2013年8月27日火曜日

東電を破綻させない不明朗

 26日、菅官房長官は、東電福島の排水タンクから汚染水が漏出し海に流出した問題について、早期の解決に向けて、政府が前面に出て、予備費の活用など財政措置も含めた対策を講じる考えを示しました。

 8月7日に安倍首相は、「汚染地下水の流出問題を、東電任せにするのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく」と胸を張りましたが、その後は長い夏休みを経ていまは外遊を重ねています。
 その後に今度は地上の排水タンクの漏水問題が明らかになり、これも300基のタンクの作り直しを検討するなどと多大な費用を要することが分かりました。

 もはや東電に任せていても埒が明かず海の汚染も止まらないので、政府が前面に立って必要な費用も国が負担するのは止むを得ないことと、国民は思っています。大きく損なわれた国際信義を回復する上でも、政府がもっと真剣に取り組むべきだと思っているに違いありません。
 ただそのときに必ず浮上するのは東電を温存したままで良いのかということで、地方紙の社説でもしばしば問題提起がされています。
 しかし政府はその問題には一切触れようとしません。なぜ東電だけが特別扱いをされるのか。「政・官・電力」癒着の構造に思いが至ります。

 元経産省官僚の古賀茂明氏が『週刊現代』31日号に、「東電を今こそ破綻処理せよ」とする論文を掲げました(ブログ「原発のウソ」825日で紹介)。
 そこでは東電を破綻させる場合の国民のメリットを明らかにして、反面、政府が東電を破綻させ(たく)ない理由をいろいろ挙げているのに対して、一つひとつ明快に否定しています。

 また古賀論文では触れていませんが、東電の持つ送電設備は5兆円規模ともいわれていて、それを売却処分するだけでも国民の負担は大いに減じます。これから限度のない負担を国民に強いる以上、誰もが納得する東電の処分が必要です。

 古賀論文とは別に植草一秀氏はさらに具体的に、政府が東電を破綻させないのは、財務省の最大の天下り機関である日本政策投資銀行(=東電のメインバンク)が大きな損失を計上しなければならなくなることを防ぎたいためだと述べています
        ※  「東電法的整理拒絶する財務省の狙いは天下り利権」 
植草一秀 ブログ 2013年8月21日
 省益のために本道を曲げるとはまことに不明朗・不正をきわめた話です。

 以下にNHKニュースと『週刊現代』所載の古賀茂明論文の要旨を紹介します。
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汚染水「財政措置も含め対策」
NHK NEWS WEB 2013年8月26日
菅官房長官は記者会見で、福島第一原子力発電所で、タンクから汚染水が漏れ出し海に流出したおそれがある問題について、早期の解決に向けて、政府が前面に出て、予備費の活用など財政措置も含めた対策を講じる考えを示しました。

この中で、菅官房長官は「タンクからの汚染水の漏えいは極めて遺憾だ。これまでの地下水の汚染の構造的な問題とは異なり、タンクの管理をしっかり行ってこなかったことに大きな問題があったと考えている」と述べました。
そのうえで、菅官房長官は「政府が一歩前に出て、取り組む必要がある。茂木経済産業大臣に対して、抜本的な対策を早急に進めるため、予備費の活用を含めた財政措置についても、できる限りのことを行うよう2週間前に指示した。一日も早い解決に向けて、出来ることはすべてやるというのが現在の政府の方針だ」と述べ、早期の問題解決に向けて、政府が前面に出て、予備費の活用など財政措置も含めた対策を講じる考えを示しました。また菅官房長官は、今回の問題が2020年夏のオリンピックとパラリンピックの東京招致活動に影響するかどうかについて、「外務省経由で情報提供を適切に行っているので、言われているような影響はないと考えている」と述べました。

官々愕々 東電を今こそ破綻処理せよ (要旨事務局で要約)
古賀茂明 『週刊現代』2013年8月31日号
(原発のウソ 2013年08月25日

 東電福島原発の高濃度汚染水の海洋流出問題への対応で、8日、安倍総理は、「東京電力に任せるのではなく、国としてしっかりと対策を講じていく」と胸を張った。(しかしそれは)汚染水が海洋に流出していることは前からわかっていたのに、政府はそれを参議院選挙後になって「汚染水大量流出」という形で公表させ、遅きに失したという条件付ではあったものの政府が先頭に立つということで国民を欺いて喝采させた
 この真の狙いは国費投入を国民に認めさせることであり、8月末の予算要求締め切り前にその方針を確定したかったのだ。
 そもそも東電は事実上破綻しているのに、あれこれの理屈をつけて存続させているのは不可解で理不尽の極みだ。国民に負担を求める前に次の三つのことをはっきりさせる必要がある。
第一に責任を負うべき東電の経営者が責任を取っていない。本来は全員クビのはずだ。
第二に、株主。株式は100%減資で紙切れにすべきだ。
第三に、社債を除く約4兆円の銀行からの借金は大半をカットすべきだ。それなのに実際は、国から東電への出資や融資のかなりの部分が、銀行への借金返済に充てられている。
 いま政府はこの3つの責任者問題を飛ばして、本来責任のない消費者・国民にいきなり負担を求めている。
 政府は、自らを正当化するために「東電は破綻していない」と言い張るが、事故処理の費用が払えない。払うべきものを払えないことを破綻という
 「破綻させると事故処理ができなくなる」とすが、破綻させてもさせなくても、不足分を国が負担して東電が事故処理するのは同じことだ
 「破綻させると、国は1兆円の出資を失い、国民が損をする」と、1年前の政府による東電への1兆円出資が戻らないことをいうが、破綻処理すれば銀行債権4兆円弱は殆ど棒引きにできる。1兆円の出資を失っても差し引き3兆円近く国民負担が減る。
 「被災者の債権もカットされて賠償ができない」の脅しも、別途国が債務を負担する仕組みを作れば済むことで、いまの形だと国民の税金で銀行の借金返済が行われている。
 「破綻させると銀行が追加融資をしないから、事故処理ができなくなる」で、それなら国が債務保証してやれば良いだけのことだ。
 破綻させれば、国民は3兆円弱得をする。今こそ破綻処理の決断をするときだ。