2013年8月4日日曜日

新潟県知事を攻撃する官僚の手口

 元経産官僚の古賀茂明氏が『週刊現代』に発表した手記「新潟県知事を攻撃する官僚の手口」が、インターネットに転載されました。

 東電の柏崎刈羽原発の再稼動申請を了承しない泉田知事に困った原発再稼動推進の官僚が、知事を貶めようとする世論誘導(=マスメディア操作)を行っているという内容です。
 幸いにしてまだそれほど派手には行われていないように思われますが、この先のことは予断を許しません。文中にも出てきますが、少なくとも規制委の田中委員長の泉田知事に対する敵愾心というべきものは感じられます。

 官僚が原発推進派である理由は官界と財界が基本的に一体であるということに尽きます。具体的に言えば、いわゆる“原子力村”と呼ばれている電力会社、重電メーカー、大手建設会社などはすべて格好の天下り先であるからです。
 そしてマスメディアが官僚に対してどんなに弱いかは、検察のいわゆるリークに躍らされて一斉に世論操作に走ってきた彼らの姿を見れば一目瞭然です。

 古賀氏のレポートは、何故泉田知事がフィルターベントの基本設計に多大なこだわりを持っているのかについても、非常に分かりやすく説明しています。
 はじめにそれに関する補足的な資料を二つほど紹介します。

A..別のレポートでの古賀茂明氏の記述
 ・・・・7月10日の記者会見で、このフィルターベントの問題ついて、「新潟県の知事が、柏崎刈羽での東電のフィルター付きベント設置計画について、建屋と一体化していないとして問題視している。この点に関しての委員長の受け止めは?」と記者から質問された田中委員長が、質問にまともに取り合わず、記者に対して、「特に泉田さんが何を言っているかは、私はノーコメントですね」「泉田さんに聞いて下さい。どう作ったら、デザインしたらいいのかを。それはデザイン要求であって、壊れるかどうか、耐震設計上、どう取るかとかということは設置要件としては、我々としては持っているつもり。随分と親しいようですから、どうぞお聞き下さい」と発言したのだ。・・・・

B. 泉田知事の記者会見(2013年7月11日)
Q (前略)知事のように早期の再稼働に慎重な姿勢を示している首長を警戒していて、ある意味地元軽視という考えもできると思いますが、地元同意についてどのようなプロセスが必要とお考えですか。
A 知 事
 何を懸念しているのかということです。新潟県中越沖地震のときの柏崎刈羽原発の棟内ですが、最大で1.5mくらい沈下したのです。道路も波打ちました。(中略)なぜ(変圧器の)火災が起きたのかというと、配管が不等沈下したので、ずれてしまったために火が付いたということです。(中略)このときに何をやったのかというと、トランスと建屋を一体化する工事を行ったのです。その工事によって(配管が)外れないようにしますというのが当時の東京電力からの説明です。一方、今回のフィルターベントは、一体化せずに別々で作るのです。そのため事前了解を取ってほしいと言っているのです。当然地元軽視かどうかという話はあると思いますが、実態問題として配管が外れたら直接放射性物質が出てくる)(後略
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官々愕々 新潟県知事を攻撃する官僚の手口
古賀茂明 「日本再生に挑む」
『週刊現代』2013年7月27日・8月3日号より
 7月5日、東京電力の廣瀬直己社長と泉田裕彦新潟県知事の間で行われた柏崎刈羽原子力発電所再稼働申請に関する会談が決裂に終わった。
 東電と地元自治体との安全協定では、原発関連施設を新増設しようとするときは、事前に地元の了解を取ることになっている。今回東電は、この事前了解がないまま、フィルターベント(事故で生じた蒸気やガスから放射性物質を除去して排気する装置)の設置計画を含む柏崎刈羽原発の再稼働申請を行うと発表した。明らかに協定違反だ。マスコミは、泉田知事が、この手続き違反を利用して東電を批判し、再稼働を止めようとしていると報道した。

 しかし、これは表面的な報道だ。本当はもっと根深い問題があるのだが、それが報道されない。その裏には、原発推進官僚による世論誘導がある。物事の本質から目をそらさせ、あくまでも単なる手続きの問題に過ぎないと国民に思わせたいのだ。

 そして、その誘導戦略の一環として、「変人泉田」作戦が展開されているのをご存知だろうか。経産省や規制庁の役人が「泉田知事は昔から変人で有名だった」という悪口を流布しているのだ。私はこれを多くの記者から聞いた。私は、経産省時代に泉田知事と一緒に仕事をしたからわかるが、これはとんでもないデマだ。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長も、経産省から出向している規制庁の職員に洗脳されたのだろう。7月3日の記者会見で、「他の自治体の首長が納得しているなか、泉田氏はかなり個性的な発言をしている」という趣旨の侮辱的発言をしている

 今回も、洗脳された記者たちは、泉田という変人が、手続き論で揚げ足を取って、原発再稼働を止めようとしているという理解で記事を書いているようだ。

 その一方で、泉田知事が指摘している安全基準の重大な欠陥についてはほとんど報道されていない。例えば、泉田知事はこんな重大な指摘をしている。

 中越沖地震の際、柏崎刈羽原発で変圧器の火災事故が起きた。その原因が、原子炉建屋と変圧器がある建物が離れた地盤上にあって建屋と変圧器の間で多大な不等沈下を生じ、地震でその間をつなぐケーブルが大きく揺れたことにより、変圧器が引っ張られて傾き変圧器の封入油が外部に漏れ出し、それによって内部の金属同士が接触して発火したということを新潟県が突き止めた。そこから得られた教訓は、フィルターベントを作るなら、原子炉建屋と同一の地盤上に置かなければならないということだ。
 (カッコ内の青字は事務局が追記
 
 そうしないと大震災で炉心損傷が起きた時に、原子炉建屋からフィルターベントに通じる長い配管が地震の揺れで破断して、高濃度の放射能が生のまま排出されるリスクが高くなる。それなのに東電は、離れたところにフィルターベントを建設する予定だ。今の安全基準では、こういうことは禁じられていない。何故なら、これを禁じたら、多くの原発が再稼働できなくなる恐れがあるからだ。

 この一事をもってしても、泉田知事が、東電や規制委を批判するのは当然のことだ。実際には、これ以外にも新潟県からは、重要な指摘が数十項目なされている。田中委員長は、3月13日の会見で、これに対する回答の義務はないという驚くべき発言をしている

 規制委は、回答できないような重大な指摘をされてしまったので、内容の議論を避け、泉田知事への個人攻撃で「変な人」が「変なこと」を言っているという形で処理しようとしているのではないか。マスコミは、泉田知事が指摘している問題点を具体的かつ詳細に報道すべきだ。そうすれば、どちらが正しいかが明らかになるだろう。