原子力規制委が東海村の原電東海第二原発の現地調査を実施した結果、原子炉建屋などで使われている電気ケーブルの防火対策について、原電との間で考え方にずれがあることが明らかになりました。
規制委は非難燃性ケーブルについては「難燃性に取り換えられるところは取り換える」という当初の方針を強調し、取り換えられないケーブルのみ防火シートを巻く考え方を示しました。
これに対し、原電は、あくまでも防火シートを巻いて対応する方針を示し、更田委員と対立しました。
勿論難燃性ケーブルの方が防火性は優れ、防火シート巻きは間に合わせの方法に過ぎませんが、電力側はコストがかからないために防火シート巻きという代替法にこだわっているものです。
通常は条例や規則などの解釈が分かれるときには、所轄の官庁の見解が最優先され事実上ツルの一声で決まるものなのですが、電力会社の場合はそうではないようです。柏崎刈羽原発では実際に地震時に変電所で火事が起きました。もしもケーブルが焼けてしまえば装置は勿論動かなくなるので安全上譲れない問題の筈です。
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東海第二原発の現地調査 ケーブルの防火対策にズレ
東京新聞 2016年8月25日
原子力規制委員会が東海村の日本原子力発電(原電)東海第二原発の現地調査を実施した。2014年5月に原電が、再稼働に向け原発の新規制基準の適合審査を申請後、規制委が現地入りしたのは初めて。現在、審査を進めている沸騰水型炉(BWR)では、東海第二原発が最後の現地調査となる。 (山下葉月)
現地調査では、東海第二原発の原子炉建屋などで使われている電気ケーブルの防火対策について、規制委と原電との間で考え方のずれが明らかになった。
規制委の更田豊志委員長代理は、非難燃性ケーブルについて「取り換えられるところは取り換える」という当初の方針を強調、取り換えられないケーブルのみ、防火シートを巻く考え方を示した。これに対し、原電は、あくまでも防火シートを巻いて対応する方針。更田氏は「そこは違うだろうとなる」と原電側のスタンスに疑問を呈した。
原電によると、原発内の非難燃性ケーブルは総延長千四百キロ(ケーブルトレー換算で一八・五キロ)ある。原電の和智信隆常務は「防火シートで対応し、取り換えるところは取り換える」とするものの「何百本も引き直すとリスクもある。極端に言えば引き間違いも起こり得る」と述べ、防火シートによる対策の妥当性を訴えた。
このほか更田氏は、原電が建設を計画している最高で海抜二十メートルの防潮堤を津波が越えた場合の対策について、引き続き原電側から聞き取る考えをみせた。
更田氏は「審査は中盤に差し掛かっている」と原電側に説明した。今後の審査会合では、ケーブルの防火対策を中心に規制委と原電のやりとりが進みそうだ。認識の溝が埋まらなければ議論は難航する可能性がある。
◆更田・規制委員長代理 基本は「難燃性」への取り換え
-重点的に視察した箇所と見た感想は。
私としては初の調査で全体的に議論になりそうなポイントを見た。一番関心があった海岸線からプラントまでの距離、地形が見たかった。比較的年数がたっているプラントなので、火災防護が論点になり(電気ケーブルに巻く)防火シートなどを見た。工事がされていないベントの設備などはこれから見ていく。審査の一環で少なくとも一度は見にくると思う。
-電気ケーブルの防火対策について。
分かりやすく言うと「(難燃性)ケーブルに取り換えられるところは取り換える。できないところに関してはシートで巻く」。そのような説明であれば、われわれも審査の中で経験のある説明だから議論の余地が出てくる。一方で、原電が防火シートでケーブルを巻くことを基本とし、問題の生じるところについて、ケーブルを取り換えるというスタンスだと「そこは違うだろう」となる。私たちは基本として「ケーブルを取り換えられるところは取り換える」ことを、非難燃性ケーブルを使うプラントに対して求めている。これを今後、原電との議論で共通理解が得られたら、と思う。
-原電の津波対策は。
平たんで海岸に近いサイトなので、津波に対しては災いする。防潮堤では限界があり、なお越えてくる津波の対策が審査会合のポイントになっている。まず常設設備で津波に、どう対応するのか、答えを審査会合で聞いていく。その上で、いったん津波がひいた時、敷地内で可搬型設備が動けるのかも審査する。
-今後の審査の見通しは。
プラント関係では、先行する四つのBWRと大きな差はなくなってきた。地震、津波対策では比較的、議論が進んでいる。あるところで私たちが判断しないといけない。
◆和智・原電常務 防火シートで対応
-電気ケーブルの防火対策で規制委の考えとずれがある。
『そのやり方でどのようにできるか』について現実的に見てもらった。ケーブルの制約条件を見てもらった上で、私たちの考え方を説明していきたい。
-スタンスは変えないのか。
防火シートで対応していく。そして取り換えるところは取り換える。場所、場所に合った適切なやり方でやる。
-ケーブル交換と防火シートの比重は。
量や考え方の問題もあるが、審査会合で説明していく。
-ケーブルを交換する上で制約とは。
ケーブルの引き方や長さ。現在きちんとつないであるケーブルを何百本も引き直すとリスクもある。極端に言えば、引き間違いも起こり得るということだ。
-軌道修正すべき課題はあったか。
もともと想定していた。想定のない質問はなかった。
◆「厳しくチェック」「円滑な審査期待」県内の住民ら
原子力規制委の更田委員長代理らによる東海第二原発視察を受け、県内の住民らからは厳しいチェックを求める声や、今後の円滑な審査に期待する声が上がった。
「脱原発ネットワーク茨城」共同代表の小川仙月さんは「原発は閉じられた実験室ではなく、地域社会に立地している」と強調。規制委に対し「住民を危険にさらす可能性のある事項は厳しい審査が欠かせない。事故で過酷な状況になることを前提にしてほしい」と注文を付けた。
一方、原発推進の立場を取る東海村議の一人は「審査がスムーズに進むのなら、視察は歓迎したい」と話した。 (越田普之)