原子力規制委は12日、関電高浜原発3、4号機の安全対策が新規制基準に適合しているとして審査合格としました。九電川内1、2号機に続き2例目です。
そういう点で非常に当を得た指摘ですが、規制委は個々の原発における基準適合の判断だけで問題がないとしています。
再稼働は今夏以降になるとみられます。
高浜原発の運転停止の仮処分申請は2011年8月に出されましたが、大津地裁は昨年11月、原発事故の避難計画などが未整備で、基準地震動の策定方法についても関電からは何ら説明がないことなどを挙げ、「原子力規制委員会が早急に再稼働を容認するとは考えがたい」として、「仮処分」の必要はないとする決定を出しました。
しかし原子力規制委は、裁判所が考えているように厳格な審査をするところではないことがこれで明らかにされました。
滋賀県の住民29人は1月30日、この動きを見越して関電高浜原発3、4号機の再稼働禁止を求めて、大津地裁に再度仮処分を申し立てました。これへの大津地裁の対応が注目されます。
東京新聞は、高浜原発はいわゆる原発銀座と呼ばれる若狭湾に設置されていて、そこには高浜原発を含めて合計14基の原子炉が林立していることを指摘し、このうちの1基が過酷事故を起せば結果的に他の原発へのアクセスも出来なくなるので、複合的な事故を引き起こす危険性を考慮する必要性を強調しています。
若狭湾一帯はまた活断層銀座とも呼ばれ地盤も不安定とされています。
そういう点で非常に当を得た指摘ですが、規制委は個々の原発における基準適合の判断だけで問題がないとしています。
川内原発での火山=火砕流の問題のときにもそうでしたが、規制委はひたすら「再稼動」を目指しているのであって、それに対するマイナス要因などには見向きもしません。
もはや何を言っても通じないという感じです。
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同時原発事故検証せず 高浜3・4号機新基準「適合」
東京新聞 2015年2月12日
原子力規制委員会は十二日の定例会合で、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)が原発の新しい規制基準を満たしているとする審査書を正式に決めた。新基準を満たすと判断された原発は、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)に続き二例目。
会合では、昨年十二月十八日~一月十六日の間に実施されたパブリックコメント(意見公募)に寄せられた約三千六百の意見の主なものを紹介し、審査書案の修正が必要かどうかを議論した。細かな字句修正はしたが、ほぼ公募前の案で妥当と判断された。
高浜原発の周辺には関電大飯と美浜、日本原子力発電敦賀と多くの原発が立地している。しかし、規制委は複数の原発で同時に事故が起きる可能性や、近隣住民が安全に避難できるかどうかは検討していない。
関電は二〇一三年七月、新規制基準の施行当日に審査を申請。新基準では、想定できる最大級の地震や津波、竜巻などへの備えや、テロ対策、格納容器を守るためのフィルター付きベント(排気)設備の設置、事故収束に向けた作業手順の整備などが求められた。
関電は地震の揺れの想定を当初から二割ほど引き上げ、配管などを補強。想定される津波も海抜二・六メートルから六・二メートルに見直した。津波は敷地の六・五メートルの高さまで達するとし、八メートルの防潮堤の建設を始め、三月中に完成する見通し。漏れた水素が建屋内で爆発しないよう水素濃度を抑える装置も設置した。
ベント設備の完成は一八年七月までかかる。事故収束要員を守る緊急時対策所は、同原発1、2号機が停止したままで両号機の施設が使えることを前提に審査が進んだが、関電は1、2号機の再稼働も目指す方針を打ち出した。1、2号機も動かすとなれば、対策所を新たに確保しないと基準を満たせない。
審査書の決定で、今後は事故対応の詳しい内容などの審査に進む。再稼働には地元の了解が必要だが、住民避難など防災計画の策定が求められる三十キロ圏内には京都府や滋賀県の自治体が含まれ、地元同意の範囲や進め方も焦点になる。
◆14基集中 収束支障の恐れ
原子力規制委員会による関西電力高浜原発の審査では、原発が集中立地していることの危険性について検証もされず、審査書でも記載されていない。新規制基準を満たせば、各原発で放射能が大量放出されるような事故は防げるという大前提になっているからだ。
高浜原発が立地する福井県沿岸の若狭湾は「原発銀座」とも呼ばれ、高浜のほか、大飯、美浜、敦賀の三原発と高速増殖炉「もんじゅ」を合わせ、計十四基が立ち並ぶ。
東日本大震災では、東京電力福島第一原発だけでなく、約十二キロ南の福島第二原発、東北電力女川原発(宮城県)、日本原子力発電東海第二原発(茨城県)も津波に襲われており、同時に事故を起こす危険性は十分にあった。
政府事故調の調書で、福島第一の故吉田昌郎(まさお)所長(当時)は「放射能が2F(福島第二)まで行ってしまう。2Fも、注水などの作業ができなくなってしまう」と危ぶんでいたと証言した。
こうした教訓を踏まえれば、若狭湾に面した原発群のどれか一つでも大量の放射性物質を放出する事態となり、収束作業に大きな支障となることも想定する必要がある。
規制委は、高浜原発内では休日でも七十人の要員を確保し対応する方針だとして、新基準を満たしていると判断。集中立地の問題でも、各原発で放射能の大量放出という事態となる前に抑え込めるはずとし、その前提が崩れたときのことは想定しなかった。