国は放射能汚染地での住民の被曝量を推定するに当たり、屋内における被曝量は屋外の4割であるという前提で、「屋外に1日8時間、屋内に1日16時間いる」と仮定して行っています。
この計算方法では全時間屋外にいる場合の丁度6割の被曝量となります。
この屋内での線量が屋外での線量の4割に減じるという考え方はIAEAが目安として示した値であり、日本原子力研究開発機構も報告書で同じことを述べているということです。
しかし一定時間そこに居住すれば、放射性物質がミスト状やダスト状の形で屋内に侵入してくるので、いずれ屋内外の差がなくなるからその考え方はおかしいということは早くから指摘されていました。
東京新聞が、避難地域3地区の一時帰宅の家屋で放射線量を実測したところ、大半の家で屋外と屋内とで放射線量に差がないことが分かりました。しかも調査対象の家屋は避難地域にあるものなので、玄関も窓もすべて長期間完全に閉鎖されていたものでした。
これはIAEAなどの考え方を覆す非常に貴重な調査であるということができます。
これはIAEAなどの考え方を覆す非常に貴重な調査であるということができます。
ところがその結果を規制委事務局に伝えたところ、「線量の測り方によっても結果は違ってくるので、考え方を見直すつもりはない」というのが回答であったということです。
科学の世界では、仮説が事実(や実験等)によって否定されれば、その仮説は「棄却される」というのが常道です。それを、棄却された仮説にその後もしがみつくというのであれば、もはや理性の世界の話ではなくなります。
本来「仮説」は、まだ証明はされていないが理論的に否定されないというレベルのものであって、家屋によって放射線量が4割に落ちるというのは、仮説にも値しない単なる「憶測」です。せいぜいIAEAや原子力開発機構などの原発推進派が、自分たちに都合よく唱えた「推定(憶測)」に過ぎません。
規制委事務局が仮に「線量の測り方」に問題があると思うのであれば、自分たちで測りなおせば済む話です。この問題が役人のそうした「妄言」で決着するようなものでないことは明らかです。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
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福島の3市町村 家の中の線量 外と変わらず
東京新聞 2013年8月19日
東京電力福島第一原発事故で避難している住民が帰還する際に前提となる放射線量が、除染後も国の想定ほど下がらないケースが多いことが、本紙が福島県内で実施した実測調査で分かった。国は家屋が外の放射線を六割遮ることを前提にしているが、家の中でもほとんど減らないためだ。
国は、住民の一日の生活パターンを屋外に八時間、屋内に十六時間と想定。家の中は壁などが放射線を遮ることで、屋外の四割しか線量がないことを前提にしている。
原子力規制委員会によると、屋内の線量が屋外の四割にとどまるとの考え方は、国際原子力機関(IAEA)が目安として示した値をそのまま引用したものだという。
しかし本紙が今月上旬、田村市や川内村、楢葉(ならは)町で、住宅の除染が終わって一時帰宅していた住民の協力を得て実測した結果、庭先や玄関先の線量と、居間や寝室などの線量はほとんど変わらないケースが大半だった。
窓越しに水田や裏山がある部屋では、玄関先より線量が高いケースも散見された。
特に農家では、玄関や縁側を開けっ放しにして生活しているケースが多い。屋外からの放射線なのか、屋内に再び入り込んだ放射性物質からの放射線なのかは明確ではないが、少なくとも国が想定するような状況とはかなり異なっていた。
川内村の農家宅で、昨年四月に帰宅してから十六カ月間、屋内に置きっぱなしになっていた積算線量計は二・四七ミリシーベルト(一年間に単純換算すると一・八五ミリシーベルト)と、一般人の上限値の年一ミリシーベルトの二倍近い値を示していた。
国は上限値の一ミリシーベルトを下回るには、除染などにより放射線量を毎時〇・二三マイクロシーベルト(一マイクロシーベルトは一ミリシーベルトの千分の一)に下げることが必要としており、これを帰還の目安としている。
福島の放射線量をモニタリングしている規制委事務局に、こうした事実を伝えたが、屋内の線量は屋外の四割だとする日本原子力研究開発機構の報告書を基に「線量の測り方によっても結果は違ってくる」と説明。住民の年間被ばく量を一ミリシーベルトに抑えるための考え方を見直すつもりはないと答えた。