2015年2月5日木曜日

いまだに「原発は低コスト」を偽装

 河北新報の「議論の土台」の2回目は「低コストですか」です。
 
 原発が高コストであることはいまや世界の常識です。
 日本でも、電気料金が数年後に自由化されると、廃炉の費用や使用済み核燃料の処分費用まで見積もると原発の発電コストは火力に負けるため、その差額を電力料金に上乗せして、その分で原発を救済しようとしています
※ 2014年11月14日 電力自由化後は電気料上乗せ分で原発を保護 
 
 その1件だけでも「原発は低コスト」が偽装であることはもうバレバレなのですが、経産省はいまだにそれ以外の場面では「低コスト」を装っています。
 平気で、廃炉費、廃燃料処理費、原発立地自治体交付金などを除外したコストを持ち出して来ます。
 それをメディアが黙認しているのも不思議なことですが、電力会社がこれまで持ってきた宣伝広告費の威力によるものといわれています。
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<神話の果てに>隠れた負担甘く計算
    /第15部・議論の土台(2)低コストですか
 河北新報 2015年2月4日
<燃料費だけなら>
 原子力は約1.4円、石炭約4円、液化天然ガス(LNG)約8円…。国が2011年に試算した発電量1キロワット時当たりの平均的な燃料コストだ。
 これだけを見れば「原発は安い」と言われるのも納得できる。事実、福島第1原発事故で国内原発は長期停止に追い込まれ、石炭やLNGへの依存度が上昇。電力各社の燃料費は膨れ上がり、東北電力は13年度で5982億円と、10年度の倍の水準となった。
 国の貿易収支も4年連続の赤字に見舞われ、14年の額は比較可能な1979年以降で最大になった。東北電の経営陣は「国富が海外に流出している」と、原発停止によるマイナス効果を力説する。
 ただ、燃料費にとどまらず、プラントの建設や維持、廃炉の経費も勘案しなければ、電源別の発電コストは正確には把握できない。これらを盛り込んだ発電単価を国が試算した数値は表のようになる。
 原子力の下限は火力や陸上風力などを下回っているものの、「40年運転」「稼働率7割」が前提。想定外の休止が続けば単価は一気に跳ね上がる。「原発は動かなければ不良資産にしかならない」。電力業界が再稼働を求める理由がここにある。
 
<賠償費は不十分>
 試算には十分に反映されなかった経費もある。事故対応などの「社会的コスト」だ。立地自治体への国の交付金や研究開発費も含まれる
 立命館大の大島堅一教授(環境経済学)は「福島の賠償や除染のほとんどは国費と電力料金で賄われ、額が増え続けている。それらを『事故対応費』として加えれば、原子力の発電単価は大きくなる」と説明する。
 社会的コストを厳密に盛り込めば、どう変わるのか。大島教授の計算では、原子力の発電単価は少なく見積もっても11.4円。LNG、石炭それぞれの上限11.1円、9.7円を超えてしまう。
 核燃料再処理や放射性廃棄物最終処分の費用も見通せない。国は総額18兆8000億円を見込むものの、青森県六ケ所村にある再処理工場の本格稼働時期が不透明なこともあり、なかなか費用を確定させられない。
 
<安さだけを強調>
 大島教授は「原発に経済性はないと考えるべきだ。運転終了後の社会的コストも膨大になる」と断言。現状のまま原子力施設を維持しようとすれば、いずれ税金や電力料金の形で国民がツケを払うことになりかねない。
 国は1月30日、発電単価を再び試算する方針を決めた。少なくとも事故対応費は積み増しされるとみられている。
 原発には決して少なくない額の「不確定コスト」が付きまとってきた。が、十分説明されないまま「安さ」だけが強調されてきた経緯がある。福島の事故を経験した今、同じ過ちを繰り返すことは許されない。