2013年8月14日水曜日

菅元首相、原発事故で地検聴取に応じず

 福島原発事故の対応を巡り国民から刑事告発を受けた菅元首相が、12日、東京地検の事情聴取を拒否しました。
 「政府首脳としての災害対応で捜査機関の聴取に応じる前例を作れば、今後の危機対応に悪影響を及ぼす恐れがある」というのが理由です。一般論としては一理ありますが、具体例に照らしてみて果たしてそう言い切れるでしょうか。

 東電の事故対応に対する官邸からの有害・無用な干渉もありました。
 元首相の意味不明なヘリコプターによる現場視察によって、原子炉のベント(排気)が待たされた結果、一連の水素爆発を誘引したと言われています。(菅氏は現場がベントを準備していることを承知のうえで視察を行いました。読売記事参照)
 SPEEDI隠しによって、浪江町民などが放射能プルームが流れた北西方向に退避した結果、無用な被曝をさせられました。
 事故後、気象庁は福島原発周りの風向きを公表しなくなり、気象学会「風向きを言うな」と学会員に通達しました。
 メディアの出張所はすべて福島市から県外に退避させながらも、NHKを先頭にして「原発事故は大したことはない」、「放射能は心配ない」の大合唱が行われました。

 これらのことについて官邸に、特にそのトップの菅氏に責任はなかったのでしょうか。「直ちには健康に影響はない」を連呼して国民を被曝させた枝野元官房長官にも。

 SPEEDIの存在自体を知らなかったというのが官邸側の主張ですが、事故の半年前の防災の日に行われた原発事故を想定した防災訓練(机上)では、SPEEDIによる放射能拡散予想図が用いられたということです。であればそれに参加した菅氏(+枝野氏)は承知していた筈です。

 13日の読売新聞記事と併せて、SPEEDI情報の隠蔽に関する2011の読売新聞記事及び同年の風向き情報の公表禁止に関する武田邦彦教授のブログを紹介します。
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菅元首相、原発事故で地検聴取応じず…告発否認
読売新聞 2013年8月13日
 東京電力福島第一原発事故の対応を巡り、業務上過失致傷などの容疑で刑事告発されている事故当時の首相で民主党の菅直人・衆院議員(66)に対し、東京地検が12日に任意の事情聴取を要請したことが関係者への取材でわかった。
 菅氏側は聴取に応じず、週内にも「事故対応に問題はなかった」などと告発容疑を否認する意見書を提出する意向を伝えた。
 関係者によると、聴取に応じない理由は、政府首脳としての災害対応で捜査機関の聴取に応じる前例を作れば、今後の危機対応に悪影響を及ぼす恐れがあるためだという。
 地検は、同様の容疑で告発されている元経済産業相の海江田万里・民主党代表(64)と元官房長官の枝野幸男・衆院議員(49)にも同日までに聴取を要請した。2人も容疑を否認するとみられる。
 同事故では、原子炉建屋で水素爆発が起こり、建屋周辺で作業にあたっていた東電社員や自衛隊員ら10人以上が重軽傷を負ったほか、周辺住民も被曝した。告発では、2011年3月11日の東日本大震災直後から、事故対応の指揮を執った菅氏ら3人が対応を誤ったことが事故を招いたと指摘。特に、菅氏が事故翌日に同原発を視察したことが、放射性物質を含む蒸気を放出する「ベント」の作業の遅れにつながった疑いがあるとしている。検察当局は、当時の官邸内部の状況や3人の認識について確認するため、聴取を要請した。
 菅氏は自著で、視察前に東電がベントを行うことを了承しており、視察の際もベントを急ぐよう指示したと主張している。意見書でも同様の説明をするとみられる。

日本で公表されない気象庁の放射性物質拡散予測
読売新聞2011年4月4日
 東京電力福島第一原子力発電所の事故で、気象庁が同原発から出た放射性物質の拡散予測を連日行っているにもかかわらず、政府が公開していないことが4日、明らかになった。

 ドイツやノルウェーなど欧州の一部の国の気象機関は日本の気象庁などの観測データに基づいて独自に予測し、放射性物質が拡散する様子を連日、天気予報サイトで公開している。日本政府が公開しないことについて内外の専門家からは批判が上がっており、政府の原発事故に関する情報開示の在り方が改めて問われている。
 気象庁の予測は、国際原子力機関(IAEA)の要請に基づくもの。国境を越える放射性物質汚染が心配されるときに、各国の気象機関が協力して拡散予測を行う。

 同庁では、東日本大震災当日の3月11日から毎日1~2回、拡散予測を計算している。具体的には、IAEAから送られてきた放射性物質の放出開始時間や継続期間、どれくらいの高さまで上ったかを、風向きや天候など同庁の観測データを加えた上で、スーパーコンピューターに入力し、放射性物質の飛ぶ方向や広がりを予測している。

次の原発事故までに「気象庁」を廃止すれば被曝は減る
武田邦彦 2011年07月29日
(激しくやります。腹が立って!!)
原発事故が起こった3月12日の夕刻のことだった。私は、政府やNHK、それに東大教授が「遠くに逃げろ!」と言ったのにビックリした。
原発から「放射線」がでるのではない。「放射能物質の灰」が火山の噴火と同じように風にたなびいて移動する。だから、「遠く」ではなく、「風をみて」ということだ。
政府は直ちに気象庁に風向き予想を求め、それをNHKが発表し、それを東大教授が解説しなければならない。
ところが、気象庁は福島原発付近の風向きを出さなかった。
奇妙なことにNHKは事故から2週間ぐらいたって、「地震で風向風速計が壊れていたが、昨日から使えるようになった」として風向きの報道を始めたが、実は気象庁は風向きの予想をIAEA(国際原子力機関)には報告をしていたのだ!!!
              (中 略)
原発事故が起こったとき、政府は「健康に影響がない」と言った。ということは「たいしたことはない」ということだ。それなら気象庁の、テレビ局の気象予報も福島原発からの風を報じれば良いのに、凍り付いたように報道しなかった。
そして、気象学会は学術団体なのに、こともあろうに「福島の気象を発表するな」と憲法に定めた学問の自由に反する規制をした。
今でも、気象庁や気象学会は存在するのだろうか? 2つとも犯罪団体だから、職員や学会員や嫌気がさして止めているだろう。
原発を動かすと事故が起こる可能性が高い。だから、それまでに新しい気象庁を作っておかなければならない。
誇り高き日本人は、自国の事故にドイツの気象庁からデータを貰いたくないからだ。