2013年8月8日木曜日

福島原発 汚染水流出防止は東電以外の主導で

 福島原発汚染水の流出は、解決の見通しが立たない危機的状況のなかにあります。
 原子力規制庁福島原発事故対策を担当する金城慎司氏はロイター通信とのインタビューで、「東電は危機感が希薄」と批判し「現状は非常事態」と述べました(CNNニュース)。

 汚染水流出の問題は1年以上前から科学者たちが指摘してきましたが、東電は先月になって、地下水や港の海水から高濃度の放射性物質が検出されたことを明らかにし汚染された水が海に漏れている可能性の高いことをようやく認めまし
 しかし東電が具体的に流出量推定する等の作業を進めることは今後とも全く期待できません。

 それに対して経産省は7日、海洋に流出している汚染水の量は概算で1日300トンに上るとの推定を発表しました。山側から毎日およそ1000トンの地下水が敷地に流れ込み、このうち300トン程度が汚染水となって海に流出し400トンは1号機から4号機の地震で破損した建屋地下に入り冷却水に混入し、残りの300トンは汚染されずに海に流れ出ているという推定です

 菅官房長官もようやく7日になって、汚染水流出問題に対して「国として一歩前に出て支援する必要がある」と述べ、無為のままに推移している東電任せの状態から前進する兆しを見せました。
 しかしそれが海際に遮水壁を巡らす工事資金を国が出すというようなものであるなら、何の意味もありません。仮に遮水壁の上部構造を工夫して地下水をせき止めることが出来たとしても、山側から流れ降りてくる地下水は別の出口に向かうだけのことです。
 
  原子炉の周囲全体に十分な深さを持った地中壁を巡らせれば、そのエリアへの地下水の流入は防止できますが、それにはまた別の問題があると東京新聞は指摘しています。

 東電任せからは脱して、それらを一つひとつクリアしながら解決に向かって欲しいものです。
 
 以下に3つの記事を紹介します。
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汚染水流出 概算で1日300トンか
NHK NEWS WEB 2013年8月7日
経済産業省は、福島第一原子力発電所から海に流出している汚染水の量は、概算で1日300トンに上るという見解を示しました。
それによりますと、福島第一原発の地下には、毎日およそ1000トンの地下水が山側から流れ込み、このうち300トン程度が高い濃度の放射性物質が検出された井戸の周辺を通り、汚染水となって海に流出しているということです。残りの700トンのうち、400トンは1号機から4号機の建屋の地下に入り、300トンは汚染されずに海に流れ出ているとしています。
海への流出を防ぐため東京電力は、護岸沿いの地盤を特殊な薬剤で壁のように固める工事や雨水の流入を防ぐために地表をアスファルトで舗装する工事を進めていますが、こうした工事が完了しても60トン程度は流出するということです。
この概算について、経済産業省は、流出量や汚染の程度などの詳細な分析ができているものではなく、東京電力の地下水位などのデータを参考にしたとしています。また、流出が始まった時期は分からず、事故直後から続いている可能性は否定できないということです。
汚染水流出量を確認へ
経済産業省が福島第一原発から海に流出している汚染水の量が、概算で1日300トンに上るという見解を示したことについて、東京電力の今泉典之本部長代理は、7日夕方の会見で、「実際どれくらいの汚染水が海に出ているのかはっきり言えない。『300トン』という数字は聞いていないので、確認させてほしい」と述べました。

汚染水対策、官房長官「国として支援の必要」
 読売新聞 2013年8月8日
菅官房長官は7日の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所で汚染水が海に流出している問題について、「国として一歩前に出て支援する必要がある」と述べた。
 東電が実施している汚染水対策を国が支援する考えを示したものだ。安倍首相は7日午後に開かれる原子力災害対策本部で、茂木経済産業相に早急に対策を実施するよう指示する。
 具体的には、原子炉建屋周辺の土壌を凍らせて汚染水流出を防ぐ「凍土の壁」を設置するための支援が軸となる。菅官房長官は汚染水の流出を防ぐ壁の設置は「世界でも例がない」と強調した。経産省は2014年度予算の概算要求に汚染水対策の関連予算を盛り込む方針だ。
 東電福島第一原発の汚染水問題を巡っては、政府の汚染水処理対策委員会が5月に決定した対策で「凍土の壁」を設置することを打ち出した。茂木経産相も東電を支援する意向を表明していた。

遮水壁 両刃の剣 建屋から逆流の恐れ
東京新聞 2013年8月8日 
 東京電力福島第一原発の汚染水対策で、政府が国費投入を検討している原子炉建屋周辺での遮水壁建設は、実は大きなリスクを抱えている。建屋地下にたまる高濃度汚染水と周辺の地下水との水位バランスが崩れ、汚染水が建屋外へ漏れ出しやすくなる。建設構想は原発事故直後にすでに浮上しながら、実現していなかった。 (清水祐樹)

 東電によると、建屋周囲の地下水位は海抜約四メートルで、建屋地下の高濃度汚染水を一メートル下の海抜三メートルに管理している。高低差を保てば、建屋外側の地下水圧が内側より高くなる。水は圧力が高い所から低い所へ流れるので、汚染水は外に出ないという理屈になる。
 だが、事故により損傷した建屋外壁のあちこちから、一日約四百トンの地下水が流れ込み、汚染水を増やしている。東電は敷地内にタンクを増設して保管しているが、自転車操業になっている。
 建屋周辺に遮水壁が完成すれば、確かに地下水の流入量は減り、汚染水の増加には歯止めをかけることはできる。しかし、遮水壁により周辺の地下水位が低下し、建屋内の汚染水位の方が高くなれば、今度は内外の水圧差が逆転し損傷場所から汚染水が逆流しかねない。汚染水を減らす切り札のはずの遮水壁が両刃(もろは)の剣となる形だ。
 六日の国会議員による会合でも東電は「建屋の陸側から地下水が来なくなると、建屋の汚染水が外に出てしまう」とし、今でも漏出リスクがあることを明かした。建屋内の水位を徐々に下げることなどを対策に挙げたが、それで防げるかどうかは明言しなかった。
 そもそも、国と東電は事故からわずか二カ月後の二〇一一年五月から遮水壁の建設を検討しながら、同年十月に見送りを決めていた。漏出リスクや費用、現場での作業の難しさが主な理由だった。国費投入が決まれば、費用については問題がなくなる。しかし、他の問題の解決策は具体化していない。