米テキサス大学の研究プロジェクトが国防総省の要請に基づいて行った調査で、米国の原子力発電所は、核兵器への転用が可能な核物質の盗難や原子炉のメルトダウンを狙った攻撃などの脅威から、十分に守られていないとの結論を出しました。
米原子力規制委員会(NRC)は各原発に対し、5、6人による攻撃に対する防御しか義務づけておらず、高性能狙撃銃やロケット弾への対策は対象外になっているということです。
報告書は米政府に対し、原発施設に想定できる最大級の攻撃に対する防御を義務づけるとともに、民間企業によらない警備を追加するよう提言しています。
米国がこうした問題意識をもって調査を進めていることはさすがです。そしてこれまである程度原発へのテロ攻撃を想定していた米国でさえもこういう状況ですから、全くテロ攻撃を想定しないで建設されている日本の原発が、安全である筈はありません。 福島原発の例が示すように、万一発生した場合の被害の深刻さを思えば、とても「想定外」で済まされる問題ではありません。
以下にロイター通信の記事を紹介します。
日本で原発の再稼動を進めている勢力は、テロ側からみれば原発は各地に置かれた核燃料倉庫にほかならない、ということを認識しているのでしょうか。
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米国の原発、同時多発攻撃には無防備=テキサス大報告書
ロイター通信 2013年8月16日
[ワシントン 15日 ロイター]米テキサス大学オースティン校の研究プロジェクトは15日付の報告書で、米国の原子力発電所は核兵器への転用が可能な核物質の盗難や原子炉のメルトダウンを狙った攻撃などの脅威から十分に守られていないとの見解を示した。
報告書は国防総省の要請に基づきまとめられたもので、米国にある商業用原子炉104基、研究用原子炉3基のいずれも、2001年9月11日の同時多発攻撃のような多数の人間が関わる攻撃に対しては無防備だと指摘した。
報告書によると、米原子力規制委員会(NRC)は各原発に対し、5、6人による攻撃に対する防御しか義務づけていない。また、高性能狙撃銃やロケット弾への対策は義務づけていない。
米国にある研究炉3基は、盗まれれば核兵器製造に転用される可能性がある高濃縮ウランを燃料としている。うち1基は、ホワイトハウスから39キロメートル離れたメリーランド州ゲイサーズバーグにある。
報告書をまとめたプロジェクトのコーディネーター、アラン・クーパーマン氏によると、電力会社は、発電所の安全確保のため大幅な電力料金の値上げなしにできることはすべて行っているとの立場で、攻撃に対する防御は米政府の責務だと主張している。
同時多発攻撃が起きた当時、政府は3人による攻撃への防御しか原発に義務づけていなかった。クーパーマン氏は、防御体制はその当時からはある程度進展したと指摘。国防総省とエネルギー省は最近、核兵器の保護と核兵器に転用される可能性のある核分裂性物質の保護に向けた共通のアプローチを取っているとした上で、「これは前進の兆候だが、われわれが原子炉について抱いている懸念を解消しない」と述べた。
報告書は、攻撃対象は原子炉だけでなく、使用済み核燃料プールも標的となる可能性があり、ここが攻撃されればメルトダウンや危険な放射性物質の拡散を引き起こしかねないと指摘。海からの攻撃も考えらえるとした。
報告書は米政府に対し、公営・民営すべての原発施設に想定できる最大級の攻撃に対する防御を義務づけるとともに、民間企業によらない警備を追加するよう提言している。
NRCは報告書について「(同時多発攻撃を受けてNRCと政府が原発の安全保障を見直していた)10年前の議論の焼き直し」と批判。NRCのスポークスマン、デービッド・マッキンタイア氏は、NRCは商業用原発に義務づける安全保障要件を強化しており、これらの原発については十分に守られていると確信している、と述べた。