2015年2月8日日曜日

民意の支持のないままに再稼動に突き進む

 河北新報の連載記事「議論の土台」の(5)は「声は届きますか」です。

 原発の泣き所はいまや再稼動反対が多数派(約70%)になっていることです。
 福島事故の前であれば、原発は「安全・綺麗・安い」と教え込まれてきたので一般の人たちは反対などしませんでした。原子力ムラの利権構造のことも知らされていませんでした。
 しかし過酷事故の後に「危険・汚い・高い」と知られてしまえば「賛成してくれ」という方が無理です。
 
 原子力ムラ自体は、福島の大事故があった後も無傷で生き残りました。それで「夢よもう一度」と、いま必死に原発の再稼動に向けて走り出しています。
 たとえ民意の支持がなくても、政府と自民党議員たちが応援してくれているから実現できると思っているのでしょう。その他の味方は、交付金の給付を受けている原発立地自治体です。
 欲得の世界なので「民意」などということは言っていられないということなのでしょう。
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<神話の果てに>民意掘り下げ不可欠
      /15部・議論の土台(5)声は届きますか
河北新報 2015年2月7日  
<調査反映されず>
 民意を取り込んだ原子力政策のかじ取りは可能なのか。世界初となる試みは、政権交代とともに置き去りにされた。
 2012年8月、当時政権を担っていた民主党は「討論型世論調査」に取り組んだ。無作為抽出の約300人が「原発の安全性」「安定供給」「環境」「コスト」のテーマごとにグループ討論。専門家との質疑を経てアンケートに答えた。
 日程は2日間。熟考の上で醸成された民意を政策に反映させるのが目的だった。結果、「2030年に原発ゼロ」を7割近い人が支持した。
 調査を主導した慶応大大学院の曽根泰教教授(政治学)は「参加者は議論を重ねるにつれて原子力の安全性に対する疑問を深めた。再度抽出しても結果は大きく変わらない」と言い切る。
 調査を終えて間もなく民主党は下野する。政権与党に返り咲いた自民党は、公約で原発再稼働を全面否定はしなかった。丁寧に積み上げられた民意は、政策に反映されることなく霧消した。
 
<「発言権」求める>
 選挙による政権選択と世論調査。原子力に関する限り、国民は正反対の結論を導いたことになる。曽根教授は「選挙は複数の政策の抱き合わせ販売みたいなもの。個別政策の立案では、民意を深く探らなければならない」と指摘する。
 エネルギー問題は暮らし、産業に直結する重要テーマとなる。世論に沿うだけが正道ではないにせよ、多くの納得なしに推し進めるのは難しい。
 東京電力福島第1原発事故は、原発災害がいかに広範囲、長期にわたって被害をもたらすかを見せつけた。原子力施策への賛否判断は主に立地地域の議会、首長に委ねられてきたが、周辺自治体からも「発言権」を求める声が上がっている。
 典型的な例が原発再稼働の「地元同意の範囲」をめぐる駆け引きだ。東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の30キロ圏に入る登米、美里、涌谷、南三陸4市町の首長は、自らを対象に含めるよう主張する。
 
<事故以前の協定>
 再稼働手続きで先行する川内原発(鹿児島県薩摩川内市)では、判断を迫られたのは九州電力と安全協定を結ぶ県、立地自治体に限られた。女川も同様なら、宮城県と石巻市、女川町だけで「地元の民意」が形成されることになる。
 安部周治涌谷町長は「福島の事故の影響は宮城にも及んでいる。それを考えれば同意範囲は少なくとも30キロ圏まで拡大すべきだ」と力を込める。
 そもそも女川原発を含む各地の安全協定は福島の事故前のもの。締結は安全神話が前提となっていたのは否めない
 上智大の中野晃一教授(政治学)は「協定は既に『契約』としての実効性を失っている。被害を受ける恐れのある住民が納得できる形に改める必要がある」と指摘した。