内閣府の資料によれば全国の原発30キロ圏内の市町村には、大地震発生時などに土砂崩れなどで孤立する恐れのある集落が計2318集落あり、計約20万人が住んでいるということです。しかしヘリコプターの着陸スペースがない集落が8割に達するなど、孤立の恐れを踏まえた対策は進んでいません。
ちなみに柏崎刈羽原発の30キロ圏内には、孤立する恐れのある集落が389あり、そのうち295集落にはヘリコプターの着陸スペースがありません。
国の原子力災害対策指針は、避難の段階を事態の進展に応じ、次のように定めているということです(毎日新聞)。
・原発施設内で全電源が使えなくなるなどの場合
⇒ 5キロ圏内(PAZ)の住民は避難準備をし、要援護者は避難や屋内退避を始める
・原子炉を冷やせなくなるなどの段階
⇒ 5キロ圏内(PAZ)の住民は避難を始め、5~30キロ圏内(UPZ)では屋内退避する
・空間線量が1時間あたり20マイクロシーベルト到達
⇒ 5~30キロ圏内(UPZ)でも1週間程度内に一時移転、
・同500マイクロシーベルト到達
⇒ 数時間内をめどに避難する
しかしこうした内容が周知されているとは思えないし、過酷事故が発生したときに適宜確実に必要な情報を流してくれる保証がない中で、整然と屋内退避等が実施される可能性は低いのではないでしょうか。
いずれにしても深層防護第5層の「避難」計画の充実が一向に図られないのは極めて問題です。
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原発30キロ:孤立2318集落 複合災害時、対策進まず
毎日新聞 2015年05月25日
原発事故に備えた避難計画策定が義務付けられる全国の原発30キロ圏内の市町村に、大地震発生時などに土砂崩れなどで孤立する恐れのある集落が計2318集落あり、計約20万人が住んでいることが内閣府の資料で明らかになった。原発事故は大地震などとの複合災害として発生することが懸念されているが、ヘリコプターの着陸スペースがない集落が8割に達するなど、孤立の恐れを踏まえた対策が進んでいない。専門家は「自治体は複合災害を念頭に置いて避難計画を作るべきだ」と指摘する。
内閣府は、多数の集落が孤立した2004年の新潟県中越地震を受け、地震や風水害による土砂災害、津波などで道路や海上交通が遮断され、孤立する可能性がある集落の数や対策を継続調査している。14年10月には、こうした集落が全国の中山間地や沿岸部に計1万9160集落(一部重複)あるとの調査結果を公表。毎日新聞は非公表だった市町村別内訳を情報公開請求し、災害対策基本法などに基づき避難計画策定が義務付けられる原発30キロ圏の市町村を調べた。
その結果、30キロ圏の全21道府県135市町村のうち約7割の93市町村が、孤立する恐れのある計2318集落を抱えていた。住民20万7177人のうち、自力での避難が難しい高齢者や障害者などの要援護者は、把握できている集落だけでも計9345人いた。
国の原子力災害対策指針は、原発事故時の30キロ圏の対応として避難と屋内退避を2本柱にし、放射性物質の拡散状況などに応じて使い分けるよう定めている。だが避難に関しては、集落が斜面や狭い平地に密集しているなどの理由で、孤立時に切り札となるヘリの着陸スペースのない所が1876集落に上った。また屋内退避に関しては、公民館や集会所などの避難施設に水の備蓄がない所は1461集落、食料の備蓄がない所は1456集落あり、無回答の集落と合わせると水、食料とも9割を超えた。
93市町村のうち、避難計画を策定しているのは7割の67市町村。計画策定が比較的進む中で、孤立対策が遅れている事情について、関西電力高浜原発が立地する福井県高浜町(計画策定済み)の担当者は「ヘリで広域避難となると国や県の力を借りなければならず、町単独でできることは限られる」、東北電力女川原発が立地する宮城県女川町(計画策定中)の担当者は「シェルターやヘリ着陸スペースの整備には国や県の財政支援が必要だ」と語る。
内閣府の原子力防災の担当者は「複合災害による孤立集落発生については各原発の課題として認識しており、それぞれの地域で対策を検討していく」と話している。【奥山智己】
原発30キロ圏内で複合災害時、孤立の恐れがある集落数と、
そのうちヘリ着陸スペースがない集落数