国際原子力機関(IAEA)が福島原発事故を総括した最終報告書の全容が、24日、判明しました。
その中で東電が原発事故の数年前、福島県沖でマグニチュード(M)8・3の地震が起きれば、福島第一原発を襲う津波の高さが最大約15メートルに及ぶと試算していたにもかかわらず、東電は対策を怠り、原子力安全・保安院も迅速な対応を求めなかったと指摘しました。
報告書は42カ国の専門家約180人が参加して作成したもので、要約版約240ページが6月のIAEA定例理事会で審議された後、9月の年次総会に詳細な技術報告書と共に提出される予定です。
IAEAはもともと原発推進の機関なのですが、そこまで明確に東電や旧原子力保安院のミスを指摘せざるを得なかったのは、それらが資料的に明らかで否定のしようがなかったということです。
これまで一貫して東電関係者等を不起訴処分にしてきた日本の検察のあり方も改めて問われます。
東京新聞の記事と植草一秀氏のブログを紹介します。
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東京新聞の記事と植草一秀氏のブログを紹介します。
「大津波の危険認識 福島第一対策怠る」 IAEA報告書
東京新聞 2015年5月25日
【ウィーン=共同】国際原子力機関(IAEA)が東京電力福島第一原発事故を総括し、加盟国に配布した最終報告書の全容が二十四日、判明した。東電や日本政府の規制当局は大津波が第一原発を襲う危険を認識していたにもかかわらず実効的な対策を怠り、IAEAの勧告に基づいた安全評価も不十分だったと厳しく批判した。
報告書は四十二カ国の専門家約百八十人が参加して作成。要約版約二百四十ページが六月のIAEA定例理事会で審議された後、九月の年次総会に詳細な技術報告書と共に提出される予定。事故の教訓を生かした提言も含まれており、今後、各国の原発安全対策に活用される。再稼働へ向けた動きを進める電力各社に対し、安全対策の徹底を求める声も強まりそうだ。
報告書では、東電が原発事故の数年前、福島県沖でマグニチュード(M)8・3の地震が起きれば、第一原発を襲う津波の高さが最大約十五メートルに及ぶと試算していたが、対策を怠ったと批判。原子力安全・保安院も迅速な対応を求めなかったと指摘した。
原発で働く電力社員らは過酷事故に対する適切な訓練を受けておらず、津波による電源や冷却機能の喪失への備えも不足。原発事故と自然災害の同時発生に対応するための組織的な調整もなかったとした。
人災なのに誰一人責任負わない無責任国家日本
植草一秀の「知られざる真実」 2015年5月25日
東北地方太平洋岸には、過去に何度も巨大津波が押し寄せている。
明治29年(1896年)6月15日に発生したマグニチュード8.2-8.5の明治三陸地震に伴って、巨大津波が東北地方太平洋岸を襲ったことが確認されている。
この地震で、岩手県綾里では、津波の遡上高38.2メートルの記録が残されている。
広瀬隆氏は巨大地震と巨大津波が発生する可能性は十分あり、その際に、原発が津波に襲われたときに、電源を喪失し、メルトダウンが発生する危険があることを警告したのである。
この警告がそのまま現実化したのが2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所で発生した過酷事故であった。
巨大津波が発生する恐れがあるにもかかわらず、津波対策を講じていない原子力発電所のことを広瀬氏は『原子炉時限爆弾』と表現したのである。
東電福島原発の津波対策の不備をして指摘したのは広瀬隆氏だけではなかった。
独立行政法人産業技術総合研究所が2010年8月に発行した公刊レポート『平安の人々が見た巨大津波を再現する-西暦869年貞観津波-』 http://goo.gl/gVCti にも、過去に巨大津波が東北地方を襲来した事実が詳細に記述されていた。
このレポートの「はじめに」には、次のように記述されていた。
「このような研究成果が、巨大津波に対する「備え」に活かされることを期待しています。」
産業技術総合研究所は過去に発生した巨大津波の事実分析を基に、東京電力福島第一、第二原子力発電所の津波対策の不備を公式に警告していた。
その警告を無視したのが国と東京電力である。
そのためにあの原子力事故が発生したと言ってよい。
福島原発事故は「天災」によって引き起された回避不能の事故ではなく、適切な対応が講じられていれば回避することが可能であった「人災」である。
しかし、いまだに、誰一人としてこの事故の責任を認めた者はいない。
責任あるものが責任を明らかにすることが回避され続けている。
無責任国家日本の断片がここにも表れている。
(以下は有料ブログのため非公開)