日刊ゲンダイの「慶大教授 金子勝の天下の逆襲」のコーナーに、「やっぱり原発の発電単価は高かった」という記事が載りました。
金子教授は経済学が専門で、TVその他でも活躍されています。今回の記事は同教授が最近上梓された「原発は火力より高い」の一部を紹介したものです。
それによると、全国に50基ある個々の原発について、「コスト等検証委員会」が提出した試算方式を使って40年廃炉を前提にして発電コストを試算した結果、1キロワット当たり8~12円で、火力発電(石炭火力9・4円、LNG火力10・7円、2011年ベース)と同程度でした。
ところが「原発ゼロの会」が発表した即時廃炉にすべき28原発の廃炉コストを残りの原発の発電コストに上乗せすると、日本原電の東海第2原発では1キロワットあたり13・1円が21・0円に跳ね上がり、東京電力の場合も、福島原発の廃炉コストを上乗せしさらに4兆円の賠償費用を加えると、柏崎刈羽原発の発電単価は13~15円に上昇し、これに除染費用を加えると20円前後になるという結果になりました。
以下に日刊ゲンダイの記事を紹介します。
(追記 そもそも原子炉鋼板の中性子による劣化を検証するテストピースは、建設当初耐用年数30年を想定した数量で炉内に設置されているということです。政府等が最近主張している耐用年数40年はそれを大いに上回るもので非常に危険です。)
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やっぱり原発の発電単価は高かった
慶大教授 金子勝の天下の逆襲
日刊ゲンダイ2013年8月6日
福島原発事故は汚染水の海への流出が止まらず収拾がつかなくなっている。事態を放置すれば、いずれ国際問題になるだろう。もはや東京電力は当事者能力を失っている。
8月2日、筆者は「原発は火力より高い」(岩波ブックレット)を上梓した。その中で、もはや東京電力も日本原電も財務的に破綻しており、根本的な処理の必要性を明らかにした。
もうひとつは、個別原発の発電コストを試算したことだ。計算方法は「コスト等検証委員会」が提出した試算方式を使った。
つまり政府のシミュレーション方式を使って、50基ある原発をひとつずつ個別に発電単価を計算したのである。
40年廃炉を前提にして、この先、稼働できる残存期間をとり、まず原発施設と核燃料の残存簿価、廃炉引当金の不足額、安全投資額を加えて発電単価を計算した。当然、老朽原発ほど単価は高くなる。老朽原発を除いても、原発の発電単価は1キロワットあたり8~12円で、火力発電と同程度だった。
ちなみに「コスト等検証委員会」が2011年12月に提出した資料によると、石炭火力の発電単価は9・4円、LNG火力は10・7円である。
しかし、「原発ゼロの会」が発表した即時廃炉にすべき28原発の廃炉コストを残りの原発の発電コストに上乗せすると、たちまち発電単価は火力発電を大きく上回ってしまう。
一番ひどいのは、日本原電の東海第2原発で、敦賀原発の廃炉コストを乗せると、1キロワットあたり13・1円から、21・0円に跳ね上がってしまう。発電単価は火力の2倍になるのだ。
東京電力の場合も、福島原発の廃炉コストを上乗せし、さらに4兆円の賠償費用を加えると、柏崎刈羽原発の発電単価は13~15円に上昇してしまう。除染費用※を加えると、20円前後になる。
※ 原文は「賠償・除染費用」 賠償が重複しているので事務局でミスプリントと判断して変更
東京電力が福島原発の廃炉を決定できない理由がはっきり分かる。
他の電力会社の原発の発電コストも、似たようなものだ。だから28ある危険な原発を廃炉できず、無理にも再稼働しようとするのだ。
原発の発電コストが安いというのは、まったくの嘘である。それどころか、原発は不良債権なのだ。不良債権処理を急がないと、失われた30年がやってくる。