2017年10月15日日曜日

15- 原発30キロ圏自治体に国の補助金を拡大

 正式な告示もないままに、原発立地自治体に限って支払われてきた国の補助金が、2017年度から原発から半径30キロ圏内の周辺自治体にも支払われる仕組みに変更されていました。経産省資源エネルギー庁が新たに対象になった自治体向けに説明会を開くなどして、拡大を知らせたということです。
 対象の自治体は膨大になります。今回の補助制度は、30キロ圏内すべての自治体に、申請すれば補助金が出る仕組み作りがとられた格好になっていますが、申請しても出ない自治体もあるということで、逆に、再稼働への態度を保留していた対象自治体が補助金交付決定の3日後に再稼働容認を表明した事例もありました(福岡県糸島市―玄海原発30キロ圏)。何とも胡散臭いやり方です。

「再稼働へ誘い水?」と銘打って東京新聞が「原発30キロ圏に補助金拡大」を報じました。
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再稼働へ誘い水? 
原発30キロ圏に補助金拡大 立地外16自治体に5億円
東京新聞 2017年10月14日
 原発の立地自治体に限定していた国の補助金の対象が、二〇一七年度か原発の半径三十キロ圏内の自治体にも拡大された結果、北海道ニセコ町や京都府など計十六の立地外自治体に支給予定であることが十三日、経済産業省への取材で分かった。対象自治体などによると、補助金の総額は少なくとも約五億円に上るとみられる。

 経産省は「原発の影響が周辺にも及ぶことが分かり仕組みを見直した。再稼働への同意を得る目的ではない」としている。ただ、原発のコストに詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「将来的に原発が老朽化でゼロになっていく自治体があり、地域再生策として趣旨は理解できるが、補助金を渡すだけという手法には反対だ。自治体から再稼働への理解を得たいという意図があるのではと読めてしまう」と指摘した。
 経産省によると、応募があった自治体の中から、今年四月と七月に補助対象を決めた。北海道電力泊原発(北海道泊村)の三十キロ圏では、ニセコ町や岩内町など四町が選ばれた。東京電力福島第一原発や第二原発を抱える福島県では、いわき市と浪江町が対象となった。
 多数の原子力施設がある福井県に隣接する京都府や、中国電力島根原発(島根県)から近い鳥取県、九州電力玄海原発(佐賀県)に近い福岡県糸島市や、川内原発(鹿児島県)周辺の阿久根市なども支給予定だ。

 補助事業は「エネルギー構造高度化・転換理解促進事業」で、一六年度に始まり、主に老朽化などで廃炉が決まった原発の立地自治体に対し、再生可能エネルギーの普及促進などを通じ地域振興を後押しするのが目的。
 立地自治体に応募資格を限定していたが、一七年度から「原子力発電施設からおおむね半径三十キロの区域を含む市町村、および当該市町村が属する都道府県」と公募要領を変更した。

◆「廃炉」条件も突如消え
 経済産業省が、原発の立地自治体から周辺自治体まで交付対象を広げた補助金は当初、廃炉を決めた自治体に再生可能エネルギーの導入を促す目的で始まった。しかし、二〇一七年度の交付条件から突如として「廃炉」という文字が消え、原発再稼働への容認を促しかねない内容に変わった。
 交付金の条件などを定めた要綱は制度が始まった一六年度では、交付対象を「廃炉が行われる原発が立地する市町村」と明記していた。ところが、現在では「廃炉」の言葉が一切なくなり、交付対象が「原発を取り巻く環境変化の影響を受ける自治体」に広がった。
 経産省によると、「原発を取り巻く環境変化」には原発の部分的稼働も含まれる。関西電力高浜原発(福井県)では3、4号機が再稼働し、1、2号機が停止中だが、同原発の周辺自治体も交付対象に当てはまるという。
 経産省資源エネルギー庁の若月一泰原子力立地政策室長は「廃炉を条件に限定すると、応募が広がらないため」と説明している。補助金をばらまくために要件を緩くしたとも受け取れ、「廃炉」を明示していた当初に比べ、補助金の目的がぼやけたことは否めない。
 原発に関する自治体への補助金は、原発を受け入れてもらうことを目的に交付されてきた歴史的な背景がある。補助の仕組みの変更を報道発表しなかった経緯も含め、再稼働の容認を促すための新たな「アメ」と取られても仕方がない。 (伊藤弘喜)