東電福島の現場では事故は収束に向かっているどころか、莫大な量の放射性物質が海に流出している事実が次々と明らかにされています。
東電は21日、事故後約2年間に海に流出した放射性物質はストロンチウムが10兆ベクレル、放射性セシウムが20兆ベクレルで合計30兆ベクレルに達すると発表しました。これは通常運転時海への年間放出基準値の約100倍に相当します。
(最近確認された排水貯槽からの水300トンの漏出分だけでも24兆ベクレルになるので、本当にその程度なのかは大いに疑問です。)
ここに来てようやく東電の副社長が現地に常駐して指揮を執る体制が敷かれます。これまで指揮系統が明確でないなどの問題もあったということです。
その場しのぎの対応(と虚偽・隠蔽)の累積が結局今日の破綻を招きました。これを機に何とか正道に立ち返って欲しいものです。
折りしも排水タンクが現行方式のものでは持たないことが明らかになりました。東電は気がつかないうちに300トンを漏出させていました。
排水タンクはボルト締めでつなぐ構造のもので、耐用年数は5年程度といわれています。それが前後左右隙間なく並べてあるので、周囲を人間が巡回することもできず(=屋根に通路を設けて巡回)、液面計も付いていません。しかも周囲の空間線量は1時間当たり最大100ミリシーベルトを超えるということで、30秒あまりそこに居ただけで年間の被曝許容量を越します。
合計350基ある他の排水タンクから漏出がないのかについては未確認ですが、いずれ同様の漏出が次々に起きる可能性は高いと考えられています。そうなれば流出する放射能の量は天文学的な数字になります。
この件に関しては、事故直後に京都大学の小出裕章助教が提案された「タンカー内貯留」を真剣に考えてみる段階ではないでしょうか。
貯留した後にそれをどう処理するのかの問題は現行方式と同様に残るにしても、現行の方式よりも遥かに安全な「緊急避難策」であることは確かです。
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東電 原子力部門のトップ福島常駐に
NHK NEWS WEB 2013年8月21日
福島第一原子力発電所で、汚染水を巡るトラブルが相次いでいることを受けて、東京電力は、原子力部門のトップの相澤副社長を現地の拠点に常駐させ、汚染水対策を中心に福島第一原発の廃炉に向けた作業を進める態勢を強化する方針を明らかにしました。
福島第一原発では、先月、汚染された地下水が海に流出していることが明らかになったほか、山側のタンクから300トン余りの汚染水が漏れるなど汚染水の管理を中心にトラブルが相次いでいます。
こうした状況を受けて、東京電力は、原子力部門のトップの相澤善吾副社長が現地の拠点に常駐して、直接、指揮を執るなど汚染水を中心とした廃炉作業を進める態勢を強化する方針を明らかにしました。
東京電力の福島第一原発の廃炉の指揮態勢を巡っては、現地の福島第一原発や福島第二原発にある福島第一安定化センター、それに本店と複数の場所に担当者がいて、指揮系統や情報共有の在り方に課題があると指摘されていました。
相澤副社長は会見で「事故から2年半がたとうとする今も大変なご迷惑とご心配をかけていることを心からおわびします。タンクからの汚染水漏れは港湾内に汚染水が漏れている問題とともに、最大の危機、喫緊の最優先課題と重く受け止めて対応したい」と述べ、陳謝しました。
ストロンチウム、基準の100倍 事故後2年間で流出
東京新聞 2013年8月22日
東京電力福島第1原発の建屋などにたまった汚染水が海に流出している問題で、東京電力は21日、事故後約2年間に海に流出した放射性ストロンチウムの量は最大で10兆ベクレルに上るとの試算結果を発表した。放射性セシウムは20兆ベクレルと算出。合わせると30兆ベクレルになり、保安規定に定められた通常運転時の海への年間放出基準値の約100倍に相当。
東電は大量の汚染水がたまっているタービン建屋とつながるトレンチ(地下道)からの流出や、汚染された地下水の流出など複数のパターンを仮定したが、地下水流出などではこの放出量を説明できず、トレンチが主な漏えい経路と結論付けた。(共同)
福島第1原発:汚染水「海に流出の可能性」…東電発表
毎日新聞 2013年08月22日
東京電力福島第1原発の地上タンクから高濃度の放射性物質を含んだ汚染水が漏れた問題について、東電は21日、汚染水が近くの排水溝を通じ外洋に流出した可能性があることを明らかにした。原子力規制委員会は同じタイプのタンクからの漏えいも考えるべきだとして、汚染水を別の場所に移すことを検討するよう東電側に求めた。
◇規制委、移設検討求める
タンク内の水には1リットル当たり8000万ベクレルの放射性物質が含まれ、300トンが漏えいした。タンクから海までの距離は直線で約500メートルで、タンク群の脇には、雨水を外洋に流す排水溝がある。U字形でふたがなく、常に水が流れている状況ではないという。
東電によると、タンクからの汚染水漏れが見つかった19日に排水溝脇で空間の放射線量を測定したところ、最大で1時間当たり96ミリシーベルトの高い値を観測したほか、放射性物質の性質がタンク内の汚染水と一致した。排水溝内でも最大毎時6ミリシーベルトを検出。相沢善吾副社長は21日、「絶対に(海に)流出していないとは言えない。事故から2年が経過するが、今も心配をかけ、おわびする」と謝罪した。
一方、海に近い排水溝の出口付近で20日に採取した海水の放射性物質濃度に大きな変化はなく、東電は「大半は土に染みこんでいる可能性がある。大量に海に出ている状況はないだろうと考えている」と従来の見解を繰り返した。21日には漏えいしたタンク内の汚染水約700トンを別のタンクに移す作業を終えた。
原子力規制委員会は21日、原発事故の国際評価尺度(INES)で、このトラブルは「レベル3(重大な異常事象)に該当する」と発表した。ただし、規制委は、最悪のレベル7(深刻な事故)の同原発事故に関連した問題として、評価が妥当かを国際原子力機関(IAEA)に照会する。INESは「健全な施設」で起きた事故を想定している。田中俊一委員長は21日の記者会見で、福島第1原発では事故対応が続いていることに触れ「福島第1については違う形で国際社会に発信する必要がある。単にINESに当てはめてレベル2だ3だと言う必要はない」と述べ、今後の同原発でのトラブルではINES評価を使用しない見解を表明した。【鳥井真平、八田浩輔】