巨大地震の震源域に建てられている浜岡原発は、菅政権時代にその危険性のために全面停止してから14日で丸4年を迎えました。この間電力需要がピークを迎える夏場も供給不足を生じずに難なく乗り切ってきましたが、全く発電しなくても年間1千億円、4年間で約4千億円の費用が掛かりました。この巨額な維持費は全て電力料金に上乗せされ、家庭や企業が負担しています。
それだけでなく浜岡原発は再稼動を目指して、地震や津波対策で海抜22メートルの防潮堤建設など総額3千億円を超える追加工事を実施中で、これらの費用も今後、維持費=電気料に含まれることになります。
しかしそれらの対策は直下型大地震に対して本当に有効なのでしょうか。
浜岡原発は、向こう30年内に約90%の確率で直下型を含めた巨大地震に遭遇するとされています。通常の企業であればそれほどのリスクを負う投資はしないものです。増して被害は単に一企業内に留まるものではなくて、まかり間違えば首都圏が全滅するような被害が予想されるのですからなお更のことです。
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浜岡維持に年1000億円 発電ゼロでも消費者に転嫁
中日新聞 2015年5月14日
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の三基が政府の要請で全面停止してから十四日で丸四年を迎えた。この間、中電が再稼働を前提にした浜岡を維持するために年間一千億円規模、四年間で約四千億円の費用を投じていることが分かった。発電しなくても生じる巨額な原発の維持費は電気料金に上乗せされ、家庭や企業が負担している。
一方、電力需要がピークを迎える夏を控え、中電は今夏も供給力に余裕があり、五年連続して「浜岡抜き」で夏場を乗り切れる見通しだ。
原発は原子炉内を水が循環する冷却装置や制御用の電気系統など複雑なシステムが備えられ、放射性物質が外部へ漏れるのを防いでいる。配管や機器などの部品は一千万点を超えるとされ、いったん原発が完成すると、その補修や点検、除染などに毎年多額の費用がかかり、電力会社は毎年の企業決算で「原子力発電費」として計上している。
中電が四月に発表した二〇一五年三月期決算によると、原子力発電費は千八十億円。主な内訳は浜岡の耐用年数に応じた減価償却費(二百十八億円)、下請け企業への業務委託費(百四十六億円)、修繕費(百三十八億円)、原発部門の社員への給与などの人件費(七十四億円)など。
中電の有価証券報告書によると、浜岡停止以降、原子力発電費はほぼ同額で推移。浜岡が運転していた一一年三月期は千二百八十億円で、その八割に相当する年間一千億円が停止後も維持費として使われていた。これらは最終的に家庭や企業がまかなっている。
浜岡は福島事故後の地震や津波対策で海抜二十二メートルの防潮堤建設など総額三千億円を超える追加工事を実施中で、これらの費用も今後、維持費の一部に含まれる可能性が大きい。
中電広報部は本紙の取材に「将来にわたり安定的にエネルギーを確保していくためには原子力を引き続き重要な電源として活用することが不可欠」とし「原子力発電費は今後の浜岡原発運転に向けての必要な維持管理費だと考えている」とコメントした。
中電管内(愛知、岐阜、三重、静岡、長野各県)では浜岡停止後の過去四年間、電力供給に目立った支障は出ていない。今夏も供給余力を示す予備率は例年並みの暑さで9・6%と、安定供給の最低ラインとされる3%を大きく上回る計画。電力需給が逼迫(ひっぱく)する他電力管内へ電気を融通してもなお一定程度の余力が確保できるとみている。
◆リスクが大きすぎる
<元三菱銀行ニューヨーク支店長の末吉竹二郎・自然エネルギー財団代表理事の話>
電力会社にとって原発にこだわることが有利に働くとは言い切れない。浜岡原発は、向こう三十年内に87%の確率で発生するとされる巨大地震の震源域にある。金融やメーカーの世界でも、それほどのリスクを負う投資はしない。通常のビジネスでは負えないリスクにどう対処するのか。経営上の理由だけでは説明にならない。
<浜岡原発>1976~2005年に5基が次々と運転を始めた中部電力唯一の原発。運転期間が30年を超えた1、2号機は09年から廃炉作業に入っている。南海トラフ大地震の震源域に立地し、3~5号機は福島第一原発事故後の11年5月14日に菅直人首相(当時)の要請で完全停止した。3号機は出力110万キロワット、4号機は113.7万キロワット、5号機は138万キロワットで、中電の電力供給力の1割程度を占めた。