ドイツは脱原発政策を決め現在、残っている原発7基も20年までに停止、廃炉にすることが決まっています。
その脱原発政策を決めた倫理委員会委員を務めたミランダ・シュラーズ氏(51)=ベルリン自由大教授=を招いて、23日、茨城大でシンポジウムが開かれました。
シュラーズ氏は「原子力は、どのエネルギーよりも危険。事故が起これば、その影響は大きく、核廃棄物を次世代に残すことにも倫理的な問題がある」と主張し、エネルギー政策を転換する必要があることを強調しました。
同教授はこれ以前も少なくとも2度来日していて、2011年6月に来日した時に、ドイツで脱原発が決まった経緯について次のように語りました※1。日本ではいまだに原子力ムラの中枢である経産省が原発の将来計画を握っているのとは月とスッポンの違いです。
『原発の是非を諮問する倫理委員会には、元環境相やドイツ研究振興協会の会長、カトリック司祭、財界人、消費者団体など17人の委員がいたが、原子力の研究者は1人もいなかった。どのようなエネルギー政策を求めるかは、社会、消費者が決めるべきとの考えからだ。
設立時は原発容認派と反対派が半々くらいだったが、いつかは原発を廃止した方がいいという点で一致した。問題が起きた時のリスクが、ほかのどのエネルギーよりも大きく、国境を超えて世界に影響を与え、放射性廃棄物という問題も次世代に残してしまうからだ。原子力は倫理的ではないエネルギーだ、と委員会は判断した。
ただ、いつまでに原発を廃止するかという点については、2035年までという立場の人や、明日にでも、という人もいて、合意に至るのが難しかった。』
※1 2012年9月18日 独首相が原発ゼロ目指す日本の決断を歓迎 政府は
面映ゆいのでは?
http://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2012/09/blog-post_4662.html
(関係記事)
2013年3月10日 日本の対応の遅れを懸念 シュラーズ・ベルリン自由大教授
http://yuzawaheiwa.blogspot.jp/2013/03/blog-post_10.html
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「原発 倫理的に問題」 シュラーズ氏が茨城大で強調
東京新聞 2015年5月24日
東京電力福島第一原発事故を受け、ドイツの脱原発政策を決めた倫理委員会委員だったミランダ・シュラーズ氏(51)=ベルリン自由大教授=を招いたシンポジウムが二十三日、茨城大(水戸市)で開かれ、シュラーズ氏は原発依存の倫理的な問題を示唆、エネルギー政策を転換する必要性を強調した。持続可能社会の実現を目指す「サスティナビリティ・サイエンス・コンソーシアム」や茨城大などが主催。
シュラーズ氏は、一九六〇年代のドイツで、原発は将来性の見込めるモダンなエネルギーと見られ、電力の半分を原発でまかなおうという考えがあったと解説。しかし、原発を拒否する緑の党が表舞台に登場し、一九八六年の旧ソ連のチェルノブイリ原発事故で反原発のうねりが広がった。
事故の風化が進み、二〇一〇年に地球温暖化防止の観点から、自然エネルギーを補う存在として原発が位置付けられた直後、福島第一原発事故が発生。シュラーズ氏は「原子力は、どのエネルギーよりも危険。事故が起これば、その影響は大きく、核廃棄物を次世代に残すことにも倫理的な問題がある」と主張した。ドイツでは現在、残っている原発七基も二〇年までに停止、廃炉にすることが決まっている。
終了後、取材に応じたシュラーズ氏は「日本のような地震国は長期的には脱原発を目指すべきだ。多くの市民が脱原発を求めているのに声が弱いと思う」と話した。 (林容史)