復興庁は、「子ども・被災者生活支援法」に基づいて策定する基本方針をまとめ、福島県内の33市町村を「支援対象地域」に指定しました。そのほかに「準支援対象地域」を設ける予定だということです。
市町村を指定した際の基準線量がいくつであるのかはまだ分かりませんが、もしもこれまで許容基準とされてきた年間1mSvから逸脱したものであれば、「子ども・被災者生活支援法」の趣旨からも逸脱することになります。
本来、被曝線量によって基準を定める筈のものが、なぜこのような決め方をしたのか釈然としません。「年間1ミリシーベルト以上」の地域設定を求めていた市民団体などの要望とはかけ離れた内容です。
基準線量のほかにも、被災者・避難者に対して具体的にどのような支援が行われるのか気になるところです。
政府は、秋の臨時国会までに基本方針を閣議決定するというので、その過程でいずれ基本方針の詳細が明らかになります。
極めて長期間の検討を経て復興庁が決めた基本方針なので、被災者に十分に寄り添ったものなのか注目されます。
+毎日新聞の記事を追加
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被災者支援法 基本方針案まとまる
NHK NEWS WEB 2013年8月29日
復興庁は、原発事故の被災者支援を定めた「子ども・被災者生活支援法」に基づいて策定する基本方針について、福島県内の33市町村を「支援対象地域」に指定し、医療施設の整備や子どもの就学の援助を行うなどとした案をまとめました。
それによりますと、原発事故で相当の放射線量が計測された福島県内の33市町村を「支援対象地域」に指定し、医療施設の整備や医師の確保、それに子どもの就学の援助など、総合的な支援を行うとしています。
また、「支援対象地域」以外でも、「準支援対象地域」を設け、各地域の実情に応じた支援を行うとしており、政府は、秋の臨時国会までに基本方針を閣議決定する方針です。
基本方針を巡っては、福島県から避難した住民などが今月、「『子ども・被災者生活支援法』が成立して1年以上たっても示されないのは違法だ」などとして、国に速やかな対応を求める訴えを起こしています。
また復興庁は、来年度・平成26年度予算案の概算要求で、基本方針案に盛り込んだ支援策に必要な費用をはじめ、道路や水道などのインフラ整備を含め、被災地のまちづくりを本格的に進める費用など、総額で2兆7000億円を要求する方針を固めました。
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被災者支援法:線量基準定めず、福島33市町村に限定
毎日新聞 2013年08月30日
東京電力福島第1原発事故に対応する「子ども・被災者生活支援法」で、復興庁が支援対象地域を線引きする放射線量基準を決めないまま、福島県内33市町村を対象地域に指定する基本方針案をまとめたことが分かった。住民からは「基準作りを回避し、支援の範囲を不当に狭めるものだ」との批判が出そうだ。【日野行介、袴田貴行】
基本方針案によると、対象地域は「原発事故発生後に相当な線量が広がっていた」とする同県東半分の自治体のうち、避難指示区域やその周辺を除く33市町村。具体的な支援策は、復興庁が3月発表した「支援パッケージ」の拡充を検討するとした。さらに、同県の西半分の会津地域や近隣県を「準支援対象地域」と位置づけ、個人線量計による外部被ばく線量調査などの支援を実施する。
だが、法令は一般人の年間被ばく線量限度を1ミリシーベルトと定めている。原発事故後に広く指標とされてきた空間線量でこの1ミリシーベルトを基準としたなら、支援対象範囲は福島県以外にも及ぶ。近隣県にも局所的に線量の高い地域があり、福島県内の一部に範囲を限定することに対して反発は必至だ。
また、災害救助法に基づく県外への避難者向けの民間住宅家賃補助は、昨年末に新規受け付けが打ち切られた。支援法による復活を求める声もあるが、基本方針案には含まれない。
一方、原子力規制委員会は28日、復興庁の要請を受けて専門家チームを設け、関係省庁を通じて支援対象地域の個人線量データ収集を始めた。住民一人一人の個人線量は空間線量より低く出る傾向がある。国はこの点に着目し、低いデータを基に住民に帰還を促すとともに、線量に基づかない対象地域指定を科学的に補う狙いがあるとみられる。
支援法は昨年6月、議員立法で成立。原発事故に伴う年間累積線量が一定の値以上で、国の避難指示区域解除基準(20ミリシーベルト)を下回る地域を支援対象とする。だが一般人の被ばく限度との整合性をどう取るか難しく、線引きによっては避難者が増える可能性もあり、復興庁は基本方針策定を先送りしてきた。福島県などの住民は早期策定を求めて東京地裁に今月提訴した。
(赤色部分:避難指示区域と川内村楢葉・広野町は除く)