2013年8月31日土曜日

被災者支援の基本方針案は無内容

 29日に発表された「子ども・被災者生活支援法」に基づく基本方針案に対して、原発事故で避難した人たちが30日記者会見を開き、「公聴会などの手続きを踏まないで方針案をまとめた」、「支援の対象を福島県内の33の市町村としたのは狭すぎる」、「福島県外に避難した人たちへの支援が殆どない」、などと批判しました。
 そして「福島への帰還を促す内容ばかりでがっかりした。避難する権利がもっと認められるよう政府に要望していきたい」と話しました。

 子ども・被災者生活支援法の8条には、(要旨)国は、支援対象地域(政府による避難基準=年間20mSvを下回っているが一定の基準以上である地域)で生活する被災者を支援するため、医療の確保に関する施策、子どもの就学等の援助に関する施策、家庭、学校等における食の安全及び安心の確保に関する施策、放射線量の低減及び生活上の負担の軽減のための地域における取組の支援に関する施策、・・・(以下略)・・・を講ずるものとする」と定められています。

 ところが方針案は、その根幹となる線量基準に関する具体的な検討を行わないまま、いきなり福島県内33市町村を対象地域と設定していて、方針案がなかなか決まらないことの言い訳に利用してきた線量基準の設定が完全に抜け落ちています。
 また支援施策の中身も、今年3月15日に復興庁が公表した「被災者支援パッケージ」とほとんど変わらず、それに除染と健康不安の解消に関わるものを追加しただけに過ぎません。
 同法で最も重要であり期待されていた「避難の権利」を保障する避難者支援策は、全くありません。
 新たに出された「準支援対象地域」の意味も不明です。

 要するにこれだけの長い時間を掛けてまとめた、ということを窺わせるものは何もありません。
 こうした無内容なものが突然提出されたのは、基本方針の遅れを行政の不作為として、被災者たちが裁判を起こしたために、慌ててその段階で整えられる範囲のものをまとめたとしか考えられません。
 それではこの基本方針案を待ちくたびれていた被災者・避難者たちに対して、あまりにも不誠実です。

 以下にNHKニュースを紹介します。
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被災者支援の基本方針案を批判
NHK NEWS WEB 2013年8月30日
原発事故の被災者支援を定めた「子ども・被災者生活支援法」に基づく基本方針案がまとまったことを受けて、原発事故で避難した人たちが30日、記者会見を開き、「支援の対象地域を福島県内の33の市町村としたのは狭すぎる」と批判しました。

復興庁は「子ども・被災者生活支援法」に基づき、原発事故で相当の放射線量が計測された福島県内の33の市町村を「支援対象地域」に指定し、子どもの就学援助や住宅の確保など総合的な支援を行うなどとした基本方針案をまとめました。
これを受けて、原発事故で避難した人や福島県の住民などが30日、東京都内で記者会見を開き、「放射性物質は33市町村以外にも広がっていて、支援の対象地域が狭すぎる」と訴えました。
また、「法律では、基本方針を策定しようとするとき、住民の意見を反映させる措置を取ることになっているのに、これまで公聴会などの場が設けられなかった」、「福島県内で暮らす場合に不安を解消するための施策ばかりで、福島県外に避難した人たちへの支援が少ない」などという批判が相次ぎました。
福島市から都内に自主的に避難している二瓶和子さん(36)は、「福島への帰還を促す内容ばかりでがっかりした。避難する権利がもっと認められるよう政府に要望していきたい」と話していました。