よく知られているように、国はこれまで立地自治体に対しさまざまな優遇策を施してきました。それには原子力施設の潜在的リスクに対する代償という意味合いもありました。その結果殆どの立地自治体では、歳入の半分を原発の固定資産税と交付金が占めるに至っています。
そういう中で、今すぐ原発ゼロ=交付金ゼロとするのは財政的に無理です。
逆に「交付金は廃炉後の地域活性化にこそ必要で、立地を推進した国にも重い責任がある。石炭から石油へのエネルギー転換が起きた1960年代、臨時措置法による財政支援を受け、産業構造を大きく転換させたという前例がある」と、福島大の清水修二特任教授(財政学)は語ります。
危険な原発依存は止めて早めに原子力からの撤退の道を歩むべきです。
これで河北新報の「議論の土台」6回シリーズは終わりになります。
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これで河北新報の「議論の土台」6回シリーズは終わりになります。
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<神話の果てに>廃炉見据え改革必要
/第15部・議論の土台(6完)自立できますか
河北新報 2015年2月8日
<国が優遇策整備>
国の2015年度予算案に、原発再稼働を見据えた交付金が盛り込まれた。名称は「原子力発電施設立地地域基盤整備支援事業」。原発が立地する自治体向けに総額15億円を確保する。
再稼働に備えた住民説明会などに充てることを想定している。所管する経済産業省の担当者は「(再稼働後にまた停止した場合など)予期せぬ環境変化にも対応できる」と説明。地域振興への活用を否定しない。
立地自治体に対し、国はこれまでさまざまな優遇策を整えてきた。原子力施設の潜在的リスクに対する代償という意味合いもある。
東北電力女川原発が立地する宮城県女川町、同社の東通原発がある青森県東通村、日本原燃の核燃料サイクル施設がある同県六ケ所村の10、12年度の財政状況はグラフの通り。原子力の貢献度は一目瞭然だ。
青森の二つの村の場合、固定資産税の大部分は原子力関連。交付金を含めると、歳入の半分を占める。東日本大震災の復興予算が組まれている特殊事情を差し引けば、女川町も大差ない。
女川町の須田善明町長は「今すぐ原発ゼロを前提とした財政運営を考えるのは難しい。地域の財政や経済をどう自立させるかは、時間をかけて考えるべき問題」と語る。
<停止中も交付金>
経産省は昨秋、電源立地地域対策交付金について、稼働実績によって額を決める可能性に言及した。現在は停止原発でも「稼働率8割」とみなしている。制度の行方によっては地元の実入りが減りかねない。
国は地域振興に使える交付金を積み増しつつ、優遇制度の見直しをちらつかせる。「再稼働に向け、地元同意を促すためのアメとムチだろう」と、東北の立地自治体の職員は読み解く。
原子力の交付金が支給されるのは、原発の建設・運転期間が基本。運転開始から原則40年で廃炉になることが定められており、地元は遅かれ早かれ財政的自立を迫られる。
<「撤退の道歩め」>
「交付金は廃炉後の地域活性化にこそ必要。立地を推進した国にも重い責任がある」。福島大の清水修二特任教授(財政学)は原発依存脱却に向け、現行制度の改革を求める。
廃炉に伴う解体工事は新たな雇用を生む可能性がある。「遺産」となる道路などのインフラは、企業立地の呼び水にもなり得る。
先例として清水教授が想定するのは、かつて炭坑地域として知られたいわき市だ。石炭から石油へのエネルギー転換が起きた1960年代、臨時措置法による財政支援を受け、産業構造を大きく転換させた。
清水教授は「痛みは伴うが、悲観する状況ではない。自立のためには重大事故が起きないうちに、早めに原子力からの撤退の道を歩むべきだ」と提言する。(原子力問題取材班)
[電源立地地域対策交付金]
原発を中心とした発電施設の建設・運転を円滑に進める電源3法交付金制度に基づく交付金。国から立地自治体や隣接自治体に交付する。12年度の総額は約983億円。電気料金に上乗せされている電源開発促進税が財源となる。