2017年8月1日火曜日

福島原発の燃料デブリ取出し 楽観は禁物

 福島原発3号機の格納容器下部の様子がマンボウ型ロボットで確認できたことについて、核燃料デブリの取出しの見通しが得られたかのような受け止めがされています。しかし通常であれば事故の直後に確認されていなければならなかったのが、強烈な放射線下の環境にあるために、事故後6年余も経過してからようやく3号機のみについて、内部の様子が撮影されたということに過ぎません。

 高放射線下で長時間作動するカメラ機構の開発をはじめ、電子部品を内蔵しながらデブリの解体・取出し作業をするロボットを果たして開発することが可能なのか、燃料デブリの取出しはすべてまだ「五里霧中」の段階にあります。
 福島民報が、「原発デブリ調査 楽観視は禁物だ」とする社説を載せました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
論説 原発デブリ調査 楽観視は禁物だ
福島民報 2017年7月31日
 東京電力は事故を起こした福島第一原発3号機で溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)とみられる物体の撮影に初めて成功した。宇宙線を使った内部調査では、大部分が原子炉圧力容器から圧力容器の外側にある格納容器に落下した可能性が高いと判明した。
 一部を取り出して調べてみないと断定できないという。世耕弘成経済産業相は「9月をめどに取り出し方針を決定したい」と述べたが、取り出し技術の開発、保管や最終処分など難題が待ち受ける。確認目前までたどり着くのに、事故発生から6年以上かかった。廃炉作業が加速すると楽観視するのは禁物だ
 3号機は炉心溶融(メルトダウン)のため燃料デブリが圧力容器を突き抜け、格納容器に溶け落ちたと考えられていた。撮影と宇宙線調査は東電の解析結果を裏付けた格好だ。映像は格納容器内部の過酷な状況を示している。底に黒っぽい岩のような物体が積み重なり、砂状のものが舞い上がる。まるで深い海の底を見ているようだ。格納容器の破壊も相当なものだ。
 東電は燃料デブリの一部を採取し、硬さや性質を調べた後に取り出し手法を確立するもようだ。「状態に応じて変えざるを得ない」と専門家はみる。「切断する」「削り取る」「粉砕して回収する」など複数の手法を適宜使い分けていくことになりそうだ。燃料デブリの取り出しは、30~40年かかるとされる廃炉作業の最難関であり、手法開発は難航するとの厳しい見方がある。作業中の災害対策や事故防止策にも万全を期す必要がある。

 3号機の調査は1、2号機より条件に恵まれた。格納容器内の水位が約6・4メートルあり、投入した水中ロボットが移動しながら撮影できたためだ。1、2号機は格納容器の水位が低いため自走式ロボットを使用したが、障害物や高い放射線量の影響で必要な情報は得られず、燃料デブリは確認できないままだ。
 1~3号機には未使用と使用済みの燃料が建屋内のプールに置かれたままなのも不安要素だ。東電によると1号機は392体、2号機は615体、3号機は566体の燃料が入っている。注水により安定状態は維持しているものの、水素爆発などにより建屋は大きく損壊している。東電は来年度半ばにも取り出しに着手する方針だ。一日も早い回収を望む。
 今回の燃料デブリ確認作業は廃炉への一歩にすぎない。解決すべき課題は多い。求めたいのは福島第一原発全体の安全性向上だ。(鞍田炎)