2015年2月6日金曜日

原発はクリーンか・・・ 環境汚染は桁外れ

 河北新報の「議論の土台」の(3)は「クリーンですか」です。
 
 原発はCO2排出量が少ないから環境を汚染しないという主張については、2014年5月、大飯原発運転差止め訴訟で福井地裁が下した判決で、
 「ひとたび深刻事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であり、「環境問題を原発運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである
と一蹴したのがまだ記憶に新しいところで、すべてはこれに尽きています。
 
 またCO2の排出量が少ないかについても、使用済み核燃料を何万年にもわたって地中の格納場所に保管するのに要する維持管理上のエネルギーまでCO2に換算すれば、決して少なくはありません。
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神話の果てに>少ないCO2排出量強調
      /第15部・議論の土台(3)クリーンですか
河北新報 2015年2月5日
<意外な組織から>
 原発の環境負荷は大きいのか、小さいのか。意外な組織から物言いがついたことがある。
 対象になったのは、電気事業連合会(電事連)が2008年、雑誌に出した原発広告。「発電の際に二酸化炭素(CO2)を出さないクリーンな電気のつくり方です」との内容だった。
 読者からの申し立てを受けた日本広告審査機構(JARO)は、このコピーに「不適切」との裁定を下した。
 問題は「クリーン」の表記。裁定書は「地球環境に及ぼす(放射能の)影響や安全性について十分な説明なしに、発電の際にCO2を出さないことだけを限定的に捉えた」と指摘した。
 電事連サイドは納得せず、「CO2を出さない趣旨で(用語を)使っている」と反論している。JAROの判断に法的な拘束力はなく、裁定は宙に浮いた形になっている。
 
<合理的な愚か者>
 電事連の言い分にも理はある。発電時のCO2排出量に限れば原子力は太陽光、風力とともに環境負荷はゼロ。一方、石炭火力は発電量1キロワット時当たりで864グラム、ガスと蒸気のタービンを併用するコンバインドサイクル式の液化天然ガスは376グラム発生する。
 電力中央研究所の資料に基づいて原料の採掘から発電所建設、廃棄までの排出量を試算しても優位性は明らかだ。1キロワット時当たり38グラムの太陽光、943グラムの石炭に比べ、原子力は20グラムにすぎない。
 しかし、環境面で懸念されるのは温室効果ガスだけではない。横浜国立大大学院の伊藤公紀教授(環境計測科学)は「全体を見ずにCO2排出量だけを考えると『合理的な愚か者』になってしまう」と指摘する。
 仮に温暖化防止に貢献していたとしても、原発には放射性物質による汚染リスクが付きまとう。事実、福島第1原発事故によって、広大な土地の除染や廃棄物の処理が大問題になっている。
 「生活圏の除染すら終了のめどは立たない。全域が事故前の状態に戻るのは非常に困難だ」。福島県の担当者は嘆く。
 原発を維持する限り、燃料採掘から発電、使用済み核燃料再処理までの過程で環境に負荷が加わる。かつてウランが採掘された鳥取、岡山の県境には、40万立方メートルを超える放射性の残土が50年以上も置かれたままだ。
 
<「主張は筋違い」>
 影響は海にも及ぶ。青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場は07年10月、放射性物質トリチウムなどを1リットル当たり最大1億7000万ベクレル含んだ排水を放出した。濃度は福島第1原発の海洋放出基準1500ベクレルの10万倍以上だ。
 事業者側は「海水で希釈される」と説明するが、蓄積による実害を懸念する声は根強い。
 「放射性物質を大量に出す電力業界が『クリーン』を主張するのは筋違い」と伊藤教授。印象にとらわれずに全体を見渡さなければ、原発のメリット、デメリットは見極められない。