節電定着で供給に余裕 「原発必要」の説得力薄れる
東京新聞 2016年8月18日
全国で猛暑日が相次いだ八月上旬、電力各社が供給力に余裕をもって乗り切ったことが、本紙の調べで分かった。今年は二〇一一年三月の東日本大震災後、初めて政府が節電を求めない夏になったが、各社が準備した発電所の供給力のうち、実際に使用した割合(使用率)が97%を超えて、余力が「非常に厳しい」とされるような日はゼロだった。
電力各社は「電力の安定供給のために原発は必要」と説明しているが、原発がなくても停電は起きない計算だった。節電が進み定着する中で、各社の説得力は薄れている。
八月上旬は例年、盆休みを控え工場生産が盛んになるうえ冷房の使用が増えるため、電力消費が一年で最も増えることが多い。昨年の最大需要日は八月三~七日に集中した。
今年も昨年に続き全国的に猛暑日が多く九日には全国九百二十九の観測地点のうち東京都心で三七・七度を記録するなど、百九十八カ所で最高気温が三五度以上の猛暑日となった。猛暑日が百カ所を超えたのは十四日までに八日間あった。
本紙が一日から十四日までの大手電力九社の管内の使用率を調べたところ、東京電力ホールディングスで最大になったのは五日の89%で90%に達した日はなかった。中部電は五日の94%が最大だが、事前の需要予想で一部の火力発電所を休ませていたため、使用率が伸びた。
九州電は十日に千五百二十七万キロワットを記録したが、供給力に10%(百八十五万キロワット)の余裕があった。稼働する川内(せんだい)原発1、2号機(計百七十八万キロワット)がなくても停電は回避できた計算だ。十二日に伊方原発3号機(八十九万キロワット)を再稼働した四国電は、九日の五百十六万キロワットが最大。原発なしでも使用率は94%だった。
生産活動が再開する八月下旬や九月上旬に電力需要が伸びる可能性はあるが、節電は定着しており、電力の需要は震災前より14%ほど減る見通しだ。全国で猛暑日が百一カ所を数えた十七日も、電力九社管内で余力があった。