町村の首長が広げるのが適切と答え、札幌市も議論に加わりたい意向を示す。
 その「地元」の範囲をめぐっては最近、ちょっとした駆け引きがあった。札幌市の秋元克広市長が今年に入り、後志管内で行う泊原発の安全対策に関する地域説明会を札幌市内でも開催するよう北電に要請。北電は当初断っていたが、7月に高橋知事も札幌で開くべきだと同調したことで、一転開催を検討する方針となった経緯に関してだ。
 
 札幌市を後押しした形の知事の発言について、道幹部は「あれは北電への助け舟だ」と別の見方を示す。
 札幌市の要請は「(泊原発から約40~80キロにある)札幌の市民にも原発のリスクなどを説明するべきだ」との立場だが、知事の説明は「道民全体の関心事を広く説明するには道庁所在地がふさわしい」との論理。つまり「原発事故の影響を受ける可能性がある札幌だから」との理屈を巧妙に逃れたようにも映る。知事としても、札幌を原発の「地元」に入れるかの議論に発展するのはなるべく避けたいと考えている様子がうかがえるというわけだ。
 
 道議会最大会派の自民党・道民会議は昨年4月の改選後、再稼働の議会議論が大きな焦点になるとみて、再稼働に積極的な議員を会派幹部など要職に置く「再稼働シフト」を敷いた。この当時は今年9月開会の定例道議会が議論のヤマ場になるとの見方があったが、審査の遅れで越年は必至。来年6月は会派幹部らが交代する時期に当たる。
 
 伊方3号機の経過を当てはめると、泊の再稼働判断は来年夏と予想される。道幹部は知事の今の心境について、「国や道議会が敷いたレールの上を歩けば批判されることはないと思っている」と語るが、世論動向や道議会の議論がどう展開していくかはまだ読めない。(報道センター 五十嵐知彦)