2015年5月21日木曜日

避難計画置き去りのまま伊方原発「適合」3カ所目

 原子力規制委は20四電 伊方原発3号機が新規制基準に適合しているとの審査書案を了承しました。国民から意見募集した後正式決定されます

 合格は、九電 川内原発1、2号機、関電 高浜原発3、4号機に次いでカ所目となります。 
 
 基準地震動は650ガル基準津波メートルで、フィルター付きベント設備の設置完了は来年独立して原子炉の冷却などができる第二制御室はまだ検討中です。
 地震動の引き上げで必要となった配管の補強など1300カ所の工事は秋までかかる見通しです。

 30キロ圏内の自治体に義務付けられている避難計画も、受け入れ態勢などが具体化できていません。
 ところで伊方原発は佐田岬半島の付け根にあり、細長い半島の先側(西側)の約5000人は、事故で放射性物質が漏れた場合は原発近くの道路を通って避難するわけに行きません。
 自治体が立てた避難計画は、半島の先端近くにある三崎港から船で大分県などに避難というものですが、住民は津波が襲来した福島事故のときは着岸すら難しく、逃げられる状態ではなかった。船で避難というのは最初からあり得ないこと」と語気を強めています。
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「避難」「支援」置き去り 伊方原発新基準「適合」 規制委3カ所目
東京新聞 2015年5月20日
 原子力規制委員会は二十日の定例会合で、四国電力伊方原発3号機(愛媛県)が原発の新しい規制基準に適合しているとの審査書案を了承した。国民から意見募集した後、正式決定される。規制委が新基準を満たしたと判断した原発は、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)に次いで三カ所目となる。 
 
 規制委は新基準が施行された二〇一三年七月、四電からの申請を受けて審査を開始。地震や津波、竜巻などの自然災害への備えや、テロ対策、炉の圧力が高まった際に格納容器を守るためのフィルター付きベント(排気)設備、事故収束に向けた作業手順などの整備を求めた。
 
 審査では、敷地北側を走る「中央構造線断層帯」が引き起こす地震のリスクは四電の当初の想定より高いとの指摘が出され、四電は想定する地震の揺れ(基準地震動)を当初より一割超引き上げ六五〇ガルとした。これに伴い、想定津波の高さ(基準津波)も二倍の約八メートルに引き上げられ、事故時の対策拠点の耐震性が不足したため、新たに拠点を建設した。
 
 規制委は一連の対応をいずれも妥当と判断。審査書案は一カ月間の意見募集を経て、修正後に正式決定される。再稼働までには事故収束に向けた詳しい態勢や手順の審査、新たな対策が適切に施工されているか現場での検査のほか、地元自治体の同意が必要になる。
 一方、伊方原発は東西に細長く険しい佐田岬半島に立地しており、事故時の住民避難や収束要員の支援が適切にできるかどうか不明だ。また地震動の引き上げで必要となった配管の補強など千三百カ所の工事は秋までかかる見通しで、フィルター付きベント設備の設置完了は来年三月の予定。既存の制御室とは独立して原子炉の冷却などができる第二制御室はまだ検討中という。三十キロ圏内の自治体に義務付けられている避難計画も、受け入れ態勢などが具体化できていない。
 
 <原子力規制委員会の審査> 規制委は現在、新しい規制基準に基づく審査を全国15原発計24基で実施している。昨年9月に九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)が、今年2月には関西電力高浜原発3、4号機(福井県)が新基準に適合したと判断した。川内原発は、地元自治体が同意を表明しており、現場検査などが終われば、今夏にも再稼働する可能性がある。一方、高浜原発は福井地裁が4月、再稼働差し止めの仮処分を決定し、関電側の異議が認められない限り再稼働はできない。
 
 
 
「船で避難、あり得ない」=計画に住民疑問-愛媛・伊方原発
時事通信 2015年5月20日
 原子力規制委員会は、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)が新規制基準を満たすと判断した。審査書が正式に決定すれば、再稼働に向け、地元自治体の同意手続きに焦点が移るが、住民からは事故が起きた場合の避難計画を疑問視する意見が聞かれる。
 東京電力福島第1原発事故を受け、愛媛県は昨年、住民避難のシミュレーション結果を加え、広域避難計画を改定した。
 伊方原発は佐田岬半島の付け根にある。避難計画が必要な半径30キロ圏内には7市町が含まれ、13万人が住む。シミュレーションによると、13万人が圏外に出るのにかかる時間は、避難ルートの指定や車の相乗りなどで渋滞を抑制した場合、最短で6時間15分になる。
 半島のほぼ全体を占める伊方町は人口約1万人。うち約5000人は原発の西側に住むが、事故で放射性物質が漏れた場合は原発近くの道路を通って避難するわけにいかないため、半島の先端近くにある三崎港から船で大分県などに避難する計画だ。
 5000人が海路で30キロ圏外へ避難する場合、民間のフェリーと自衛隊や海上保安庁などの協力を得れば最短4時間半で可能という。
 しかし、伊方原発差し止め訴訟の原告で、原発から約20キロ西の三崎地区に住む物販会社社長、長生博行さん(48)は計画の実現性に疑問を抱く。
 東日本大震災と福島原発事故の際、津波で破壊された港湾をニュースで見て、映像が目に焼き付いている。「福島事故のときは着岸すら難しく、逃げられる状態ではなかった。船で避難というのは最初からあり得ない。これを計画する神経が理解できない」と語気を強めた。