「子ども・被災者生活支援法」がいまだに全く具体化されていないのは、生活支援法の適用範囲となる「支援対象地域」(=線量基準)を合理的に定めれば支援の総額が大きくなるからです。
しかしそんな理由で復興庁が無為を決め込むことは許されません。法律の趣旨に則って早々に合理的な線量基準を決定して支援を開始すべきです。
では国は災害復興予算をどのように使ってきたのでしょうか。
2011年度には5兆9千億円を執行できずに繰り越し等をしました。
引き続いて2012年度にも3兆4千億円を執行しませんでした。このうちの2兆2千億円は2013年度に繰り越されますが、残りの1兆2千億円は使途のない「不用な金額」になろうとしているということです。
それとは別に、以前に復興庁が査定したところ1兆1千億円が復興とは無関係な使途であったので、各省に予算の回収を求めたところ、そのうちの実に1兆円がすでに各基金などに組み込まれたということで回収できず、そのまま放置されるという不正もありました。
避難先では月額5万円以下や10万円以下で生活している母子所帯が無数にいるという現実があるなかで、とても理解できる話ではありません。
以下に東京新聞の記事を紹介します。
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復興費1兆円 宙に浮く 不適切使用 懸念
東京新聞 2013年8月4日
政府が二〇一二年度に確保した東日本大震災の復興予算約九兆七千四百億円のうち、約一兆二千億円が使い切れずに「不用額」となり、その大半の一兆円余が使い道も決まらず宙に浮いている。復興庁は「再び復興財源として使う」としているが、復興予算の不適切使用が次々と明らかになる中、被災者の生活再建などに最優先で使われる保証はない。 (中根政人)
一二年度に使い切れなかった復興予算の総額は約三兆四千億円に上る。このうち約二兆二千億円は一三年度に繰り越され、残りが不用額。一部が復興特別会計に繰り入れられただけで、あとは使い道が決まっていない。
不用額が生じたのは、地震や津波で破壊された道路や港湾施設、学校の再建など、本来は緊急性が高いはずの災害復旧事業で予算が余る事態となっているためだ。
被災地では、市町村職員の不足で復興計画の策定や調整作業が進まず、復興のための公共事業に必要な作業員や資材も足りない。せっかく予算の配分を受けても、現場が対応できないことが復興予算を使い切れない主な要因になっている。
安倍政権が全国的に公共事業を増やしたことも、被災地の復興事業を遅らせているとの見方が強い。
安倍政権は、民主党政権が一一年度からの五年間で十九兆円とした予算枠を二十五兆円に増額したが「国土強靱(きょうじん)化」を掲げて被災地以外にも公共事業費を投入。ただでさえ被災地で不足している作業員らが全国に分散し、政府が目標とする「復興の加速化」と矛盾する取り組みになっている。
さらに、被災地向けの復興予算にも、優先度が高いとはいえない高規格道路整備などの公共事業が含まれている。不用額を新たな復興予算に回しても、市街地や住宅の再建など、被災者の生活改善に直結する事業に使われるかは分からず、こうした状況が続けば所得税などに国民負担を求めた復興増税の正当性も問われかねない。
明治大大学院の中林一樹特任教授(災害復興学)は「国主導で予算の規模や使途を決めるよりも、被災自治体が事業の優先順位を柔軟に決められる制度にした方が、復興の加速化につながる」と指摘している。